アマゾンに勝てる人材 デジタルシフトの専門家が指南『GAFAに克つデジタルシフト』著者に聞く

トヨタですら「生きるか死ぬか」

デジタルを基盤とした新しい事業を始めようとすると、必ず既存の「稼ぎ頭」を担当する部門から反発が起きる。いわゆる「イノベーションのジレンマ」だ。経営トップは、抵抗勢力とも言える既存分野の反対を抑えて、あえてリスクをとって成長分野に投資をする必要がある。そこで「必然的に人や組織の問題が大きくなってくる」と鉢嶺氏は言う。

トヨタ自動車でもジレンマの克服が急務だ。同社の豊田章男社長は「もうトヨタも生きるか死ぬかである」と2018年の決算説明会で語った。鍵を握る技術は「電気自動車」「自動運転」「ライドシェア」の3つだ。

「電気自動車」に全面的に移行すると、エンジンの開発から製造ラインまで既存の技術が活用できなくなる。「自動運転」の分野では、すでにビッグデータやAIに強いGAFAの存在感が強まっている。既存の自動車メーカーは、IT企業のトップランナーを追いかける立場だ。「ライドシェア」に関しては米ウーバーテクノロジーズやリフト、中国の滴滴出行(ディディ)がはるか先を進んでいる。日本企業は国内の規制が障壁になって周回遅れの状況に甘んじている。

スピードこそ命

鉢嶺氏はデジタルシフトに失敗する企業に共通する条件を次の5つにまとめた。

1.トップに、デジタルシフトを戦略の中心に据える決意と覚悟がない
2.デジタルをわかっていない人が、デジタルシフトの責任者になる
3.既存事業を優先させ、デジタルをないがしろにする
4.デジタルシフトの責任者に権限(カネやヒト)が与えられていない
5.デジタルシフトによってもたらされるワクワクする未来を、経営トップが語れない

なかでも重要なのは、デジタルシフトを引っ張ることができる優秀な若い人材を活用するための環境整備だ。「そのためには人事と予算の独立を確保できる分社化や子会社化、M&A(合併吸収)などをうまく活用することが重要になる」と鉢嶺氏は強調する。なぜなら、デジタルシフトの生命線が「スピード」だからだ。新しいことを始めるのに半年かけていたら、その間に優秀な人材は他社へ逃げてしまう。これまでの常識を上回るペースでビジネスのサイクルは加速しているのだ。

GAFAに対抗できる企業は日本から出てくるのか。「その可能性は十分にある。その企業は、自らを破壊する可能性のあるビジネスモデルにチャレンジする勇気を持つ経営者が率いているはずだ」と鉢嶺氏は話す。

「アマゾンなんて、Eコマースの企業でしょう? ウチには関係なさそうだ」。もし、あなたの会社の幹部がこのように受け止めているとしたら、転職を考えた方が良いかもしれない。

(若杉敏也)

GAFAに克つデジタルシフト 経営者のためのデジタル人材革命

著者 : 鉢嶺 登
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,760円 (税込み)

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