テレビショッピングでおなじみの「ジャパネットたかた」。テレビ画面で印象的だった高田明氏の後を継ぎ、2015年に高田旭人氏がジャパネットホールディングスの社長に就任。働き方の見直しを含む経営改革を実施、さらに企業業績を伸ばし続けている。前回の「16連休導入で業績急回復 ジャパネットの働き方改革」に続き、高田社長に取り組みについて聞いた。
長時間労働は経営判断の妨げ
白河桃子さん(以下敬称略) 前回お伺いしましたが、社長自ら「ミスター働き方改革」と呼ばせていただきたいほどの徹底ぶりですね。
高田旭人社長(以下敬称略) 「夜がダメなら、朝なら残業にならないだろう」と早朝出勤する謎の行動が生まれることもあります。「朝早く来たら、その分ちゃんと残業をつけなさい」と言っています。勝手にサービス残業をしないように、入館のセキュリティーカードをかざした時刻から15分以内に勤怠の打刻をしないとエラーになる設定にしています。
白河 厳密ですね。実労働時間把握義務は、ガイドラインから法律になりましたから、全ての企業に客観的に全労働者の勤怠を把握する義務ができました。

高田 残業を正確につけることの意味を誤解している人が多いと感じます。経営者にとって、残業の数字は「その部署が回っているか」の指標なんです。なのにその数字を隠蔽されてしまうと、正確にメッセージが受け取れない。記録上では残業時間は超過していないのに「人が足りません」と言われても、辻つまが合わない。打刻せずにサービス残業することは「会社への忠誠」ではなく、「ルール違反」でしかないことを周知させたいですね。
社員が長時間労働することは、経営判断の妨げにもなります。夜遅くまで残業してヘトヘトな顔でプレゼンしてくる社員にダメ出しするのは、非常にきつい。社員が無理して出してきたアウトプットに対しては、客観的に正しく見ることができなくなるんです。だから、やめてくれと心底思います。
白河 リフレッシュ休暇についてはいかがですか。連休をとっている間にも、実は自宅作業で仕事をしているといった実情は?
高田 うちの場合は徹底していて、業務用の携帯電話を上司に預けて休みに入ってもらっています。
ベテラン社員を休ませたかった
白河 そうすると、業務の「脱・属人化」もかなり進んでいきますね。私は今コンビニ業界の改革を議論する経済産業省の委員を務めていますが、オーナーさんにヒアリングすると「24時間365日、店のことが頭から離れないのは苦しい」という声がベテランオーナーでも出てくる。どんなに仕事大好き人間でも、いっときも休まらないのはつらいですよね。
高田 そう思います。実は私がリフレッシュ休暇制度をどうしても入れたいと考えた最初のきっかけは、2人のベテラン社員の顔が浮かんだことだったのです。一人は「7年連続で会社で年越ししました」と誇らしげに語り、もう一人は「年間で会社に来ない日は10日しかありません」と胸を張る。私はこの2人の退職後が心配になったんです。「この人たちは、仕事を辞めた後に何を生きがいにして暮らしていくのだろう」と。「この2人を休ませなければいけない」、そこから始まったんです。