混迷の時代 本質見据えた長期投資が輝く(澤上篤人)さわかみ投信会長

日経マネー

写真はイメージ=123RF
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無人機によるサウジアラビアの石油施設爆撃は衝撃的だった。一時は「原油の生産量が半減か」と騒がれたが、幸い大したことなく収まったようだ。とは言え、米中の貿易摩擦をはじめとして、世界は不安定感を増している。読者も、どう投資判断を下したものか、さぞかし悩ましい状況にあるのではなかろうか。今月は、このあたりを草刈と語り合ってみよう。

今は時代の変わり目なのか

澤上篤人(以下、澤上) 中東情勢を読むのが難しくなってきている。かつては原油の安定的供給が第一義だったから、中東で大きな問題が起こらないよう、どの国も自制心が働いた。ところが、シェール革命で米国が世界最大の産油国に躍り出てから米国の中東戦略はすっかり変わってしまった。

草刈貴弘(以下、草刈) シェールガス・オイルが掘削可能になったことで、米国が原油・ガスの輸入国から輸出国に変わることは2010年頃には想定していました。当然、中東への対応も変わるだろうなとは予想しましたが、正直ここまで変わるとは思ってもいませんでした。もちろん大統領が代わったことが大きいとは思いますが。

グリーンスパン元米連邦準備理事会(FRB)議長が回顧録で「イラク戦争は石油利権が動機だった」と暴露して物議を醸しました。00年代初頭の米国にとってエネルギー問題は、それほどまでに重要な課題だったわけです。それが自国で解決できるようになり、中東に肩入れする必要がなくなったというのが本音でしょう。

澤上篤人氏(撮影:竹井俊晴)

澤上 とりわけトランプ政権は親イスラエル色を鮮明に打ち出して、イランとの対峙姿勢を強めている。またイスラム圏でも、スンニ派の盟主サウジアラビアとシーア派のイランとの対立が激しくなっている。一触即発の状態にまでは至ってないが、いつ不測の事態が起きてもおかしくない。

草刈 この地域の問題は、第1次大戦後のオスマントルコ分割に端を発し、それがいまだ続いているということになっていますが、それ以前から民族対立が続いていた地域です。宗教対立で理解しようとしても、それだけではなかなか分かりにくい。それ故、一旦重しが外れると、表面化する対立が想定以上になるのでしょう。

澤上 欧州の軋(きし)みも気になる。20世紀末、欧州連合(EU)の市場統合と統一通貨ユーロの発足で、世界は大いなる希望に沸いた。それから20年近くたち、EU各国のまとまりに疑問符が付き始めている。市場統合で最大のメリットを享受してきたドイツも成長スピードを落としている。

草刈 EUの発足当初、ドイツは欧州の病人といわれていましたよね。その後、社会保障改革などを断行。欧州という巨大な統一通貨の市場が目の前に生まれたことや、域外との貿易協定が進展したことで製造業が息を吹き返しました。対内直接投資も増え、まさに独り勝ちの状況でしたが、ギリシャ・ショックあたりから、風向きが変わり始めたように見えます。

ドイツを含むEUの主要国では国民の経済的格差が社会を蝕(むしば)み始めています。シリア難民の急増で、大衆は極端な政治思想を表立って支持するようになりました。

社会全体を不安が覆っている今の状況は、かつての大戦前夜に似ているという指摘も耳にしますし、時代が変わり始めていると感じる人も多いと思います。