「天気の子」森七菜 変化うれしい菅田先生の卒業祝い
大ヒットしたアニメ映画「天気の子」でヒロインの声優を務めた森七菜さん。現在、戸田恵梨香さんが演じる役の少女時代を演じた「最初の晩餐」が公開中、来年1月には岩井俊二監督の「ラストレター」が公開を控えている。そんな18歳が大切にしているモノと見せてくれたのは、革製の台本カバーだった。
卒業記念に「先生」がくれた台本カバー
「これはドラマ『3年A組‐今から皆さんは、人質です‐』で共演した菅田将暉さんからいただいたものなんです。『3年A組』は、Huluオリジナルストーリーの『3年A組‐今から皆さんだけの、卒業式です‐』を撮って、3月にクランクアップしました。そのとき、出番はないのに(先生役で主演の)菅田将暉さんが現場に来てくださったんですよ。それで全員に(劇中の)卒業証書と一緒に手渡ししてくれたのが、この台本カバーでした」
「3年A組‐今から皆さんは、人質です‐」は、卒業式直前に教師がクラスの生徒全員を人質に取って学校に立てこもるというドラマ。菅田さんは生徒を人質に取る教師、森さんは電脳部の生徒を演じた。
「箱が大きかったので最初は何が入っているのか想像がつかなかったんですけど、箱を開けると、この台本カバーが入っていて。台本は、役者がいつも持ち歩くもの。『(台本を)大事にしろよ』って、教えをもらっているような気がしましたね。
お気に入りのポイントは、本革で高級感があるところ。おしゃれなんですよ。見えないところに切り込みが入っていて、ペンも入れられるし、いただいたお名刺も刺せる。革のしおりも付いていて、万能です。しかも柊一颯(ひいらぎいぶき/菅田さんの役名)にかけた『ブッキブッキレコード』っていう、架空のレーベルみたいなロゴも刻印されている。こだわりの逸品をいただいたっていう感じで、すごくうれしかったです」
ブックカバーを代用したり、オーダーメードしたりする人も多い、業界人の仕事道具「台本カバー」。森さんも仕事を始めた当初から台本カバーを使っていたという。
「台本カバーはこれが3代目です。初代は中学生の頃、最初に出させていただいたドラマ(Amazonプライム・ビデオオリジナルドラマ『東京ヴァンパイアホテル』)のときに自分で文房具屋さんに行って買いました。素材は緑のフェイクレザーで、中学生のお小遣いで買えるものなので安かったです(笑)。2代目はファンの方がくださった、本当の革のもの。それもすごく気に入っています。連続ドラマの撮影に入ると、持ち歩く台本も1冊じゃなくなるので、そのときにまた使いたいですね。
そして3代目が、菅田さんにいただいたものです。使い始めたときは、革が硬かったんですよ。でも長く使うにつれて軟らかくなってきた。そういう変化が革の良いところですよね。使えば使うほど愛着も湧きますし、これからこの台本カバーがどうなじんでいくのか楽しみです」
昔のビデオを見て小学生の演技を研究
公開中の出演映画「最初の晩餐」は、死んだ父親が残した思い出の料理を通じて、家族が絆を取り戻していく姿を描いたヒューマンドラマだ。森さんは、戸田恵梨香さん演じる長女・東美也子の小学生から高校時代までを演じている。
「16歳のときにオーディションを受けた作品です。私自身、家族がすごく好きなので、ぜひこの家族の映画に選んでいただけないかなと思っていました。
実際に撮影に入って難しかったのは、小学生時代の美也子を演じることです。どうすれば子どもに見えるか、自分の小学生時代のビデオを見て研究したりしました。そこで気づいたのが話し方。今でも『話し方が子どもみたいだね』って言われるんですけど(笑)、小学生の頃はもっと舌足らずで、不安定だったんです。そういうところを意識して演じました。
もう一つ不安だったのは、戸田さんの少女時代を演じるということ。どうやって演じればいいんだろうと思っていたら、本読み(台本読み合わせ)の後に、戸田さんが私のセリフを全部、読んでくださったんです。小学校から高校生時代まで、全部、お芝居をしてくださって。それを体で覚えて、反すうしながら、役を作っていくことができました。
「最初の晩餐」には、目玉焼きや味噌汁、焼き魚など、思い出の家庭料理が登場する。特に印象に残っている料理は何かと聞いてみる。
「映画の中の料理は全部印象的ですね。撮影中に本当に食べているんですけど、全部、おいしかったんですよ。だから本番後、『これ、食べていいですか?』って聞いて、全部食べちゃってました(笑)。
特に印象に残っているのはお味噌汁。2月に長野県で撮影していて、寒かったんですよ。でも夏のシーンのために半袖になったりしていたので、お味噌汁のぬくもりに助けられました。
