W800ストリート 若者狙いの大型ネオクラシック

2019/11/24
大がかりな仕様変更を受けて復活したカワサキW800ストリート(写真:三浦孝明・webCG、以下同)
大がかりな仕様変更を受けて復活したカワサキW800ストリート(写真:三浦孝明・webCG、以下同)
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一度はカタログから消えた「カワサキW800」が、大がかりな仕様変更を受けてカムバック。カスタムバイクを思わせるクールな「ストリート」モデルは、その乗り味も若々しさにあふれていた。

寝耳に水の商品展開

カワサキの「W800ストリート」は、2019年3月に販売が始まったネオクラシックモデルだ。2016年までW800の名でラインナップされていたが、厳しさを増す排ガス規制を前にして一度ラインナップから消滅。しばらくの空白期間の後、事実上のフルモデルチェンジを受けて復活したのである。

今回の記事を書くにあたり、用意されたマットブラックの車両に乗ったのは2019年10月初旬のことだ。その印象は良好なもので、動力性能になんら不満はなく、質感やライディングポジションに関して要望がいくつかあった程度。それらも個人的な好みの範囲におさまるものだった。

そのままツラツラと書き連ねていけば、ごく素直な、そしてポジティブな原稿になったに違いない。空冷2気筒という形式を残してくれたこと自体、大いに称賛されるべき姿勢だからだ。

ところが、これはまったくの偶然なのだが、W800ストリートの原稿締め切りの数日前に、東京モーターショー2019のプレスデーが開催された。そこでカワサキは3台のニューモデルを世界初公開。そのうちの1台に新型W800があった。つまり、“ストリート”の名を持たない別バージョンである。

2つのシリンダーから後方へと取り回される2本のエキゾーストパイプ。車体の下部で連結されている

いや、今にして思えば浅はかだった。3月の時点で、なぜ車名にわざわざストリートと付け加えたのか。そこに疑問を持つべきであった。その語感には若々しさがあり、ブラックアウトされたエンジンや燃料タンク、フェンダーはそれに見合うもの。なるほど、ユーザー層の拡大を図っているんだな、くらいの認識だったのである。

その認識は先の試乗時点でも変わらず、「ベベルギアのカバーは黒よりメッキの方が“らしく”ないか? そう思うのは自分がアラフィフだから?」などと思いつつ、原稿を書き始めたところに新型W800である。いやもう、そのタイミングもさることながら、W800ストリートで感じた「ここがもう少しこうだったら」という思いが、すべてかなえられているのだからたまらない。

東京モーターショー2019のカワサキブースで公開された最新型の「W800」。1960年代生まれの名車「カワサキ650W1」を思わせるクラシカルな外観が目を引く

走りはしっかりスポーツ寄りに

W800、もしくはW800ストリートに興味があり、これから手に入れようとしている人にとっては悩ましくも楽しい「たまらん」だろうが、W800が控えているとは夢にも思わず、すでにW800ストリートを手に入れてしまった人の何割かにとっては、嘆きとため息交じりの「たまらん……」に違いない。無論、魅力的な新型モデルや派生モデルの登場は世の常ではあるが、2つのモデルの時間差は半年強にすぎず、その心中は察して余りある。

とはいえ、既述の通りW800ストリートの印象はいい。エンジンの排気量、ボア×ストローク、360度のクランク位相角は、旧W800(~2016年)の数値をそのまま踏襲。ただし、その味つけはかなり異なり、最大トルクの発生回転数は2300rpmも引き上げられ(2500rpm→4800rpm)、その過渡特性は明確にスポーティーなものになった。

旧W800が下から上までスムーズに吹け上がるフラットな特性だったのに対し、W800ストリートは4000rpm付近を境にキャラクターが変わる。低回転域では鼓動というより強めのバイブレーションで存在感をアピールする一方、回転域が高まるとそれを相殺するように軽々とタコメーターの針が上昇。「ギューン」という独特なメカニカルノイズを伴い、表情の変化を楽しむことができる。