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ミイラ「アイスマン」 最後の旅路はアルプス壮絶登山

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ナショナルジオグラフィック日本版

アルプスの氷河で見つかり、「エッツィ」の愛称で知られる有名な男性のミイラ「アイスマン」。負傷し、おそらく追われていたアイスマンは、アルプスの高山で、背中を矢で射られて死亡した。

それから約5300年、考古学者たちは今も、彼の死の謎を解明しようと取り組んでいる。このほどアイスマンの発見現場から採取されたコケの分析が行われ、最後の登山の詳細が明らかになった。論文は2019年10月30日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表された。

これまでにわかっていること

エッツィは1991年、エッツタール・アルプスを歩いていたハイカーが、イタリアとオーストリアの国境付近で発見した。遺体は凍結し、自然にミイラ化していた。エッツィは、皮膚に60個以上の入れ墨があり、ヒツジやヤギの皮を縫い合わせて作られた革のコートを着ていた。

研究者らは近年、位置がわからなくなっていたエッツィの胃も発見。内容物の分析によって、エッツィの最後の食事が、乾燥させたアイベックス(アルプス産のヤギ)やシカの肉とヒトツブコムギであったこと、そして、食事からわずか1時間後に殺害されたことが判明した。また、エッツィが40代の男性で、胃痛に苦しみ、右手の親指と人差し指の間に骨まで達するほど深い傷を負って手当をしていたこともわかっている。

科学者たちはこれまでに、エッツィのミイラ化した遺体の内部と周囲から、75種類以上のコケ植物を同定している。今回、この小さな植物から、アイスマンの壮絶な最後の足取りが詳しく明らかになった。

アイスマンの殺害現場は標高3210メートルのティーゼン峠にある。今回の論文によると、遺体から見つかったコケ植物の約70%はこの場所に自生せず、標高の低いエッツタール・アルプスの南部に自生するものが多いという。また、コケの分布から、エッツィが最後に2日間にわたって2000メートル以上の標高差を登り下りしていたこともわかった。

コケの謎

論文の著者で英グラスゴー大学名誉教授である植物考古学者のジェームズ・ディクソン氏は、エッツィの発見場所から見つかった有機物のサンプルを1994年に受け取って以来、エッツィの研究を続けている。氏は、その中にヒラゴケの一種Neckera complanataを見つけて、すぐに強い興味を持ったと言う。この種は、歴史的にボートや丸太小屋の隙間を埋めるのに利用されてきたコケだ。

現場では、ヒラゴケは比較的大量に発見されていて、その多くはエッツィの服に付着していた。エッツィはこのコケを何かの道具として持ち歩いていたのかもしれないが、その目的はまだ明らかになっていない。防寒用だろうか、それともトイレットペーパーとして? どちらにしてもヒラゴケは標高が低いところにしか自生していないため、エッツィの最後の足取りを解き明かす手がかりとして役立った。

「アルプスのこれほど標高が高いところで殺害されたとわかったときは、きわめて異例なことだと思いました」とイタリア、ユーラック・リサーチのミイラ研究所でエッツィの研究チームを率いる人類学者のアルバート・ジンク氏は言う。氏は今回の研究には関わっていない。「彼がなぜそんな場所にいたのか、誰も説明できませんでした」

エッツィの消化管には、彼が最後に口にした食物だけでなく、食事をした環境にあった微量の花粉も残っていた。オーストリア、インスブルック大学の植物考古学者で、今回の論文の共著者であるクラウス・エッグル氏は、2007年に発表した研究で、エッツィの最後の旅路を大まかに示した。

エッツィの直腸付近から得られたサンプルには、マツとトウヒの花粉がわずかに含まれていた。これは、エッツィが死の約33時間前には、森林限界である標高2500メートル近くの森にいたことを意味する。

一方で、エッツィの結腸の真ん中のあたりには、標高の低いところの森にしか生えないアサダ属(カバノキ科の高木)などの樹木の花粉が含まれていた。つまり、死の9~12時間前には、標高1200メートル以下まで下りていたということだ。もしかすると谷底まで下りていたのかもしれない。

花粉が示唆するところによると、エッツィはその後再び山を登りはじめ、亜高山帯の針葉樹林で最後の食事をし、そこからさらに山を登ってティーゼン峠で殺害されたことになる。

しかし、エッツィが最後に斜面を下りたときに、南(現在のイタリア方面)に向かったのか、北(オーストリア方面)に向かったのかは不明だった。岩だらけの地形であり、エッツィの死亡現場に到達できるルートは少ない。

「彼がどこに行ったのか、本当にわからなかったのです」とエッグル氏は言う。

低地の植物、高地の現場

今回の研究でディクソン氏のチームは、この地域のコケの分布を徹底的に調査し、エッツィの体内と遺体の周囲から見つかった全種類のコケ植物と照らし合わせた。5000年前のアルプスにおけるコケの分布は、現在の分布とよく似ているからだ。

エッツィの体内や周囲で見つかったコケ植物のうち約70%の種類は、標高3000メートル以上では育たないものだった。その中には、風や鳥に運ばれてきたものもあったかもしれない。けれども研究者らは、標高の低い場所に自生するコケが、ヒラゴケ以外にも数種あり、これらはアイスマン自身が持ってきたとしか考えられないと主張する。「距離が遠すぎて、ほかに説明のしようがないのです」とエッグル氏は言う。

ヒラゴケを含め、エッツィの殺害現場で発見されたコケのうちいくつかは、南のイタリア側のシュナルスタール渓谷に自生しているが、北の渓谷にはない。つまり、エッツィがシュナルスタール渓谷に下りてから最後の登山を始めたことを示している。もしかすると、彼は渓谷でコケを集めて携帯したか、あるいは食料を包んだり傷の手当てをしたりするのに使ったのかもしれない。

標高約800メートルのフィンシュガウ谷の底まで下りて、ミズゴケの一種Sphagnum affineを採集した可能性もある。ディクソン氏は、エッツィはミズゴケの消毒作用を知っていて、手に負った深い傷の手当てに利用したのではないかと推測している。

この発見は、エッツィが南側の土地と深い関係があるという事実とよく一致している。ジンク氏によると、放射性同位体を使った分析により、エッツィがアルプスの南側の土地で育ち、生涯の最後の数カ月をそこで過ごしていたことがわかっているという。

イタリア、フィレンツェ地方考古学局の考古学者ウルスラ・ウィーラー氏も、「アイスマンがアルプスの南側に住んでいて、そこからアルプスに登り、殺害地点に至ったことを裏付ける証拠はたくさんあります」と言う。

ウィーラー氏が最近、エッツィの道具入れの分析を行ったところ、彼の武器は修理が必要な状態で、無防備な状態で殺害されたことが示唆された。今回の研究に氏は参加していないが、エッツィの壮絶な最期が裏付けられるとともに、「アイスマンの最後の日々を再現するためには、植物考古学的な研究が非常に重要であることが再度証明されました」と話す。

大昔のコケは、保存条件がかなり良くないと解析できない。エッツィの場合は、死亡した場所が極寒の峠だったことが幸いした。「植物考古学の世界では非常に珍しいことです」と米スミソニアン国立自然史博物館の植物考古学とゲノム考古学の学芸員ローガン・キストラー氏は言う。「コケ植物は、考古学遺跡で保存されやすい種子や花粉は作りません。環境中では非常に短命な存在なのです」

キストラー氏はまた、今回の研究は「エッツィの発見現場の素晴らしさを示す好例」であると言う。「過去の人物の生涯をリアルに感じさせてくれる、驚異的な場所の1つです」

(文 Megan Gannon、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年11月1日付]

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