歴代の本屋大賞作品から選ぶ 読書家おすすめの10冊

■6位 ゴールデンスランバー(伊坂幸太郎)510ポイント
孤独な逃走に終始ハラハラ

衆人環視の中で起きた首相暗殺事件。暗殺犯のぬれぎぬを着せられた青年が、必死に逃走する孤独な姿を描く。「先の読めない展開と魅力的なキャラクターが相まって読み応えがあった」(42歳男性)。「出だしからハラハラして最後まで読んでしまうだろうから、本嫌いの友人に薦めたい」(37歳女性)

「読むたびに伏線が明らかになり、前に気がつかなかった点が分かる」(59歳男性)。読み直したいと答えた人が多かった。

(1)新潮社(2)1034円(3)118.6万部(4)08年、大賞

■7位 君の膵臓をたべたい(住野よる)498ポイント
王道の恋愛小説 切なさに涙

高校生の僕が病院で拾った「共病文庫」は膵臓(すいぞう)の病気で余命が短い同級生の女子がつづっていた日記帳。秘密を共有した2人を描き、「キミスイ」と呼ばれて若者の人気を集めた。「恋愛ものとは思えないタイトルに逆にひかれた」(33歳女性)

「読んでいると切なくなる」(44歳男性)。「何度読んでも泣ける」(29歳女性)という展開で、恋人や友人に薦めたいとの声が目立った。「ロマンチックだけど字を読まない人に、王道の恋愛小説で活字の威力を知ってほしい」(68歳男性)

(1)双葉社(2)734円(3)246.7万部(4)16年、2位

■8位 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(リリー・フランキー)454ポイント
何気ない日常 心揺さぶる

イラストレーターや俳優などとして活躍する作者の自伝的小説。女手ひとつで息子を育てたオカン(母)を中心に母と子、父と子、青春の屈託を描いた。「何気ない日常の中のほのぼのとした物語」(64歳女性)ながら、「とにかく泣ける」(38歳男性)。

「母への愛情、息子としてのふがいなさが描かれ、心が揺さぶられる」(67歳女性)。「家族のあり方の勉強」(69歳女性)で家族に薦めたいほか、「両親亡き今、昔と違った感覚で読めそう」(56歳女性)

(1)扶桑社(文庫は新潮社)(2)825円(3)240万部(4)06年、大賞

■9位 謎解きはディナーのあとで(東川篤哉)433ポイント
気軽に読める本格ミステリー

大富豪の令嬢の新米刑事が、丁寧な口調で暴言を吐く執事と事件を解決する。「ユーモアたっぷりの掛け合いと本格的な謎解きが魅力」(60歳女性)。1話完結型で、シリーズ化されている。「娘たちがちょっとした探偵気分を味わうために読んでほしい」(56歳女性)。「テレビドラマを見た人にぜひ原作を」(49歳女性)

(1)小学館(2)702円(3)217.3万部(4)11年、大賞

■10位 村上海賊の娘(和田竜)426ポイント
壮大なスケールの冒険活劇

戦国時代、瀬戸内海が拠点の村上海賊の当主の家に生まれた女性が主人公。壮大なスケールで海賊船の合戦を描く。「戦国時代の海賊という男だけの世界で立ち回る姫が格好いい」(59歳男性)。1~10位で唯一の非映像化作品で「CGを駆使し、リアル感を再現してほしい」(49歳男性)。

(1)新潮社(2)1・2巻各649円、3・4巻各693円(3)298.8万部(4)14年、大賞

読者目線の賞 映像化多く

2004年に始まった本屋大賞の特徴はオンライン書店を含め、新刊書を販売する「書店員」が選考する点。他は作家など文学のプロが決めることが多い。実際に本を扱う書店員が「自分が本当に売りたい本」として選ぶ。1次投票でノミネート作品を絞り、2次投票を経て受賞作品を決める。19年4月の第16回では1次に全国493店の623人、2次に308店の371人が参加した。

作家にとっても「読者に最も近い書店員が選ぶので、大きな励ましになる」(筑摩書房顧問で書評家の松田哲夫さん)。既存の文学賞に縁がなかったというリリー・フランキーさんの「東京タワー」が06年大賞を受賞し、「読者目線に立った賞」(松田さん)という印象が広がった。

映画「蜜蜂と遠雷」(C) 2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

受賞作はテレビドラマや映画などに映像化されることも多い。現在公開中の「蜜蜂と遠雷」は、17年に直木賞と本屋大賞をダブル受賞した作品だ。ピアノのコンクールが舞台で映像化が難しいとの指摘もあった。作者の恩田陸さんは「なるべくピアノを弾いている映画に」と希望し、俳優の松岡茉優さんらが登場人物の心理を演奏シーンで巧みに表現した。幻冬舎も「原作者の意図をくみ取った作品で大満足」という。

■ランキングの見方 数字は「ほかの人に薦めたいと思う作品」についての回答を編集部で点数化した。作品(作者)(1)出版社(2)文庫本の価格(税込み)(3)単行本と文庫本の累計発行部数(4)選考の年と結果。写真は三浦秀行撮影。(伊藤新時)

■調査の方法 過去16回の本屋大賞の大賞と第2位に選ばれた作品の計32作品が対象。ネット調査会社、マイボイスコム(東京・千代田)を通じ、5作品以上を読んだことのある全国の20~60代の1000人(男女同数)に「ほかの人に薦めたいと思う作品」について1~5位まで順位付けしてもらった。「面白かった作品」「読み返したい作品」「映像化してほしい作品」も聞いた。

[NIKKEIプラス1 2019年11月9日付]

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