植物由来の「肉」 フードテックに脚光、投資も急拡大

森永製菓の社内ベンチャーから立ち上がった孫会社が手掛ける代替肉を使ったレトルト食品
森永製菓の社内ベンチャーから立ち上がった孫会社が手掛ける代替肉を使ったレトルト食品

「食品×技術(テクノロジー)」の融合で生まれる「フードテック」が脚光を浴びている。植物由来の代替肉や乳製品など、米国を中心にスタートアップ企業が続々と誕生。5月にナスダック市場に上場した米ビヨンド・ミート(BYND)の時価総額は、一時1兆円を超えた。世界の人口は2050年に97億人に増加する見通し。人口増と経済成長で食肉需要も増加するが、需要増に応じた食肉の供給拡大は困難だ。フードテックは不足する需要を補う有力な選択肢と目され、投資家の注目を集めている。

関連企業への投資額、5年で15倍に

米調査会社ピッチブックによると、フードテック関連企業への世界の投資額は2018年で75億ドル(約8100億円)。17年との比較で44%増えた。5年前と比べて実に15倍に膨らんだ。

フードテックはESG(環境・社会・企業統治)の側面からも注目を集めている。

牛のげっぷや家畜の排せつ物から出るメタンガスは、同量の二酸化炭素(CO2)の25倍も地球の温暖化を進めるという。国連食糧農業機関(FAO)によると、人為的に排出される温暖化ガスの14.5%は畜産業に由来するものだという。こうした背景から特に欧米を中心に、代替肉需要が年々増加している。

先行する米国、2強が競う

先行するのはアメリカだ。代替肉メーカーの2強といわれるのが、ビヨンドとインポッシブル・フーズだ。

5月に上場したビヨンド・ミートは植物由来の代替肉を使ったソーセージなどを製造している

ビヨンドの代替肉は、アマゾン傘下で全米におよそ500店舗を構える大手スーパー「ホールフーズ・マーケット」などが扱う。9月末からはカナダのマクドナルドでも、ビヨンドの代替肉を使ったハンバーガーのテスト販売が始まった。

一方のインポッシブルはバーガーキングやサブウェイを通じて、全米で代替肉を使った商品を提供している。ビヨンドにはビル・ゲイツ氏のほか、三井物産などが出資。インポッシブルにもグーグルベンチャーズやUBS、テマセクなどが出資している。

バーガーキングも代替肉を使ったハンバーガーを全米で販売している

代替肉市場の拡大は、既存の食品メーカーにとっては脅威でもある。ATカーニーは2040年に世界の食肉需要の6割が代替肉と培養肉に置き換わると予想する。米食肉大手のタイソンフーズが代替肉を使った自社ブランドを立ち上げたほか、スイスのネスレや米ケロッグなどもM&A(合併・買収)を通じて市場に参入し、対応を急いでいる。

日本の食品メーカーも相次ぎ参入

日本の食品メーカーでも同様の動きが相次いでいる。

森永製菓(2201)では、社内ベンチャーから立ち上がった孫会社の「SEE THE SUN」(シーザサン、神奈川県葉山町)が、動物性の素材を使わない植物性の代替肉「ZEN MEAT」を開発・製造している。原料の大豆に玄米を加え、食肉とそっくりの食感を再現したという。

原料の大豆に玄米を加え、食肉とそっくりの食感を再現した

金丸美樹社長は、「食品メーカーとして30~50年後のサステナビリティー(持続性)を考えた結果」と開発の経緯を語る。

代替肉はミンチやブロック、スライスの3タイプ。いずれも湯戻しして使う。代替肉を使った麻婆豆腐を食べてみると、食肉と同じかみ応えとうまみが感じられた。同社は代替肉を使ったカレーやボロネーゼソースなどのレトルト食品も扱っているが、いずれも本物の肉と同じ感覚で食べられる。

「完全栄養食」うたうレトルト食品も

このほかに注目を集めるのが、日清食品ホールディングス(2897)の「完全栄養食」だ。「オールインパスタ」などのシリーズで、1食で1日に必要なビタミン・ミネラルの3分の1を摂取できる。

日清食品ホールディングスの栄養素を麺にとじ込めた「完全栄養食」を開発した

栄養素はシートに包み、麺の内部にとじ込めた。「栄養素を普通に混ぜ込んでも麺にはならなかった」(開発した佐藤真有美ブランドマネージャー)ためだ。また日ごろ、過剰摂取しやすい炭水化物や脂質は抑えめにしたという。

レトルト食品は、インスタント焼きそばのようにお湯を注ぎ、6分待ってお湯を捨てるだけで調理できる。最後にオイルとソースをかけると完成だ。

こうしたフードテックが生んだ新しい食品は、自然食と比べて総じて低カロリー・高栄養だ。フードテックは食糧不足を解決する有力な選択肢であるだけでなく、おなか周りが気になる記者(30)のようなメタボ予備軍にも重宝されそうだ。

(佐伯遼、古賀雄大)

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