40代からの活躍決める メンタルダイアリーの効用『40代から伸びる人 40代で止まる人』 渡部卓氏

人材開発はイノベーティブ

渡部卓氏

日本では仕事スキルに関する「独学志向」が強い。働き方改革に関しても、書店に関連書籍があふれかえる。自ら学ぶ態度は日本流の美徳とも映る。しかし、渡部氏は「自己流だけでは限界がある。きちんと企業がコストを負担して、研修の機会を設けるのが望ましい」とみる。「部下のしかり方なんて、教わらなくても知っていると思い込んでいる上司が多い。でも、部下のメンタルを痛めつけないしかり方は自己流では身につけにくい」。

働き方改革が日本で進みにくい一因が、「総務部と人事部の体質にある」と指摘する。総じて総務・人事部には「手堅いタイプの人物を配置する傾向が強い」(渡部氏)。前例を重んじ、ルールに従う発想は、安定感を重視するうえではそれなりに意味を持つ。しかし、今のように「人事・労務のしくみを大胆に改めるべき時期には、ブレーキとなってしまいやすい」。研修制度の見直しを提案しても、こうした部署の抵抗で失敗するケースが珍しくないそうだ。

変わらない人事・労務制度に愛想を尽かして、「優秀な人から先に辞めていくような状況が起きている」。会社が変わらないのであれば、自分のほうが居場所を変えようと見切りを付けるわけだ。「貴重な人材を失う企業にとっては、大変な損失。クリエーティブな人事・労務政策は今や競争戦略の最重要テーマになった」と、渡部氏は変化を促す。

渡部氏が勤めていた米国企業には、一般的な人事・労務を担当する部長とは別に人材開発の担当部長が置かれていたそうだ。通常の人事部長が賃金や異動、組合などを受け持つのに対し、人材開発部長は働きがいアップや研修などを担当。優秀な社員のリテンション(つなぎ留め)や職場ストレスの軽減、メンタルヘルスの確保などに取り組む。「担当者自身も外部からの知見を得て、常にレベルアップを重ねている。イノベーティブな仕事だ」(渡部氏)。

心理学の筆記療法を応用

ただ、日本の大企業がすぐに動きにくいなら、働き手は自衛に動かざるを得ない。仕事のせいで、メンタルヘルスを損ねても、必ずしも勤め先が十分なケアや補償で報いてくれるとは限らない。渡部氏が提案する自衛的な試みに「メンタフダイアリー」がある。渡部氏たちが独自に考案したというメンタルトレーニングツールだ。「日記の一種だから、自分一人ですぐに始められる」(渡部氏)。

ダイアリーの手順は簡単だ。基本的には感情の変化を記録するだけ。紙とペンだけで始められる。まずタイトルに「上司とうまくいかない」といった、悩みのポイントを書き、続いて「悩みの対象=上司」「状況=また怒られた」「感情の数値化=驚き20、むなしさ40、悲しみ40」といった具合に、悩みを整理・分解していく。「文字に書き出すだけで、ストレスがやわらぎ、気持ちが落ち着きやすくなる」と渡部氏は効果を説明する。

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