星間物質は摂氏3万度 ボイジャーが太陽圏越え観測

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/11/22
ナショナルジオグラフィック日本版

太陽圏の外に出たNASAのボイジャー1号と2号の位置を示したイラスト。太陽圏と星間空間の境界面である「ヘリオポーズ」は、冥王星の軌道を越えたはるか先にある(ILLUSTRATION BY NASA/JPL-CALTECH)

2018年11月、地球から遠く離れた宇宙の暗闇で、米航空宇宙局(NASA)の宇宙探査機ボイジャー2号が探査の大きな節目を迎えた。私たちの太陽圏を脱して、星間空間に到達したのだ。太陽圏の外に出た探査機は、ボイジャー1号に続いて2機目となる。

それから約1年経った2019年11月4日、学術誌「Nature Astronomy」に5本の論文が掲載された。これは、太陽圏と星間空間の境界付近のプラズマを直接観測した初めての報告だ。プラズマは電気を帯びた粒子で、太陽風はその流れである。1977年に打ち上げられたボイジャー2号は、いずれも巨大な氷の惑星である天王星と海王星に接近した唯一の探査機でもある。

姉妹機のボイジャー1号は、2012年に星間空間への到達を果たした。2機のデータを比較すると、星間空間に存在する粒子の密度など、共通する部分も多かったが、太陽圏を脱出するときの観測には興味深い違いもあり、銀河系(天の川銀河)内での太陽の動きについて新たな謎が深まった。

米カリフォルニア工科大学の物理学者でボイジャー計画の科学者エド・ストーン氏は、論文の公開に先立って開かれた記者会見で、「本当に素晴らしい旅になっています」と語った。

また、米プリンストン大学の博士研究員で物理学者のジェイミー・ランキン氏も、「人類が星間空間にいると思うと、ぞくぞくします。すでにボイジャー1号が星間空間へ到達していますが、今回の到達はもっと重要です。2カ所の異なる場所の星間物質を比較できるからです」と付け加えた。なお、ランキン氏は今回の研究には関与していない。

太陽圏は私たちを守る宇宙の「シャボン玉」

ボイジャー2号による最新の発見を理解するには、太陽が単なる火の玉ではないということを知っておくとよいだろう。

私たちの太陽は激しく燃えさかる核融合炉であり、時速約80万キロで銀河系の中心を周回している。

また、太陽の表面からは常にプラズマの太陽風が放出されている。この太陽風はいずれ恒星の間を漂う星間物質と衝突することになる。

星間物質は、遠い昔に恒星が爆発した名残で、油と水のように、太陽風と星間物質が完全に混じり合うことはない。おかげで、両者がぶつかる部分に境界面ができる。太陽からはあらゆる方向に太陽風が放出されるため、星間物質の中のシャボン玉のようになる。この内側が太陽圏、すなわち「ヘリオスフィア」で、その境界面は「ヘリオポーズ」と呼ばれる。

ボイジャーのデータによると、太陽からヘリオポーズまでの距離は、太陽の進行方向の最先端部で約177億キロ。そして太陽圏の泡は太陽と8個の惑星をすべて包み込み、私たちの繊細なDNAも含め、内部にあるもの全てを、銀河系からやってくる強力な銀河宇宙線から守っている。

太陽圏が外の星間空間と接する境界付近には、銀河系の中を移動する太陽圏についての情報が深く刻み込まれている。また、宇宙に散らばる他の恒星の状況もわかるかもしれない。

「私たちは、太陽風と星間物質がぶつかり合う境界面がどうなっているのかを理解しようとしています。その2つがどのように混じり合うのか。泡の内側から外側へ、または外側から内側へ、どれだけの物質が移動しているのかを知りたいと思います」とストーン氏は会見で語った。

そのヘリオポーズを、科学者たちが初めて目にしたのは2012年8月25日だった。ボイジャー1号が星間空間に突入した日だ。だが、そこから得られた情報は予想外のものだった。例えば、星間空間の磁場は予想されていたよりも2~3倍も強力だった。つまり、太陽圏は予想されていたよりも10倍も高い圧力を星間粒子から受けていた。

「私たちは初めて実際に星間物質を体験したのです。実に画期的でした」。NASA本部のプログラム科学者で、太陽系物理学者のパトリック・コーエーン氏はそう語った。

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