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「決められない病」を脱するためのステップを解説している

「決められない病」を脱するためのステップを解説している

優秀なリーダーには「即断即決」をする知恵と勇気が備わっている。当たり前と受け止めがちだが、実は「幻想」だ。現実社会は複雑で、カリスマ指導者がズバッと判断すれば事態が好転するという状況はほとんどあり得ない。本書『スタンフォードで学んだ 最強の意思決定』は、一流のMBAコースで教えられている実践的な手法をシンプルかつ明解に解説している。この一冊を読み通すことで「決められない病」を脱する様々なヒントが得られるだろう。

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「教育」プラス「コンサルティング」で課題を解決

籠屋邦夫

籠屋邦夫

著者の籠屋邦夫氏は「エデュサルタント」という聞き慣れない肩書を持っています。これは「教育(エデュケーション)」と「コンサルティング」を組み合わせた造語です。「エデュサルティングとは、真剣なディシジョンマインド(自らの未来を自らの意思と力で切り開く気構え)を持ったビジネスパーソン・企業家が自ら戦略課題に取り組み、意思決定を行う際に必要なスキルを向上させるための教育研修と、それに続く実務課題解決に向けてコーチングをするサービスである」と本人は定義します。

籠屋氏は1978年に東京大学大学院化学工学科を修了。スタンフォード大学大学院に進み意思決定論を学びました。帰国後は三菱化成(現三菱ケミカル)、マッキンゼー社東京事務所で勤めます。1990年に再び渡米して、コンサルティング会社のストラテジック・ディシジョンズ・グループに参画しました。帰国後はA.Tカーニー社バイスプレジデントを経てディシジョンマインド社を立ち上げています。著書に『意思決定の理論と技法』(ダイヤモンド社)、『選択と集中の意思決定』(東洋経済新報社)などがあります。

読者は冒頭で「あなたは、リーダーだろうか?」という問いを投げかけられます。「自分に部下は持てない」「リーダーにはなれそうもない」と思う人が多いかもしれません。でも、著者は「どんな人でも自分自身のリーダーである」と断言します。「自らの人生において、常に自分をリードしているという自覚」を持っていることが必要だと諭しながら、そうした当事者意識を持つ人たちに、質の高い意思決定を行う方法を伝授します。

「即断即決」は机上の空論

「即断即決」というのは格好良い言葉です。有能な経営者として知られる米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、決断を迫られると、10秒間、押し黙り、目を閉じたり、時には虚空を見つめたりするそうです。そしておもむろに結論を下すのだといいます。「それは我々がやるべきことだね」と彼が言った瞬間から、プロジェクトが動き出す――。こんなエピソードが雑誌で紹介されました。でも「その決断の裏には、もっと別の要素があると考えるべきである」。籠屋氏はこう指摘します。

 1人の天才経営者が即断即決し、会社を成功に導いていく。そんな姿には誰もが憧れるものだ。日本企業は意思決定が遅すぎると国内外から批判され、意思決定はスピードが何より重要だと多くの人が思っているから、そんな天才の姿を思い描くのだろう。
 しかし、私は意思決定におけるスピード至上主義は勘違いだと考えている。そして、天才経営者の待望論も非現実的かつ絵空事だ。
(PART1「決められない病」を分析する 20ページ)

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