できない理由は探さない 「世のため起業」を貫くリンクアンドコミュニケーション 渡辺敏成社長(下)

リンクアンドコミュニケーションの渡辺敏成社長は一橋大学の商学部経営学科で、起業の志を培った
リンクアンドコミュニケーションの渡辺敏成社長は一橋大学の商学部経営学科で、起業の志を培った

ビジネスの背骨に、世の中への貢献を据えて起業するケースが増えてきた。企業の従業員向け健康管理アプリ「カラダかわるNavi(ナビ)」を手掛けるリンクアンドコミュニケーション(東京・千代田)の創業社長である渡辺敏成氏(56)もその一人だ。一橋大学の商学部経営学科で、起業の志が芽生えた。幼いころ、母が働くレコード店で大人に囲まれて過ごした時間も、「人の役に立ちたい」という気持ちを育んだという。

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味の素でシステムエンジニアや冷凍食品の商品企画を経て、医療従事者向けの専門メディアを展開するケアネット(東証マザーズ上場)で新規事業の立ち上げに加わった。その経験を強みに2002年、いよいよ自身の夢であった起業へと一歩を踏み出した。狙いをつけたのは健康・医療の分野だ。

「医療従事者は一生懸命がんばっているのに、医療サービスを受ける患者の側は多くの不満を持っています。『社会の仕組みを変えたい、特に生活者に影響を与える分野で』というのが起業の根底にありました」

開業医とのネットワーク通じて起業アイデアに磨き

ケアネットでは衛星放送の番組を通じて、個人でクリニックや診療所などを開業した医師向けに、最先端の手術手法や医薬品処方などに関する専門知識をコンテンツとして放送する会員制チャンネル「ケアネットTVメディアカルチャンネル」事業を立ち上げた。大学所属の医師らに内容を監修してもらいながら番組編成とコンテンツを磨くなかで、広がっていったのが開業医とのネットワークだ。

「生活者との接点というと、やはり街の中にあるクリニックやホームドクターとなっている開業医だなと考えました。ここの医療サービスが大きく変われば、生活者・消費者も利便性が大きく改善されたと思うでしょうから」。開業医を何人も訪問しては、起業のアイデアをぶつけてみたという。

アイデアは3つあった。1つ目はクリニックでの顧客情報管理(CRM)に関するサービスだ。日本のクリニックには内科が多く、急性の病気よりも生活習慣病に絡む病気を診察する機会が増えている。

そういった現状を踏まえて、診察券を「会員カード」のようにして定期的な健診を呼びかけたり、来院しないときにも健康管理情報を提供したりすることで、「患者=顧客」をクリニックに定着できるようにするマーケティングサービスを考えた。その人の体に関する情報や診察に基づいて、例えば花粉症の時期が近づいてきたら「早めに対策して薬を飲むようにしましょう」などと、早期受診を働きかけるようなサービスだ。

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