ブルーライトから目を守る スマホは1時間ごとに休憩

議論の的となっているブルーライトとは、どんな光なのか。

まず、自然界には光を含む電磁波が存在する。波長が長い順に、電波、赤外線、可視光線、紫外線、放射線(x線、γ線)などがある。この中で、人が目で見ることができるのは、可視光線だけ。可視光線にもさまざまな波長のものがあり、波長が長い順に赤、橙(だいだい)、黄、緑、青、紫の各色に見える(下図)。情報端末から発されるブルーライトは波長が380~500ナノメートル(ナノは10億分の1)の青色光のこと。「ブルーライトは波長が短く、強いエネルギーを持つ。紫外線のほとんどは角膜と水晶体で吸収されて網膜まで届かないが、ブルーライトは網膜まで到達する」(坪田教授)。

ブルーライトによる視力低下の論議を呼んだのは、目の網膜のダメージ。ブルーライトに過剰にさらされると網膜の中心にある黄斑部がダメージを受ける。太陽の光を直接見てはいけない、と言われるのもこのためだ。「情報機器から発せられるブルーライトは太陽から発せられるブルーライトよりずっと微弱なので、一瞬でダメージを受けるということはまずない。ただし、長時間、長期間凝視し続けることによるダメージについてはまだ分からない」(坪田教授)。

[注1]Sci Rep. 2018 Jul 5;8(1):10207.

[注2]American Academy of Ophthalmology.Aug 20, 2018.

[注3]ブルーライト研究会「ブルーライトは視力に影響しない」というネット等の報道について

ブルーライトを夜に浴びると体内時計が狂う

目はカメラとしてだけでなく「時計」としても働いている。夜間にブルーライトを浴びることが問題になっているのは、この時計を乱すおそれがあるからだ。

目の網膜が朝、太陽光から放たれた可視光線に含まれるブルーライトをキャッチすると、その信号が脳の「視交叉(こうさ)上核」に伝わる。視交叉上核は「体内時計」の役割を担っていて、朝には睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌が抑えられて覚醒し、心身の活動性が高まる。体の時計機能を正しく働かせるためには、朝しっかりとブルーライトを浴び、目から脳へ光の情報を送ることが大切なのだ。

逆に、「本来、睡眠ホルモンが出て眠くなる時間になっても、この分泌を抑えるブルーライトを発する情報機器に接していると、体内時計に狂いが生じてしまう」(坪田教授)。

夜間のスマートフォン使用の睡眠への影響を調べた研究がある。

通常のスマートフォンと、ブルーライトをカットするスマートフォンで午後7時30分から午後10時までゲームを行ってもらったところ、前者では眠気の高まりが少なく、睡眠ホルモン値が高くなるまでの時間が長くなった。つまり、体内時計に遅れが生じたという[注4]

「こうして睡眠時間が短縮されたり、体内時計に乱れが生じると、睡眠障害だけでなく、うつやメタボリックシンドローム、がんなどのリスクが高まることが報告されている」(坪田教授)。

「ブルーライトは悪、と考える人が増えているが、必要な光であり、本来浴びるべき時間帯ではない夜の暴露が問題。生物は太古の昔からこの光と闇の周期に合わせて生命活動をしてきた。朝、太陽のブルーライトが目から脳に入ることによって朝を認識し、体が昼の活動モードになり、光がなくなることで夜の休息モードになるという体内の様々な生体リズムの切り替えを光の刺激をもとに行ってきた」(坪田教授)。

[注4]J Psychiatr Res. 2017 Apr;87:61-70.

最後に、目の健康という視点での情報機器とのつきあい方、光とのつきあい方を整理しよう。

「パソコンやスマートフォンを使用するときに1時間あたり10分から15分の休憩ととることは、目のトラブルだけでなく、首や肩の凝り、頭痛や疲労感を抑えることにもつながる。加湿器で目が乾燥しにくい環境を作ること、また、目を潤すために、朝・昼・晩の点眼を基本に、仕事の後にも点眼を心がけたい」(堀教授)。

「ブルーライトとのつきあい方は、浴びるタイミングと量が重要。朝、昼はしっかり浴びる。夜はできるだけ浴びない(パソコンやスマートフォンを長時間見ない)。この2つのルールを守る。またブルーライトは光の特性としてちらつきが多いため、疲れ目の要因のひとつとなる。パソコンで作業をする際はブルーライトを軽減するメガネやフィルターを使ったり、ディスプレーの輝度を下げる、画面のコントラストを上げたりするといった工夫も望ましい」(坪田教授)

(ライター 柳本操)

堀 裕一教授
東邦大学医学部眼科学講座・東邦大学医療センター大森病院診療部長

大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院、米国ハーバード大学スケペンス眼研究所にて眼表面におけるムチン発現についての研究を行う。東邦大学医療センター佐倉病院などを経て2014年より現職。角膜疾患やドライアイ、角膜移植、オキュラーサーフェス(角結膜上皮と涙液)を専門に研究を行う。
坪田一男教授
慶応義塾大学医学部眼科学教室・慶応義塾大学SFC研究所ヘルスサイエンス・ラボ代表

1980年、慶応義塾大学医学部卒業。日米の医師免許を取得。米国ハーバード大学角膜クリニカルフェロー修了。角膜治療の世界的権威であると同時に、アンチエイジング医学の研究と啓発に長年尽力する。日本抗加齢医学会理事、日本眼科学会評議員、ドライアイ研究会世話人代表、近視研究会世話人代表などの要職に就く。
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