贈ったものとお返しを比べてしまう
脚本家、中園ミホさん
人にあげたプレゼントとお返しでもらったものを必要以上に覚えています。揚げ句、「私はこれをあげたのにお返しはこんだけか?」と比べてしまいます。あげたものは忘れて、もらったことを純粋に喜ぶにはどうしたらいいですか。人からは、何事もよく気がつくと言われます。(大阪府・50代・女性)
◇
「こんだけか?」というのは金額のことと受け取りましたが、間違っていますか。それとも気持ち、つまり「私はこんなに心を込めて選んだのに」という意味でしょうか。
いずれにしても人にプレゼントをするのは、自分が贈りたいからだと思ったほうがいいと思います。しょせん、自己満足なのです。お返しを期待するくらいなら、最初からあげなければいいのではないでしょうか。
実は私、基本的に贈り物をしないし、お返しもしないことにしています。以前は人から何かをいただくと、瞬間的に「お返ししなきゃ」という強迫観念に駆られて、憂鬱になっていました。
ある時、そうしたやり取りを全部やめちゃえばいいんじゃないかと思い立ち、感謝の気持ちだけ伝えて、お返しを一切しない"失礼な人"になってみたんです。そうしたらいただくものが減り、気持ちもすごく楽になりました。
とはいえ、ものすごく一生懸命に贈り物を選んでくれたことが分かる場合があります。そんなときは、こんな私でも感動して、丁寧にお礼状を書きます。一方、この人にどうしてもこれを贈りたいと思って贈ることもあります。でも、それはあくまで自分のためです。
もしかしたら相談者さんもご自身で意識しないうちに、十分満足されているのかもしれません。何事もよく気がつかれるとのこと。「私はこんなにしてあげている」「私はこれだけ"できる"人間なんだ」といった気持ちがどこかにないでしょうか。
いたるところにものがあふれている時代、贈り物を選ぶ行為はとても難しくなりました。
例えば贈り物の定番ともいえるお菓子。デパ地下にはおいしそうなものがこれでもかというほど並んでいます。でも女の人はある年齢になるとダイエットしていることが多いので、手元にあるとつい食べてしまって困る場合があります。相談者さんは何をもらいたいですか。私は図書券をいただくと、とてもうれしいです。だれもが満足する究極の贈り物はキャッシュなのかもしれません。
それでも贈り物をしたいのであれば、自己満足と割り切ることをおすすめします。
[NIKKEIプラス1 2019年11月9日付]
NIKKEIプラス1の「なやみのとびら」は毎週木曜日に掲載します。これまでの記事は、こちらからご覧ください。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。