ジャパネットは「絞る戦術」を徹底するという

取扱品数を大幅に絞り込む

白河 権限委譲を進めながら、トップとしてきめ細かく社内に目を行き届かせることに注力されているのですね。非常にメリハリをつける意識を感じます。商品数をかなり減らしたというのも驚きました。品数の多さは御社の強みでもあったはずですが、思い切ってそこにメスを入れた。どんな狙いがあったのでしょうか。

高田 きっかけは、私が自社のネットストアから商品を買おうと検索したこと。ふと目に留まったアイテムがまったく記憶にない商品で、よく見ると5年くらい前のモデル。担当バイヤーも詳しく把握していなくて「これ、どれくらい売れているの?」と聞いたら、「月に2、3個売れている」と。だから載せておきたい、という発想で惰性で売ってきたのだと思うのですが、私はその程度の思い入れしかない商品をお客様に届けるのは嫌だと感じたんですね。

改めて売り上げ構成を調べると、約8500点あった商品のうち約500点が売り上げの95~96%を占めていた。「よし、777点まで絞ろう」と決めました。777という数には特に意味はありません。500がいいのか、800がいいのかという会議をしたって答えは出ないので、語呂で決めました。約8500点を777点まで絞るのに半年ほどかかりましたが、大量の商品を掲載する作業がなくなり、在庫の数が減って、コールセンターのFAQを作る手間も大幅にカットされたので、圧倒的に生産性が上がりましたね。

白河 新商品が投入されても777点はキープされるのですか。

高田 実は今、さらに約650点まで減っているんです。というのは、2カ月以上一定数売れなかった場合と、お客様からのレビューが低い場合には強制退場させるというルールも作りましたので。

白河 なるほど。アマゾンのロングテールとは逆の発想ですね。

高田 売れないものは居座っちゃダメだ、と。するとバイヤーも本気で商品に向き合って工夫や改善をしていくので、全体の質が上がっていきます。

白河 これまでの小売りのセオリーは、「たくさん数をそろえることがお客様のため」だったと思うのですが、逆転の改革ですね。他社の経営者から驚かれませんか。

高田 商品数というフィールドで戦おうとしたら、アマゾンや楽天さんには到底かなわないですよ。だからうちは逆張りの「絞る戦術」で。1兆円企業を目指しているわけでもないですし、良いものをちゃんと届けることがうちの存在価値であることはブレません。父の代から大切にしてきた理念を守ろうとすれば、そういう戦い方になるんです。

白河 なるほど。逆張りです。これから改革をさらに進める上での課題はありますか。

高田 引き続き愚直にメッセージを出し続けないといけないと感じています。先ほど申し上げたように、決めたルールに細部までこだわって、やり続けられるチームを増やしていかなければ。うちはトップダウンでルール変更はしやすい組織であることは、大きな強みだと自負しています。あとは、それをいかに隅々まで浸透させていくか。私自身の役割は、常に会社の健康状態をチェックして、必要な手を打っていくこと。一人ひとりが本質的な仕事に打ち込める環境づくりをより進めていきたいと思います。

あとがき:合理的に創業時の昭和的労働慣行を変革していく2代目社長。そこには事業継承をする中小企業の持続可能な経営のヒントが山ほどありました。中小企業こそ、生き残るためにも集中と選択が大事です。資源に限りがあればあるほど、今は「減らす」「やめる」などの逆張りの発想が勝つ。そして現場の社員をしっかり休ませるなど、現場の社員への目配りは要のポイントです。また30代の若い社長に事業を譲ってから初代社長が一切関わらないというのも、覚悟を感じます。まさに理想の事業継承モデルを見ました。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(ライター 宮本恵理子)

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