完成した映画を見ると、ご飯の一つひとつに、スクリーンの向こう側とは思えないくらいのぬくもりが感じられるんです。すごく好きな作品になりました」
では、森家の家庭料理で、森さんが一番好きなモノは何だろう。
「一番ってことは、1つですか。お母さんが作る料理は全部おいしいんです。うーん、しいて選ぶとすれば……1つじゃなくて、3つでもいいですか(笑)。だったら、手巻きずし、ハンバーグ、あと卵焼き!」
「手巻きずしは、お祝いの日によく食べるんですよ。家族みんなでひとつの桶(おけ)から酢飯を取って、思い思いの具材をのせて食べたり、『この組み合わせ、おいしいから食べてみてよ』ってお互いに巻いてあげたり。その家族の時間が、すごく楽しいです。
ハンバーグは、タマネギが入っているのもおいしいんですけど、私が一番好きなのは牛肉だけのハンバーグ。だから『牛肉100パーセントバージョンでお願いします』ってリクエストしています(笑)。本当に牛肉と調味料だけで作るので、切ったら肉汁がぶわーっと流れるんですよ。
最後の卵焼きは、甘くておいしいんです、うちのは。きび砂糖がたくさん入っていて、おかずかスイーツか、どっちかわからないぐらい、甘いところが好きです」
上京後の新しい部屋を想像してワクワク
森さんの名前を一気に高めたのが、7月公開の映画「天気の子」だろう。晴天を呼ぶことができる力を持つヒロイン天野陽菜(あまの・ひな)を演じたこの作品は観客動員1000万人、興行収入137億円を突破した。
「『天気の子』の陽菜に選ばれたときは、びっくりしました。『君の名は。』の新海(誠)さんですよ! 『無理なんじゃないかな? 大丈夫かな?』と思いながらオーディションを受けていた部分が少なからずあったので。選んでいただいたときは、信じられなかったです。
公開後の反響も、すごかったです。取材で『天気の子』について聞いてもらえることも多いですし、街で誰かが『今から晴れるよ!』(劇中の陽菜のセリフ)と言う声が聞こえてきたりもして、『天気の子』、広がっているなって思いました」
現在、高校3年生。地元・大分の高校に通いながら、仕事のたびに上京するという生活を続けている。
「東京には名前だけは聞いたことがあるようなお店もたくさんあって楽しいですけど、でも、東京に来るようになって、大分のことがもっと好きになりました。大分のいいところですか。やっぱり料理がおいしいところ。特にオススメは、しいたけを焼いてかぼすをかけて食べる『しいたけステーキ』です。あとやっぱりお魚がおいしい。東京で食べる魚もおいしいですけど、大分の魚はやっぱりひと味違いますね」
最後に今欲しいものを聞いてみた。
「今、欲しいのは、おしゃれな置物とか、インテリアになるもの。撮影現場に行くと、美術さんがおしゃれな部屋のセットを作っていらっしゃるじゃないですか。例えば額縁も、私が使えばただの額縁だけど、きれいに飾られてインテリアになっていたりする。そういうふうに、何かを有効活用できる人になりたいです。
来年、高校を卒業したら上京する予定なので、今は新しい部屋のことを考えるのが楽しみです。どんな部屋にしようか。何を置こうか。その想像が今、どんどん広がっていて、ワクワクしています!」
2001年生まれ、大分県出身。16年に大分県でスカウトされて芸能活動を開始。17年「東京ヴァンパイアホテル」で女優デビュー。18年はドラマ「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」や「獣になれない私たち」などに出演した。19年は「3年A組‐今から皆さんは、人質です‐」「少年寅次郎」のドラマや、「天気の子」「東京喰種 トーキョーグール【S】」「地獄少女」などの映画で活躍。20年1月には岩井俊二監督「ラストレター」が公開予定。NHK連続テレビ小説「エール」にも出演する。「日経トレンディ」が選ぶ「2020年の顔」にも選出された。
最初の晩餐
登山家だった父が亡くなり、カメラマンの東麟太郎は久しぶりに故郷に帰る。通夜の夜、母が仕出屋を突然キャンセルして出した「通夜ぶるまい」は目玉焼きだった。みんなが戸惑うなか、次々に出てくる料理は、家族にとって思い出深いものばかり。父との時間がよみがえり、やがて家族も知らなかった秘密が浮き彫りになる。監督・脚本・編集・常盤司郎 出演・染谷将太、戸田恵梨香、窪塚洋介、斉藤由貴、永瀬正敏、森七菜、楽駆
(文 泊貴洋、写真 藤本和史)
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