相続税対策でアパート経営 節税できる理由とリスク

写真はイメージ=PIXTA
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相続税を減らすため保有する土地の上に賃貸アパートを建ててはどうかと不動産会社に勧められました。賃貸することで土地の評価額を下げられるそうですが、どういうことですか。

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土地にアパートやマンションなどの賃貸用住宅を建てるのは相続税対策でよく使われる手です。

賃貸にすると、入居者がそこに住み続けるうえでの一定の権利を持つことになり、強い効力が生まれます。このため税務上、その土地は持ち主の自由にならない財産とみなされます。その分、相続時の税額を計算する際の評価額が下がり、節税につながりやすいのです。

不動産取引の実勢価格が1億円である土地を例に計算のイメージを見てみましょう(図)。

土地の評価額はまず「路線価」をもとに計算します。路線価は国税庁が毎年夏に公表しており、実勢価格の80%程度になるのが通常です。このケースで土地が更地の状態であれば、評価額は8000万円になります。

アパートを建てて賃貸すると土地は「貸家建付地」として扱われます。入居者がいて土地の利用に制限がかかると考え、その分を評価額から差し引けるようになります。具体的には借地権割合、借家権割合という数値を掛け合わせ、その分を減額します。

借地権割合は地域によって異なります。路線価の地図上に、A(90%)~G(30%)の記号で示されています。地価が高いエリアほど高めになるとされ、都心部の住宅地では60%、70%といった割合が目立ちます。借家権割合のほうは都道府県ごとに年1回決まりますが、全国ほぼ一律で30%です。路線価のサイトで確認できます。

図のケースで借地権割合を60%、借家権割合を30%とすると、掛け合わせて18%分、1440万円を8000万円から差し引けます(アパートは満室と想定)。ですから残りの6560万円がその土地の評価額となります。実勢価格の1億円から比べると、金額は3440万円減ることになります。土地を更地で相続する場合に比べて税金が少なく済みます。

ただし、相続税を減らす目的だけで賃貸アパートを建てるのはリスクがあると指摘する専門家は少なくありません。税理士の木下勇人さんは「節税対策のつもりでも、実際は不動産経営に踏み出していることを自覚する必要がある」と指摘しています。

賃貸アパートの建設資金を金融機関からの借り入れでまかなって賃料収入で返済するつもりでも、収入を安定して得られるとは限りません。借り手が見つからずに空室ばかりとなり、借金の返済が滞るリスクがあることを認識する必要があります。

[日本経済新聞朝刊2019年11月9日付]

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