子育てしつつ元気に働くには 子持ち産業医からエールこちら「メンタル産業医」相談室(37)

日経Gooday

写真はイメージ=(c) Markus Lambrecht-123RF
写真はイメージ=(c) Markus Lambrecht-123RF
日経Gooday(グッデイ)

光陰矢の如しで、あっという間に2019年もあと1カ月ほどとなりました。あなたの心と体はお元気でしょうか? こんにちは、精神科医・産業医の奥田弘美です。さて今回、「働きながら子育てする人」が元気に仕事と育児を両立していくために、産業医としてのエールをつづりたいと思います。

最近ネットでは、「子育てしながら働くのは恐ろしくしんどい、苦行でしかない」といった悲観的論調の記事や、はたまた「働きながら子育てしている人の方が幸福度が低い」といったネガティブなデータを紹介した記事が散見されます。こうした記事を読むたびに、私は一人の産業医そして女性として、若い世代のワーキングママ(パパ)の子育てと仕事の両立を図ろうとする意欲が萎えるのではないかと危機感を抱かざるを得ません。

私は平成時代の前半に2人の子供を出産し、現在まで夫婦共働きしながら子育てしてきましたが、確かに子育てしながら仕事をしていくのは、現在の日本ではいろいろと問題があり、苦しいことや悔しいことに出合うのは真実です。

「当直できないのならクビね」

私自身、子供を出産した平成の前半はマタハラ(マタニティーハラスメント)といった言葉すらなく、女性の活用といった意識も乏しかったため、妊娠を報告した途端に医局に呼び出され医局長から「派遣先の病院を辞めるように」と圧力をかけられたり、勤め先の病院長からは「当直できないのならクビね」と契約更新されなかったりと、様々な悔しくつらい思いをしました。私と同じように、いやそれ以上に理不尽な嫌なこと、つらいことを経験したワーキングママを何人も知っています。

令和の時代になっても、まだまだ日本では女性が働きながら快適に子育てできる環境が整っているとは言えないため、いろいろなストレスを感じているワーキングママ(パパ)も多いでしょう。

でも、決して子育てしながら働くのは苦労ばかりではないのです。「苦あれば楽あり」いや「苦の後には大楽あり」で、子育て中は子供を通じて親に必ず大きな喜びのプレゼントが、定期的に確実にやってきます。

例えば七五三、卒業式、入学式、運動会、発表会、誕生日といった子育て中ならではの様々な行事・イベントでは、わが子が若木のように成長していく姿に感無量になります。

それらは今までの苦労を吹き飛ばす温かく深い感動で、「人生で初めてうれし涙を経験した」という親御さんも少なくありません。私自身も「今までの子育ての苦労がチャラになっておつりがくるぐらいの感動や喜び」を子育て中に何度も経験しましたし、今現在も経験し続けています。

写真はイメージ=(c) Tatyana Tomsickova-123RF

また人として一生の中で、子育て中ほど自分が唯一無二の存在として他者に求められることは恐らくないでしょう。ママ(パパも)は、子供が幼児の頃には「不安になったり眠くなったりすると、必ず抱きつきにくる」絶対的な存在ですし、小学生になり思春期に入っても、子供がいざというとき頼ってくるのは必ず親なのです。

子供が小さくて親側の気持ちに余裕がないときには、それが煩わしくストレスに感じることもあるとは思いますが、「自分が他者にここまで絶対的に必要な存在として求められる」経験は、仕事上でもプライベートでもめったにありません。この「自分をこんなにも必要としてくれる存在がいる」という経験や、そこから生まれる「この小さな存在を守りたい」いう感情は、親自身の自信と存在意義を知らず知らずに高めてくれています。昔から「人は親になったら強くなる」と言われるのは、そのためではないでしょうか。

確かに仕事をしながら子育てをしていると、子供の年齢が低ければ低いほど、それに比例して自分の時間とエネルギーが大幅に奪われます。経済的にもかなり縛りが出てくるでしょう。子供を持たない同僚たちが気軽に飲みに行ったり、趣味や旅行をリッチに楽しんだりしている姿や、同期が思う存分仕事をしてバリバリ活躍している姿を見ると、羨ましく思ったり焦ったりすることも多々あると思います。