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成長戦略の模索は続いているが…(12日、首相官邸での未来投資会議)

世界トップクラスの経営大学院、ハーバードビジネススクール。その教材には、日本企業の事例が数多く登場する。取り上げられた企業も、グローバル企業からベンチャー企業、エンターテインメントビジネスまで幅広い。日本企業のどこが注目されているのか。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるハーバードビジネススクール教授陣へのインタビューをシリーズで掲載する。日本の高度経済成長を教材にしたルイス・ウェルズ名誉教授は、現在の日本経済の停滞にも目を向ける。

<<(上)高度成長は奇跡か ハーバードが見る日本の経済戦略

佐藤 ウェルズ教授が日本の高度経済成長について書いた教材「日本:奇跡の年月(Japan: The Miracle Years)」は、今もハーバードビジネススクールをはじめ、多くの経営大学院で使われています。日本の戦後の高度経済成長は、他のアジアの国々の成長モデルとなったといわれていますが、各国で日本型モデルはどのように導入されていったのでしょうか。

腐敗や小さな国内市場…他国で機能しなかった日本モデル

ウェルズ インドネシアは日本モデルを導入しましたが、政府に権限が集中した結果、汚職や腐敗がはびこり、うまく機能しませんでした。授業で「日本の官僚の天下り制度も腐敗の一種ではないのか」と指摘した学生もいましたが、「国にとって悪い政策でも賄賂をもらったら実行する」というのとは、わけが違います。

ハーバードビジネススクール名誉教授 ルイス・ウェルズ氏

ハーバードビジネススクール名誉教授 ルイス・ウェルズ氏

インドは日本モデルの一部を取り入れましたが、断片的に導入したため、効果も限定的でした。日本との大きな違いは2つ。1つは、戦略を立てる機関と実行する機関が、表裏一体ではなかったこと。そのため国が立てた計画の遂行が思うように進みませんでした。もう1つは、国内企業同士が競争するように主導できなかったこと。日本と同じように外国からの投資を制限し、国内産業を保護しましたが、激しい競争がおこらなかったため、企業の中で効率化が進まなかったのです。

シンガポールは、日本モデルをそのまま導入することができませんでした。国内市場が小さいため、「企業同士を競争させて、効率化させて、成長させる」ことができなかったためです。シンガポールは、日本モデルの本質を理解した上で、自国の機関や市場にあった戦略で成功しました。

韓国は日本モデルを導入して最もうまくいった国ではありますが、汚職や政治的な腐敗の問題が足かせとなり、思うように成長できませんでした。

佐藤 日本の成長モデルが日本でしか通用しないとすると、なぜこの教材を教えるのですか。

ウェルズ 他の国と比較することによって、「様々なバージョンの資本主義がある」ことを学生に認識してもらうためです。日本モデルはアメリカで機能するでしょうか。全く機能しないでしょう。アフリカの国々で機能するでしょうか。汚職と腐敗が蔓延しているため、おそらく機能しないでしょう。

しかしながら、この教材からは、国の経済成長と政府の役割という本質的なことを学ぶことができます。日本の成長戦略がいかに政府機関や官庁と結びついているか、あまり知られていないのです。この枠組みは学生が他国の戦略を分析するときに役立つものです。

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