40代からの活躍決める メンタルダイアリーの効用『40代から伸びる人 40代で止まる人』 渡部卓氏

トラブルに伴って浮かんだ考えが「嫌われている」「やる気を失った」であれば、それらも率直に書き込む。他人に見せるわけではない、真情の吐露なのだから、言葉を飾ったり、本音を偽ったりする必要はない。感じた通りにつづっていくのがダイアリーの効果を高めるコツだという。

仕事とは無関係のつながりを

さらに、自分が抱いた気持ち以外の考え方がないかどうかに、思いを巡らしてみる。上司の立場で考えてみるような、自分主語から離れた発想が効果的だ。落としどころを探るのも、一方向に傾いた気持ちを整える。「各項目に沿って考えをつづっていくだけで、自然と気持ちの整理がついていく」という。心理学の筆記療法を応用したメソッドだ。

紙に書き出すのが面倒と感じるなら、スマートフォンを使う手もある。長文を書く必要はないから、「スマホでも十分にダイアリー代わりになる」(渡部氏)。持ち歩いていることが多いので、思ったタイミングですぐに書き込めて、習慣化しやすい。過去の悩みを読み返して今の悩みを相対化できる点でも、スマホは便利だ。

「職場と家庭の単調な往復は、気持ちの逃げ場を失わせやすい。サードプレイスが欲しい」と、渡部氏は説く。望ましい居場所の一例が仕事とは無関係のつながりだ。NPO(非営利団体)でも読書会でも構わない。一個人として活動に参加できるような「場」を持てば、「ワークとライフ以外の居場所が生まれ、メンタルのバランスを保つのに役立つ」。

仕事で得たスキルや資格を生かして、プロボノのような形で社会貢献する選択肢もある。読書会や勉強会、趣味サークルなどでも、つながりを得られる。「仕事が1日に占める割合が高くなりすぎると、発想が仕事寄りになり、職場トラブルを深刻に受け止めてしまいがち」(渡部氏)。サードプレイスを確保しておけば、ダメージを受け流しやすくなるうえ、「立ち直りも早くなる」(渡部氏)

「仕事が変われば気持ちも新たになる」

40代から先は、出世の行き止まりや年収のダウンなどをきっかけに、メンタルの健康がおびやかされやすい。役職定年を迎え、年収が半分や3分の1に減らされると、自分の存在価値が薄れたかのような錯覚を招きがちだ。落胆や不安感から精神を病むケースもあるという。「現実を受け入れつつ、ダイアリーのような形で不満の感情を整理していきたい」(渡部氏)

日本でも勢いづいてきたマインドフルネスや瞑想(めいそう)などの手法も気持ちを落ち着かせてくれる効果が期待できる。体を動かせるのに加え、大地とふれあえる点で、渡部氏がすすめるのは農業への参画だ。副業や兼業も、本業からは得られなかった刺激や気づきをもたらす。7度の転職を経験した実感を込めて、「仕事が変われば気持ちも新たになる。70歳まで働く時代ともなれば、転職を契機に仕事人生をリスタートさせるキャリアプランも選択肢に入ってくる」とみる。

病気を克服して、職場に戻る「サバイバー」は当たり前の存在となりつつある。ただ、メンタルヘルスを傷つけてしまうと、職場復帰に長い年月を要することもある。「現役70歳時代に突入するからこそ、精神面の健康を保つスキルは、ビジネスパーソンの生命線になってくる」という指摘は軽視しないほうがよさそうだ。

渡部卓
ライフバランスマネジメント研究所代表。帝京平成大学現代ライフ学部教授。産業カウンセラー、心理相談員、エグゼクティブ・コーチ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院卒(MBA取得)。モービル石油、日本ペプシコ、ネットエイジなどで幹部を経験。2002年からライフバランスマネジメント代表。

40代から伸びる人 40代で止まる人

著者 : 渡部 卓
出版 : きずな出版
価格 : 1,650円 (税込み)

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