検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

仕事に生きる能力を鍛える アート鑑賞ワークショップ

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

日経ARIA

ビジネスパーソン向けのアート鑑賞ワークショップへの注目が高まっています。東京国立近代美術館では「ビジネスセンスを鍛える」と銘打って個人を対象に参加者を募集し、一夜にして定員がいっぱいに。ポーラ美術館では企業研修を対象にしたワークショップを昨年から本格的に展開し、年内の枠はすべて埋まっています。なぜ、いま「アート鑑賞」が重要視され始めているのでしょうか。その効用、目的とは?

東京国立近代美術館が「Dialogue in the Museum-ビジネスセンスを鍛えるアート鑑賞ワークショップ」を今年6月に開催しました。「当館では2003年から『所蔵品ガイド』という『対話鑑賞プログラム』を毎日行っていますが、ビジネスパーソン向けに鑑賞ワークショップを行うのは今回が初めて。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』を執筆した山口周さんと1年半前から準備し、受講料2万円という金額にもかかわらず、一晩で定員の30人が埋まりました」(東京国立近代美術館 教育普及室長 一條彰子さん)

「ジャッジメント」のクオリティーを上げるためのアート鑑賞

参加者は20代から50代までの30人。経営者、コンサルタント、ホテルのアートプロジェクトディレクター、プログラマーなどさまざまな職種の男女が参加しました。約3時間のワークショップは、講師の山口さんの説明からスタート。一部をご紹介します。

「通常の鑑賞教育と大きく違うのは、『ビジネスパーソンのための』と銘打っているところです。基本的には、仕事に関わる人たちの能力が上がることを前提に考えています。どんな能力かを一言にすると、『ジャッジメント』のクオリティーを上げること。すべてが論理的に白黒つく世界ならいいですが、今、皆さんが生きている世界はそうではないことが増えています。

皆さんが物事を判断するときにこれから重要になってくるのは、論理や世の中の習慣に従って判断するのではなく『どの選択が一番美しいか』ということ。『心を動かして判断する』ことが必要になってくるのです。今の日本は、子どもの頃からずっと正解を求められ続けます。心を動かすということがなく、カサカサになってしまっています。

今日、このワークショップに参加したからといってすぐに心が柔らかくなるわけではありません。ずっと続けることで柔らかくなってくる。このプロセスにはすごく長い時間がかかりますから、楽しみながらやるのがポイントです。まずは、アートカードを使って頭を柔らかくしましょう」(山口周さん)

解説を読まない、否定しない、言葉で表現する

アートカードゲームの後は、グループごとに展示室に移動して対話鑑賞の時間です。まずはファシリテーターから、対話鑑賞の効果を最大化するための3つのルールが説明されました。

1 絵の解説は読まない
→文字に頼らないで絵を見る
2 見て感じたことをどんどん言葉で表現する
→見え方は人によって違う。「これが当たり前」とは思わずに口に出す
3 人の意見を否定しない
→鑑賞に正解はない

今回選ばれた絵は、アメリカ生まれの洋画家・野田英夫の『サーカス』(1937年)です。手前に男性1人、女性2人、背景には海岸が描かれています。まずは1分間、右から、左から、立って見たり、座って見たり。各自で静かに鑑賞した後、自由に意見を出し合います。

「この3人は家族? 家族だとしたら、仲が悪くてぎくしゃくしているはず」

「女性の孤独を表している絵ではないか」

「不安、孤独、悩みなどもやもやが描かれている」

「男性の足元に描かれている犬に違和感がある。誰の犬?」

「中央の女性の目線と、背景に描かれている海の高さが同じ。女性は外の世界に出たいという意識があるが、足元に置かれているダンベルが重しを暗示しているのでは」

それぞれが気になった点、感じたことを語り、議論を深めていきました。特に最後の意見には「そんな見方があったとは」と、全員がハッとした瞬間がありました。自由に意見を出し合った後、ファシリテーターから絵の解説や、作者である野田英夫についての説明があり、終了です。1作品につき20分、合計3つの作品を鑑賞しました。

グループごとに異なる3作品を鑑賞した後に行われたのは、山口さんによるレクチャー。時には映像を流し、約1時間にわたって行われました。その一部をご紹介します。

見る力や美意識を鍛える…アート鑑賞で得られる5つのメリット

「学術検証からも、アート鑑賞にはいろいろな効果があると分かっています。ただ、今の日本の人たちは『すぐに役に立つ病』にかかってしまっています。『読んですぐ頭が良くなる』とか、『聞くだけで英語が話せるようになる』とか。そういうものが世の中にたくさんありますが、それはだいたい詐欺みたいなものですよね(笑)。実際には、ものすごく長い時間がかかるはずですから。アート鑑賞も、今日ここに参加しただけで皆さんが帰る頃に劇的に何かができるようになる、と考えないほうがアートと長く付き合うことができます。

あまりにも功利的な側面から役に立つからアート鑑賞をするとか、『○○ができるようになるから美術館に行く』と考えるとかえって長続きしなくなるでしょう。この前提の上で、ビジネスパーソンにとってアート鑑賞にはどのような意味があるのか。僕は、5つあると考えています」

なかでも印象に残ったのは、「2 感じる力を鍛える」と「3 言葉にする力を鍛える」。山口さんはこう説明します。

2 感じる力を鍛える

「近年の脳科学の研究では、本当に優れた意思決定をするには、理性と感情が必要だと分かってきています。従来、論理的な思考は重要だと言われていますが、極めて複雑な意思決定をする際には、絵を見たり、音楽を聴いたりして心が動くときと同じように、『心を動かす』ことで正しい意思決定をしていると分かったのです。感情的になるな、感情を持ち込むなと言われますがそれは誤りであり、むしろそれを積極的に用いることで優れた意思決定ができるのです。

