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ボランティア活動で「つながり」を実感する。画像はイメージ=PIXTA

ボランティア活動で「つながり」を実感する。画像はイメージ=PIXTA

メンタルヘルスを損ねて、職場を離れる人が後を絶たない。『40代から伸びる人 40代で止まる人』(きずな出版)を書いた渡部卓氏は「メンタルヘルスを損ねて働けなくなってしまうのは、70歳まで働く時代に最大級のリスク要因となる」と懸念する。7回の転職を重ね、内外の企業で社風や働き方の違いを見てきた渡部氏にメンタルヘルスを保つ働き方を聞いた。

同僚・知人が相次いで自殺

7回にわたる転職の軌跡は華々しい。早稲田大学政治経済学部を卒業後、新卒でモービル石油に入社 。1990年には日本ペプシコ社へ。米国本社勤務を経て、「ヘインズ」ブランドで知られる米国系アパレル企業ではブランドマネジャーを務めた。そして、インターネットの勃興には米国企業でキャリアを積む。2002年から自ら創業したライフバランスマネジメント代表に就いている。14年春には帝京平成大学の現代ライフ学部教授に迎えられた。

モービル石油時代には米ノースウェスタン大学の名門ビジネススクール、ケロッグ経営大学院で経営学修士(MBA)を得ている。産業カウンセラーや心理相談員、エグゼクティブ・コーチなどの資格も持つ。様々な経験を生かして、現在はメンタルタフネスの向上やほめ方・しかり方研修、コーチング指導などを手がけている。

ビジネスパーソンの精神的な健康を重視するのは、自らの経験に基づいている。一時期、過酷な勤務状況に追い込まれたことがある。周りで同僚や知人が相次いで自殺し、自らも「倒れる寸前だった。これ以上は無理だと見限った」と振り返る。

「ワーク・ライフ・ソーシャル」へ

ビジネススクールでの学びも、気づきをもたらした。90年代の当時から、米国ではメンタルと仕事の関係性をカリキュラムに組み込んでいた。働き手の精神的な健康を保つのは、企業経営の重要テーマと位置づけられていた。日本では栄養ドリンクのテレビCMで「24時間、戦えますか。」のコピーが90年代初めまでうたわれていた。「日本の危うさを感じた」(渡部氏)

今はワークライフバランスの大切さが日本でも理解されるようになってきた。しかし、渡部氏が提案するのは「ワーク・ライフ・ソーシャル」だ。仕事(ワーク)と私生活(ライフ)のバランスを取るだけでは十分ではない。「社会とのつながりを保つように心がけないと、メンタルの健康を損ねかねない」。勤め先と家庭だけの「やじろべえ」的なバランスの取り方では安定性を欠きやすい。「ボランティアや趣味などを通じて、社会との関係性を保つのが望ましい」という。

「メンタルヘルスを損なう原因の多くを、職場での悩みが占める」(渡部氏)。ミスをとがめられたのがきっかけとなって落ち込んでしまうといったケースは珍しくない。「上司が研修やコーチングを受けていないせいもあって、多くの場合、自己流でしかりつけている。しかり方にも望ましい手順や留意点があり、高圧的な叱責はダメージを与えてしまいがち」と、渡部氏はハラスメントにも通じかねないしかり方の未熟ぶりを問題視する。

いくつもの外資系企業を渡り歩いた渡部氏が感じるのは、社員研修への取り組み具合の違いだ。米国の有力企業ともなれば、「1カ月に1度程度の頻度で、何らかの研修プログラムに参加させられる。研修費の予算枠は日本企業とはけたが違う。社員の学びへの投資意欲は極めて高い」という。

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