なぜ「柿の種」は米国で売れないか ハーバードの視点ハーバードビジネススクール教授 エリー・オフェク氏(上)

佐藤 「なぜアメリカで苦戦しているのか」という問いについては、どのような意見が出ましたか。

オフェク 多くの受講者が指摘していたのは、流通の問題です。マーケティング戦略を考える上での枠組み、4P(製品、価格、プロモーション、流通)のうちの流通です。

米国にはない「米菓」の売り場

柿の種は、アメリカで売られているお菓子の中のどのカテゴリーにもあてはまりません。ポテトチップス、コーンチップス、ナッツなどの陳列棚がある中で、「どこに置けばいいか」と迷ってしまう商品なのです。

そのため亀田製菓の方々は売り場の確保にとても苦労しています。アジア系の食品の専門店をはじめ、ホールフーズ、セイフウェイ、クローガー、ウォルマートなど大手チェーンにも営業したところ、どこも陳列場所に困っていたそうです。その結果「アジアのお菓子」というコーナーに置く店もあれば、ポテトチップスの近くに置く店もあるという事態に。

日本で「米菓」は大きなカテゴリーですから、柿の種の置き場所に困るなんてことにはならないですが、アメリカではそもそも米菓が売られていない。1つのカテゴリーをつくるところから始めなくてはならないのです。

次に指摘していたのは、プロモーションの問題です。とにかくどういう食べ物なのか、わからない。「もう少し試食してもらえる機会を増やしたり、食べ方を知ってもらったりするために宣伝予算を使ったほうがよいのではないか」と指摘した受講生もいました。

柿の種はどういうシチュエーションで食べるものなのか、どのような食べ物や飲み物と組み合わせると特においしいのかなど、柿の種の魅力をもっと伝える努力をすべきではないかと。こんなにおいしいのだから、食べてもらえればファンになってもらえる可能性が高いからです。

しかしここに「ニワトリと卵」の問題が発生します。宣伝が先か、売り上げが先か。現場は「宣伝費を増やしてくれなければ、売り上げは上がりませんよ」と言い、会社は「先に売れることを証明してくれないと、予算はつけられない」という。実際、「お金をかけたからといって売れるとは限らないから、マーケティング費の増額はお金の無駄」と主張する受講生もいました。ここは毎回、議論が白熱するところです。

佐藤 私が疑問に思うのは、なぜアメリカでオリジナルの「亀田の柿の種」が売っていないのかということです。たとえばマクドナルドは各国でローカライズされたオリジナルメニューを提供していますが、オリジナルのハンバーガー、チーズバーガー、ビッグマックも必ず一緒に売っています。元祖柿の種を、インフルエンサーなど特定のターゲットにしぼってプロモーションするという手法もあるように思います。

オフェク それは興味深いオプションだと思いますし、同じようなことを指摘していた受講生もいました。誰にどのように訴求するのかをもう少しクリエイティブに考えてみてもいいのではないかと。

(中)「米国を諦めない」 ハーバードが追う亀田製菓の気概 >>

エリー・オフェク Elie Ofek
ハーバードビジネススクール教授。専門はマーケティング。技術主導型企業および消費者志向型企業における新商品開発戦略を主に研究。マーケティングに関する教材を多数執筆し、「シャトー・マルゴー:第3のワインを売り出す」は、2019年ケースセンター賞を受賞。主な著書に「Innovation Equity: Assessing and Managing the Monetary Value of New Products and Services.」(共著、University of Chicago Press)。

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