つまり、心の中に沸き上がる感覚に耳を澄ますのが大事なのです。過剰に理性に流されないようにして、『自分の頭の中の理屈ではそうだけど、感覚的にしっくりこない』という感情を復活させるためのトレーニングとして、アート鑑賞はすごく有効なのです」

3 言葉にする力を鍛える

「特に日本では理解されていませんが『マネジメントは言葉』なんです。言葉が使えないリーダーが何をするかというと、自分で腕まくりをしてやってしまう。自分がやってほしいことを言葉で伝えるのは極めてストレスがかかりますから、多くの人は自分でやってしまうのです。もしくは、事細かに指示をして『自分の分身』としてやらせようとします。ですが、そんなことをしたら相手の能力を引き出せません。

「言語化する能力」の重要性は高まる

実現したいことを伝えて、相手の能力を引き出して実現させていくのが優れたリーダーです。それには『ビジョンを示す』必要があります。日本のリーダーはビジョンを伝えるのが苦手です。何を達成したいかの絵を描いて、言葉で伝える。リーダーにしか見えていないビジョンを、目に見える形で伝えなければならない。まさに今日、皆さんがここでやったのと同じことです。リーダーには絵が見えていて、部下には見えていない。その見えていない絵を自分で言葉にして説明をして『あ、それは素晴らしい状況だな』と感じさせられる人が、他者からモチベーションを引き出して組織の能力も引き出せる。

これから先、『言語化できる』ことはものすごく重要な論点になります。特にロジックでコミュニケーションしても説得できないときに重要なのです」

ワークショップの後、参加者からはこんな声が寄せられました。

・対話鑑賞が興味深かった。自分の考えを言葉にすることに加え、自分の考えていることをより納得いく言葉で伝えてくれる人、話を広げるヒントをくれる人、まったく気づかない見方を教えてくれる人など、5 人グループならではの良さがあった。
・他者との視点のズレが、対立や衝突なしに意識化できた。意見を尊重するこの方法を会議などでも導入できれば。
・自分ひとりで世の中を変えることはできないかもしれないが、一人ひとりが感性を磨いていくことで、世の中が豊かになるように思った。
・他の方と対話しながらの鑑賞は初めてだったが、対話の中で新たな気づきが生まれる瞬間が多くあり、とても有意義だった。
・さまざまな視点を聞くことで、自分がいかに固まった感覚でものを見ているか分かった。

2019年度は11月23日にもこのワークショップの第2回を開催します(定員に達したため申し込みを締め切り)。大きな価値観の転換点に立っている私たちビジネスパーソンに必要なのは、「何が人の心に響くのか」という審美眼を持つことだと山口さんは言います。

「審美眼は、素晴らしいものに触れて鍛えるしかない。素晴らしいものは、過去に多くの人たちの心を動かしてきた。それにたくさん触れるということは、過去の人たちが何に心を動かされてきたかを学ぶということ。たくさん触れることで何が刺さり、何が刺さらないかについての審美眼を鍛えることになるのです」(山口さん)

アート鑑賞が企業の研修になる時代



 一方で「ビジネスのためのアート・ワークショップ」と題し、2017年以降、主に企業の研修を受け入れているのが、ポーラ美術館(神奈川県・箱根)です。「ニューヨーク近代美術館(MOMA)では、1980年代から鑑賞教育を行っています。知識偏重型の美術鑑賞ではなく、どんなことでも自由に発言をしていい、多様な意見を受け入れる。つまり、感性の教育が世界中に広がりました。私たちが展開しているワークショップもこれと同じです」(学芸員・工藤弘二さん)

 「見えるものを言語化する力」「伝える力」「考察する力」「多様性を認識する力」の養成に加え、「メンバーの声を引き出し、ひとつに紡ぐリーダーシップを体験する」ことを狙いの一つに掲げており、ファシリテーターも参加者が体験するのが特徴です。冒頭では、「参加者の意見を引き出し、対話と思考の活性化を促進する」というファシリテーターの役割についても説明されました。

 「大人数で絵を見て議論をする機会は、あまりありませんよね。同じ絵を見て話し合ううちに、たとえ違う意見だったとしても相手に敬意を持ち始める。深いところでつながるチームビルディングができると思います。さらに、最近では、メーカーで商品開発やマーケティングを担当する部署の方が、独自性を発揮できる思考法を養うために私たちの研修を受講しました」(ワークショップの立ち上げから関わる学芸員・今井敬子さん)。これまでにメーカー、金融、小売りなどさまざまな業種の方が研修として利用していますが、年内の枠は既に埋まり受け付けを終了するなど、注目が高まっています。


(取材・文 市川礼子=日経ARIA編集部)

[日経ARIA 2019年7月17日付の掲載記事を基に再構成]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー

大人の「働く・学ぶ・遊ぶ」を讃える!40~50代の働く女性向けWebメディア

『日経ARIA』(日経BP)は、40~50代の働く女性に向けて、「働く・学ぶ・遊ぶ」の上質な情報をお届けします。無料登録していただくと、会員限定記事をお読みいただけるほか、日経ARIAメールをお届け。有料登録していただくと特集や連載をすべてお読みいただけます。さらに、有料会員限定のオンライン会議室やプレミアムイベントへのご招待など、様々な特典を受けられます。

詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_