酒は百薬の長のはずでは? 少量でもNGの最新事情少量飲酒のリスク(上)

日経Gooday

海外の14の研究をまとめて解析した結果。適量を飲酒する人は死亡リスクが低い傾向が確認できる。(Holman CD,et al. Med J Aust. 1996;164:141-145.)

また、前述した国内のコホート研究(JPHC Study)では、その後、2005年に国内の40~79歳の男女約11万人を9~11年間追跡した結果を発表している。それによると、総死亡では男女ともに1日平均23g未満で最もリスクが低くなっている(Ann Epidemiol. 2005;15:590-597.)。

なるほど、こうして適量20gという指標ができたわけだ。左党としては、「この結果で満足してよ」と思うのだが、そうはいかないのが研究者たちである。

先ほど、Jカーブについて簡単に解説したが、研究者の間では「これはちょっとおかしいのでは?」と疑問視する声も挙がっていたのだと吉本さんは話す。

具体的には、「『全く飲まない人の死亡リスクがこんな高くはならないのではないか』という指摘です。詳しくは後述しますが、飲酒が血管に対していい効果があるのは確かとはいえ、他の病気についてはリスクが上がることから、トータルで見たら『(飲酒量は)少なければ少ない方がいいのではないか』と研究者の間ではずっと言われてきたのです」(吉本さん)

なお、こうした疑問が挙がった背景には、コホート研究において、飲酒量の測定が不十分であったこと、また飲まない人の中には元々飲んでいてやめた人もいるのではないか、などといった指摘もあったのだという。

「こうした流れから、ここ10年ほどの間に『少量飲酒のリスク』に特化した研究が増えました。昨年、Lancet誌に掲載された論文などがそれにあたります。ただし、日本において少量飲酒に関する論文はほとんど出ていません」(吉本さん)

「基本的に飲酒量はゼロがいい」という驚きの結論

いよいよ本題に突入、左党にとっては“爆弾”、あるいは悲報ともいえる論文である。先生、2018年8月にLancetに掲載になった論文(Lancet. 2018;392:1015-35.)には、「基本的に飲酒量はゼロがいい」と言い切っているとか。これはどういうことなのでしょうか。

「この論文は、1990~2016年にかけて195の国と地域におけるアルコールの消費量とアルコールに起因する死亡などの関係について分析したものです。この論文では最終的に、健康への悪影響を最小化するアルコールの消費レベルは『ゼロ』であるとしています。つまり、『全く飲まないことが健康に最もよい』と結論づけているのです」(吉本さん)

吉本さんによると、かなりインパクトがある論文として研究者の間で話題になったそうだ。「かつての研究のグラフではJカーブを描いていましたが、今回の研究結果を見ると緩やかにLカーブになっているんです。下のグラフにあるように、飲酒量1(アルコール換算で10g)くらいまでは疾患リスクの上昇はあるものの緩やかで、それより多くなると明確に上昇傾向を示しています。つまり、『飲むなら少量がいいよ、でもできたら飲まないほうがいいよ』ということですね」(吉本さん)

縦軸は相対リスク。横軸はアルコールの消費量。1単位は純アルコール換算で10g。(Lancet. 2018;392:1015-35.を基に編集部で作成)

なぜ、ゼロの方がいいのか? 心疾患などについては適量の飲酒がリスクを減らすのですよね? 納得いかずに吉本さんに食い下がると、

「ご指摘のように、この論文でも虚血性心疾患(心筋梗塞など)については以前と変わらず、『少量飲酒で発症リスクが下がる』という結果が出ており、Jカーブが確認されています。しかし、飲酒量が増えればがん、結核など他の疾患のリスクは少量飲酒においても高まっていくので、心疾患などの予防効果が相殺されるのです」と吉本さんは説明してくれた。

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