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初出荷で表彰 日本人が米国で挑む超我流SAKE造り

世界で急増!日本酒LOVE(15)

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NIKKEI STYLE

日本酒の国外への輸出が増える一方、海外でも近年日本酒(SAKE)が作られている。米国、カナダ、メキシコ、英国、スペイン、フランスなどだ。今回は米カリフォルニア州オークランドで脚光を浴びているSAKE醸造家の迫義弘さんを紹介する。迫さんは渡米して来年で20年目、もともとミュージシャンとしてCDデビューを果たし生活していた。音楽活動のかたわら、ワインショップやカフェで働いていた。

「最初はワインのことを勉強していましたが、僕が日本人なので、日本酒のこともお客さんからたまに聞かれました。簡単な説明をしただけでも、お客さんは『なるほど』と納得したり、感激したりするんです。お客さんにもっと喜んで欲しかったので、いつの間にか日本酒のことも勉強するようになっていました」と迫さんは話す。

音楽を通して、米国の文化を吸収し続けてきた迫さん。日本酒は日本の伝統文化そのものであり、それを伝える側になった。「影響を受けてきた米国に、今度は逆に自国の文化を広げる。ようやく一方通行なやり取りでなくなったような気がします」(迫さん)と感じている。ワインや日本酒のセミナーを開催していくうち、「もっと日本酒のことを掘り下げて深く学ぶには、自分で作るのが一番!」という考えを抱くようになった。

さっそく実家のある神奈川県の蔵元や、新潟県を訪れて、日本酒の醸し方を教えてもらったのが3年前のこと。試行錯誤して2018年3月、Den Sake(田酒造)が誕生した。

18年8月、醸造許可証取得後、初の出荷を迎え、全部で180リットル(一升瓶100本分)を生産。すると翌年2月には日本酒の醸造家として初めて、飲食関連分野で活躍する店や人を表彰する米国の「James Beard Award」のセミファイナルに、彼はノミネートされたのだ。「まだ作り始めてちょっとしかたってないのに信じられないです。とても光栄です」(迫さん)

ミシュランで星を獲得している「Quince」(サンフランシスコ)や「Single Thread Farms」(ヒールズバーグ)、「Saison」(サンフランシスコ)、「Commis」(オークランド)など、現地の洋食系レストランでも続々とDen Sakeを採用し始めた。一流シェフを筆頭に、地元の人々をひき付けている。

「米国では日本酒(nihon-shu)という言葉を聞いたことがほとんどないです。全てSAKEと呼びますね」と迫さん。実は迫さんが作る酒は日本酒とは呼ばれない。日本酒とは日本で生産される酒のことを指す。迫さん始め、海外で生産された酒は原材料がコメと水と同じであっても、SAKEと呼ばれる。そして日本で作られた日本酒も、米国ではSAKEと呼ばれているという。

だがSAKEは日本酒にとってライバルというわけではないようだ。海外でSAKEが造られることで、現地の料理や好みに合ったSAKEも生まれ、日本酒の多様性が高まる可能性もあるからだ。日本酒とSAKE、全体の需要の裾野が広がることで、やがて日本酒の消費拡大にもつながる可能性を秘めている。また長距離流通が難しいフレッシュな生酒も、SAKEの生酒なら現地の人に楽しんでもらえる。

迫さんは「アメリカ産らしいSAKE」を生み出すことを大切にしている。例えば原料となるコメも、日本で使われる酒米ではなく、地元産のもので、すしなどにも使われる一般的なコメ(カリヒカリという現地の品種)を使用。米国のコメは硬いので吸水率が低く、日本と同じ発酵方法だとうまくいかない。手探りで試行錯誤し、データを確認しながら少しずつ調整して独自の醸造法を編み出していった。

酒の仕込み水も地元の水を使用する。オークランドの水は時期により、中軟水から超軟水まで変化するが、あえてそのまま使用。「水質が安定しないので、酒質も毎回少しずつ変わるが、ローカルの特徴が出ていていいのでは」と迫さん。

郷に入れば郷に従えで、コメを蒸す器具も中華の点心などの蒸し器を地元で調達して利用している。「地元で買える最大の蒸し器がこれでした。日本の蔵人仲間はみんなこれを見て驚きますね。ユニークすぎると言われますよ」と笑う迫さん。

蒸気を逃さないようにセイロの間にシリコンパッキンを入れて工夫した。現在は2カ月ごとに1200リットル(500ミリリットル瓶で2400本)をコンスタントに生産している。

迫さんはカリフォルニア料理もワインも好きなので、地元の食事に合うようなSAKEを醸しているうちに、酸が高めで厚みのある酒質に行き着いた。「ワインの屋台骨は酸。日本酒の屋台骨はアミノ酸やコハク酸由来のうま味。私のようにワインとのペアリングに慣れている人は必然的に食事の時に口の中で酸を探してしまう」(迫さん)

さらに「ハイエンドなレストランでは、ワインも日本酒も提供します。ワインの後に飲んでも違和感のない日本酒を作ってみたんです」(同)と語る。

協会酵母9号という、日本ではスタンダードな酵母を日本から取り寄せて使っている。だが、焼酎用の黄麹菌(きこうじきん)をちょっとだけ加えるなど工夫することで理想の味に近づけた。Den Sakeは米国人の大好きなステーキなどに見事にマッチ。また、フレッシュで植物の緑を感じさせる酒の風味は、新鮮な野菜や果物を多用するカリフォルニア料理にもうまく同調すると注目を集めるようになった。

Den Sakeはボトルのラベルもかなりユニークだ。日本らしい漢字のデザインはまったくなく、原料米や生産者名など基本情報のみを記したシンプルなラベルだ。「大吟醸・吟醸などとはあえてラベルに書かないようにしている」と迫さん。「大吟醸が一番いい酒、と思っている米国人が多いが、毎回それが一番とは限らないと思う。そういうメッセージも込めて純米酒などとはあえて記載していないんです」と説明する。

ボトルのサイズは500ミリリットル。「小売価格は約28ドル(約3200円)です。もし日本酒で一般的な720ミリリットルのボトルで販売したら、どうしても割高な印象になってしまう」と迫さんは解説する。

マイクロブリュワリー(小規模醸造所)のクラフトSAKEやクラフトビールが今、世界的に注目を集めている。こだわりの少量生産が基本なので、大手の酒に比べると割高になってしまうが、価値を分かる人々に支持されて世界的なムーブメントが起きているのだ。その流れの中で、Den Sakeもその価値を理解できる人々に支持されている。

「割高な酒ではありますが、けっして利益が大きいわけではありません」(迫さん)という。800スクエアフィート(約23坪)とかなり手狭な醸造所で酒造りしており、ほとんどが手作業だ。「うちの麹室(こうじむろ)なんて世界最小なんじゃないかな?」と笑って話すほどだ。

今は1種類の酒のみを生産しており、すぐに地元で売り切れてしまう。生産ロットを上げれば、リーズナブルな価格にできるので、1年後にはより大きな醸造所に変える予定だ。その時は「熟成酒などにも挑戦してみたい。色々なタイプの酒を醸してみたい」と迫さんは意欲的だ。

米カリフォリニアで活躍する日本人クラフトマンは新しい生産体制を整える夢に向かってまっしぐら。日本人SAKE醸造家として米国で新たなSAKE旋風を巻き起こしていくだろう。

(国際きき酒師&サケ・エキスパート 滝口智子)

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