20代女性に人気 資生堂のゼリー状ファンデーション

日経クロストレンド

2019年8月に資生堂がマキアージュから新たに発売した「マキアージュ ドラマティックジェリーコンパクト」。レフィル3色(各税込み3300円)、パフ付きコンパクトケース(同1100円)。ドラッグストアやアマゾン、ロハコなどで販売する
2019年8月に資生堂がマキアージュから新たに発売した「マキアージュ ドラマティックジェリーコンパクト」。レフィル3色(各税込み3300円)、パフ付きコンパクトケース(同1100円)。ドラッグストアやアマゾン、ロハコなどで販売する
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乳化かパウダリーか――。名前の通りメーキャップの「土台」となるファンデーションは、その剤型で市場が明確に二分される。そんななか、業界初のゼリー状ファンデーションを発売して以来、課題だった20代の若いユーザーの取り込みに成功しているのが資生堂「マキアージュ」だ。

業界初の「ゼリー化技術」を投入

「マキアージュ ドラマティックジェリーコンパクト」は、業界で初めて食品をゼリー化する技術をスキンケアの乳化技術に掛け合わせて採用したファンデーションだ。ケースには特殊なメッシュを施し、専用パフをメッシュ面に押し当てるだけで均一にファンデーションが取れる。そのパフを直接肌にポンポンと軽くたたくだけで、ムラなくファンデーションをつけられる。

マキアージュのファンデーションのメインユーザーは、パウダリー市場シェア1位の「マキアージュ ドラマティックパウダリーUV」を愛用する30~40代。これまで若い層の取り込みが課題だった。ところがドラマティックジェリーコンパクトの発売以来、新たに20代の低価格帯乳化ファンデーションユーザーを獲得し、発売2週目の2019年8月最終週にはマキアージュのファンデーション市場シェアが過去最高を記録したという(資生堂調べ)。過去5年間に同ブランドが3回新発売した乳化ファンデーションの発売初月店頭売り上げ(速報値)と比較すると、約3倍の実績で推移しているという。

14年の発売以来、今なおマキアージュ ドラマティックパウダリーUVはトップシェアを堅持している(インテージSRIファンデーション市場18年9月~19年8月マンスリー品種別金額ベースシェア)。従って今回のシェア拡大はブランド内の食い合いではなく、マキアージュ ドラマティックジェリーコンパクトによる新規顧客獲得の成果といえるようだ。

流行商品のデメリットをチームでスピード解決

なぜゼリー状ファンデは若者の心をつかめたのか。ファンデーションは粉をプレスト(固形化)したパウダリーファンデーションと、乳化ファンデーションに分けられる。資生堂によるとパウダリー派と乳化派はニーズが異なるため、よほどでない限り剤型の乗り換えは起こらないという。また剤型別のファンデ市場はパウダリー約4割、乳化約6割。パウダリーの微増に対し、乳化は高価格帯・低価格帯を中心に近年拡大傾向が続いているという。

乳化ファンデーションはこれまで液体のリキッドやクリームが主流だった。そこに韓国ブランドのIOPE(アイオペ)がリキッドを固形にしてコンパクトケースに収め「クッションファンデ」として発売し、日本国内でも12~17年で64万個(アモーレパシフィックジャパン調べ)を売り上げ、乳化ファンデ市場の拡大を後押しした。

資生堂ジャパンリージョナルブランド部メイクアップ室ディレクター(マキアージュブランドマネージャー兼務)の北原規稚子氏(写真提供:資生堂)

資生堂ジャパンリージョナルブランド部メイクアップ室ディレクター(マキアージュブランドマネージャー兼務)の北原規稚子氏はクッションファンデの人気の背景を、「乾燥肌だとパウダリーでは浮きそうなので、リキッドで自然なつやのある肌に仕上げたいというニーズはこれまでもあった。しかしリキッドはムラになりやすく、きれいに塗るには技術が必要。そこにリキッドの仕上がりを手軽にかなえられるクッションファンデが登場したことで、一気に人気が広がった」と分析する。

だが、パフをファンデの上に直接置いて収納することから、不衛生さを問題視する人も多かった。さらに「消耗の速さやカバー力の低さ、思ったよりもムラづきするというデメリットへの指摘も少なくなかった」と北原氏。そこでリキッドのようなつやのある仕上がりを実現し、クッションファンデの不満点を解決する剤型の開発を目指した。

このミッションを果たすべくプロジェクト体制が組まれた。セクションごとの役割分担を徹底している資生堂にとって、研究、パッケージ、マーケティングの各部門が連携するプロジェクト体制は異例のこと。しかしクッションファンデの人気がいつまで続くか分からない。商機を逃さないためにも開発スピードを優先した。肝心の剤型開発は難航したが、スキンケアで培った「乳化技術と食品のゼリー化技術を掛け合わせること」「コンパクトに特殊なメッシュを施すこと」という2つのアイデアが合わさったことで商品化にこぎ着けた。

スキンケアで培った乳化技術と食品のゼリー化技術を掛け合わせること、コンパクトに特殊なメッシュを施すこと。2つのアイデアが同時に合わさったことで商品化に至った。メッシュに内蓋をつけてスポンジを衛生的に収納できるようにもした(写真提供:資生堂)

「従来ならマーケティングからクッションだけど均一につくようにという依頼があり、それを研究所が無理だと突き返すという平行線をたどることになっていただろう。パッケージも同時進行していたおかげで実現した。スペシャリストが集まるプロジェクト体制で、組織の壁を越えて作り上げることができた」(北原氏)

プロモーション戦略も若いターゲット層を意識した。テレビCMは認知促進狙いの最低限にとどめ、SNSやデジタル施策で口コミを瞬時に広めることに注力した。デジタルはCMに出演する乃木坂46の白石麻衣による長尺動画を公開した。「最後まで視聴した人の購入率は圧倒的に高い」(北原氏)

北原氏によるとベースメークはポイントメークほど簡単には商品をスイッチしないため、SNS上でも話題になりづらいという。だがツイッターでは発売前週に比べて約10倍のツイートがあった。「インフルエンサーだけでなく一般ユーザーの反応もポジティブ。新しいものは人に言いたくなるのだろう」(北原氏)。パウダーでも液状でもない「ゼリー」がもたらす斬新さと期待感。それがマキアージュ ドラマティックジェリーコンパクトを試してみたい、人に伝えたいといった好循環の反応を生んでいるようだ。

(ライター 北川聖恵)

[日経クロストレンド 2019年11月6日の記事を再構成]