ブラに抵抗がある女の子にすすめるときの工夫
さて、下着のステップアップに子どもが抵抗を示す場合、どうしたらよいのでしょうか? のじまさんは、その時こそ、思春期の心理を利用してはと提案します。
「おすすめは友達と一緒に買いに行く作戦です。例えば娘の友達が遊びに来た時に、『今度一緒にブラを買いに行こう』と誘ってみましょう。『みんなと同じ』が安心な年ごろだから、一緒に買い物に行って選んだ『友ブラ』で、一緒にスタートができるのがいいんです。ママ友同士で普段から「こんな作戦で行きたいのだけど」と相談しあっておくといいですよね。
デザインを選ぶときも、かわいらしさを意識すると嫌がられます。母親としてはついピンクやレースのものを、と思いがちですが、色は白やグレーで、シンプルなデザインが意外と子どもは好きだったりします」(のじまさん)
上地さんは、「大人への憧れがある早い時期に選びに行くとよい」と話します。「9歳くらいの、少し早めの年齢から、下着選びを始められるのが理想的です。3~4年生頃だと、大人の女の人への憧れが素直にあって、ママのブラジャーをちょっと着けてみたりとかするんですよね。その頃に、『ママと一緒に買い物に行こう』と誘ってみて、下着を選ぶ習慣ができるといいですね」
この作戦は有効期間が短く、思春期の入り口に立つ10歳くらいになると、だんだんと恥ずかしさが出てきてしまうのだそう。「ブラジャーをつけるのが恥ずかしい、という気持ちと、やっぱり友達と足並みをそろえたいという気持ちが出てくるので、憧れ作戦は効かなくなります。そんなときに提案したいのは、ママ自身の下着を、娘と一緒に買いに行ってみては、ということです。
娘が10歳くらいになると、ママも自分の体形に変化を感じているのはないでしょうか。最後にバストサイズを測ったのはいつでしょう。楽だからと、カップ付きインナーばかり着けていませんか? 卒乳後に着けていたブラジャーもなんとなく合わなくなってきたと思ったら、やはり年齢にあったブラジャーに替える時期なんです。子どものブラジャーを買いに付き添いで行く、というよりも『ママも下着買いたいから一緒についてきて』という誘い方がいいかもしれませんね」(上地さん)

ブラを買うというのは子どもにとっては未知の世界。普段とは違う売り場に、不安を抱いている可能性もあります。そんなとき、人生の先輩のママがサイズを測ってもらい、ブラを選んでいるのを見れば、子どもは安心感を抱き、次は私もという気持ちを持つかもしれません。
さらに上地さんは、「子どものブラジャーを選ぶときは、子ども服を買う感覚で選ばないことがポイントです」とアドバイスします。「親はつい、『百何十センチ』というような身長で区切ってあるサイズ表示で選びがちですが、ステップ2のブラジャーを選ぶ頃からは、トップとアンダー両方のバストサイズを測って買うことをおすすめします。
ちなみに、通常のブラジャーとスポーツブラは別のものです。スポーツブラは、運動することに特化した機能性とデザインの工夫があるものを指します。ブラジャーはスポーツブラ代わりにはならないので、注意してよく選んでほしいですね」(上地さん)
ブラジャーで自分の体を守る2つの意味
ブラジャーを着ける、ということは、大人になっていく自分の体を自分で守ることでもあります。それは、デリケートな部分をやさしく保護するという意味の「守る」と同時に、大切な水着ゾーンだから、無防備に人目にさらされないように「守る」ということでもあります。
生まれてから幼児期までは、お母さん・お父さんが体を守ってあげてきました。でも、いつまでもそばについているわけにはいきません。第二次性徴期を迎え、大人の入り口に立った頃からは、自分で自分の体を大切に守る方法を覚えていく必要があります。これも自立のひとつです。それはある日突然できるようになるわけではないでしょう。胸が少しずつ成長していくように、自分の体の守り方も少しずつ理解していく。それが、初めてのブラジャーを選ぶ時間とリンクできるといいですね。

(写真<のじまさんの撮影> 花井智子)
[日経DUAL 2019年6月11日付の掲載記事を基に再構成]