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初出荷で表彰 日本人が米国で挑む超我流SAKE造り世界で急増!日本酒LOVE(15)

中華の蒸し器で米を蒸すユニークな醸造法

郷に入れば郷に従えで、コメを蒸す器具も中華の点心などの蒸し器を地元で調達して利用している。「地元で買える最大の蒸し器がこれでした。日本の蔵人仲間はみんなこれを見て驚きますね。ユニークすぎると言われますよ」と笑う迫さん。

蒸気を逃さないようにセイロの間にシリコンパッキンを入れて工夫した。現在は2カ月ごとに1200リットル(500ミリリットル瓶で2400本)をコンスタントに生産している。

迫さんはカリフォルニア料理もワインも好きなので、地元の食事に合うようなSAKEを醸しているうちに、酸が高めで厚みのある酒質に行き着いた。「ワインの屋台骨は酸。日本酒の屋台骨はアミノ酸やコハク酸由来のうま味。私のようにワインとのペアリングに慣れている人は必然的に食事の時に口の中で酸を探してしまう」(迫さん)

さらに「ハイエンドなレストランでは、ワインも日本酒も提供します。ワインの後に飲んでも違和感のない日本酒を作ってみたんです」(同)と語る。

協会酵母9号という、日本ではスタンダードな酵母を日本から取り寄せて使っている。だが、焼酎用の黄麹菌(きこうじきん)をちょっとだけ加えるなど工夫することで理想の味に近づけた。Den Sakeは米国人の大好きなステーキなどに見事にマッチ。また、フレッシュで植物の緑を感じさせる酒の風味は、新鮮な野菜や果物を多用するカリフォルニア料理にもうまく同調すると注目を集めるようになった。

Den Sakeのボトルラベル

Den Sakeはボトルのラベルもかなりユニークだ。日本らしい漢字のデザインはまったくなく、原料米や生産者名など基本情報のみを記したシンプルなラベルだ。「大吟醸・吟醸などとはあえてラベルに書かないようにしている」と迫さん。「大吟醸が一番いい酒、と思っている米国人が多いが、毎回それが一番とは限らないと思う。そういうメッセージも込めて純米酒などとはあえて記載していないんです」と説明する。

ボトルのサイズは500ミリリットル。「小売価格は約28ドル(約3200円)です。もし日本酒で一般的な720ミリリットルのボトルで販売したら、どうしても割高な印象になってしまう」と迫さんは解説する。

オークランドにある迫さんの醸造所

マイクロブリュワリー(小規模醸造所)のクラフトSAKEやクラフトビールが今、世界的に注目を集めている。こだわりの少量生産が基本なので、大手の酒に比べると割高になってしまうが、価値を分かる人々に支持されて世界的なムーブメントが起きているのだ。その流れの中で、Den Sakeもその価値を理解できる人々に支持されている。

「割高な酒ではありますが、けっして利益が大きいわけではありません」(迫さん)という。800スクエアフィート(約23坪)とかなり手狭な醸造所で酒造りしており、ほとんどが手作業だ。「うちの麹室(こうじむろ)なんて世界最小なんじゃないかな?」と笑って話すほどだ。

今は1種類の酒のみを生産しており、すぐに地元で売り切れてしまう。生産ロットを上げれば、リーズナブルな価格にできるので、1年後にはより大きな醸造所に変える予定だ。その時は「熟成酒などにも挑戦してみたい。色々なタイプの酒を醸してみたい」と迫さんは意欲的だ。

米カリフォリニアで活躍する日本人クラフトマンは新しい生産体制を整える夢に向かってまっしぐら。日本人SAKE醸造家として米国で新たなSAKE旋風を巻き起こしていくだろう。

(国際きき酒師&サケ・エキスパート 滝口智子)


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