人気高まるインド映画・ドラマ 神話からSFまで様々
日本興収が4億円を突破した『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1998年)以来、20年ぶりのインド作品の波が来ている。先駆けとなったのが、『バーフバリ』シリーズ(17年)だ。第1作『バーフバリ 伝説誕生』は、当初わずか8館での公開だったが、口コミで人気が広がり、1年半以上にわたるロングラン上映に。以降、日本でインド作品への関心度が高まるなか、ドラマの放映や映画の公開が続いている。
9月からは動画配信サービスHuluで、ドラマ『ポロス~古代インド英雄伝~』の配信が始まった。5シーズン全299話(1話約30分)という圧倒的なスケールの同作は、約81億円という巨額の製作費をかけている。「『ポロス』の製作の背景には、『バーフバリ』の世界的成功が間違いなくあるでしょう。古代インドの舞台設定や、王となる主人公が持つ超人的な能力、豪華な衣装や宝飾品など、両作には共通点が多く、意識していることを感じます」と語るのは、両作の字幕翻訳者・藤井美佳氏。『ポロス』はインドネシアやタイなど、世界10カ国、13の地域でも放映されている。
ハリウッドに学んだVFX
インド作品と言えば、前述の『ムトゥ』のように、歌と踊りのシーンが複数挿入されるミュージカル仕立ての作品や、『バーフバリ』のように古代を題材にした作品を思い浮かべる人も多いだろう。だが、昨今は多様なジャンルが、世界各国で人気を集めている。
その1つが、ヒューマンドラマ系だ。映画『ダンガル きっと、つよくなる』(18年)は、元アマチュアレスリング選手とその娘がオリンピックを目指すストーリー。世界興収は340億円を突破し、インド映画史上1位を記録した。今後のヒューマンドラマ系では、実在のインド人ラッパーの半生を描いた映画『ガリーボーイ』が控える。
SFもインド作品で盛り上がっているジャンルだ。『ロボット2.0』は、"おじさんロボット"が大暴れする作品。インドでは、『バーフバリ 王の凱旋』に次ぐ史上2番目の興行収入を記録し、マレーシアやアラブ首長国連邦でも興収ランキング1位を獲得した。同作の配給会社アンプラグド社長の加藤武史氏は、SFジャンル躍進の要因を、インドのVFX技術の高さにあると指摘する。「ハリウッドで活躍するVFXプロダクションの多くが、インドにサテライトスタジオを開設したり、資本提携しています。インドは世界最高水準のVFX技術を習得しているのです」
登場人物のキャラクター設定にも変化が見られる。「かつては男尊女卑の色が濃かったインド作品ですが、『ポロス』では、例えば盗賊団の中でも男女の立場は平等。ジェンダーロール(性役割)に配慮するのも、世界市場を意識してのことでしょう」(藤井氏)
(ライター 横田直子)
[日経エンタテインメント! 2019年11月号の記事を再構成]
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