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星出彰彦さんに聞く 無重力空間での筋トレのやり方

現役宇宙飛行士に聞く(下)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

2008年に初の宇宙飛行を行い、2012年には2回目の宇宙へ、そして50代となった2020年には3回目の宇宙飛行を予定している宇宙飛行士・星出彰彦さん。前回記事「星出彰彦さん 『宇宙飛行士の訓練はラグビーのよう』」では、宇宙で活動している時の体調について話を聞いたが、今回は宇宙から地球に帰還した後の体の状態、50代で宇宙に旅立つために普段から意識していること、また、ラグビー経験が宇宙飛行士としてどう役立ったかなどについて聞いた。

――前回の記事では、宇宙にいらっしゃる時の体調について伺いました。今回は地球に帰還してからのことをお聞かせください。まず着陸する時ですが、どのような衝撃を受けるのでしょうか。

最初の宇宙飛行の時に乗ったスペースシャトルは普通の飛行機のように滑走路に着陸したので、着陸の衝撃は少なかったのですが、2回目の時に乗ったソユーズ宇宙船(ソユーズロケットで打ち上げられるロシアの有人宇宙機)の場合、その衝撃はなかなかのものでした。

大気圏に突入した後、着陸のためにパラシュートを開いて減速するのですが、開く時の衝撃がすごくて。「樽(たる)に詰め込まれてナイアガラの滝を落とされた感じ」と表現する飛行士もいましたが、それぐらいの迫力がありました。でも、パラシュートが開く前はドキドキしていたのですが、終わった後は遊園地の乗り物に乗ったみたいで。楽しくて、一緒に乗った他の飛行士と、「もう一回!」って叫んだくらい。

着陸の直前にエンジンを逆噴射するのですが、その直後、車が壁にぶつかったような衝撃を受け、着陸後は逆さになって吊り下げられた状態で救助を待ちました。楽しかったのですが、ああ、これでミッションも終わりかという寂しさもありました。

宇宙でもランニングや筋トレを実施

――着陸後は、救助サポートによって外に出される感じでしょうか。

そうです。カプセルから引きずり出されて椅子に座り、座ったままテントに連れて行かれます。そのまま服を着替えたり、メディカルチェックを受けたりして、そのあとヘリコプターで空港まで行きますが、ヘリの横に車を止めて、「ここからヘリまでは自分で歩いて」と言われました。2回目の飛行の時は4カ月という長期滞在で、無重力に長期間いると筋肉が衰えるので、立ち上がれないかもしれないと想像していたんです。もちろん、筋肉をできるだけ衰えさせないために、毎日2時間ほどトレーニングの時間が設けられていましたが、それでもやはり筋肉は衰えてしまうだろうと。でも実際は自分でも驚くほど普通に立てたし、歩けました(笑)。バランス感覚は戻らず、重力に慣れるまでふらふらしてしまいましたが、3週間ほどのリハビリを経て戻りました。

ちなみに、宇宙では有酸素運動で持久力を鍛えるために、トレッドミルでランニングをしたり、負荷をかけながらペダルをこぐエクササイズ用の自転車でトレーニングしたりしていました。もちろん、無重力だから普通に走ろうとすると体がぷかぷか浮いてしまい、2歩目が着地できない。そこで、床面と体をゴムバンドでつなぎ、ゴムの力で体を床面に押さえつけるような感じで走っていました。自転車は、特殊な靴とペダルを装着させ、足がペダルから離れないように固定してこぎました(冒頭写真)。

筋トレはダンベルなどのウエート器具を持ってトレーニングしても意味がないので、無重力でも地上と同じように筋トレできる、ピストン式の真空シリンダーを活用した特殊な器具で行います。真空の筒があり、引っ張ると戻ろうとする力で負荷をかける筋トレです。

宇宙に行って間もない頃はやはり体が慣れていないので、トレーニングはきつく感じました。地上のトレーナーが様子を見ながら、少しずつ負荷を上げていくようにメニューを組んでくれて、宇宙滞在の最後の方は、地球に戻っても立てるように鍛えていました。

――帰還後のトレーニングは?

帰還した後、飛行機で米ヒューストンに移動して、45日間のリハビリを行いました。筋力が弱っている部位や体の硬さ、バランス感覚がどの程度弱っているかなど、人によって強化すべきニーズが異なるので、トレーナーが体をチェックし、各々に合ったメニューを組んでくれます。

宇宙に行く前と後で、短い距離を走るテストがあるのですが、僕の場合、帰ってきた後、うまく走れなかったんです。自分では華麗に走っているつもりでしたが、ドタバタとなってしまい、「なんだ、これ?」という状態でした。筋力はある程度ありましたが、重力に対して筋肉をうまく使えていない状態だったので、それを強化するいろんなトレーニングをしました。

――マシンを使った筋トレなどですか?

筋トレだけではなく、バランス感覚を取り戻すための運動や、軽いダンベルを持って負荷をかける運動などをほぼ毎日繰り返しました。

だんだん宇宙での無重力感覚を忘れていき、地上での感覚に慣れてきて、人間の体はこんなふうに環境に適応していくものなんだと、自身の体の変化を楽しみながらリハビリしました。

50歳の宇宙飛行士はまだ若者!?

――2020年に再び宇宙に飛び立たれる計画があります。50代という、これまでとは異なる年齢ですが、体をさらに鍛えるなど何か対策はされているのでしょうか。

年齢による特別なトレーニングはしていませんが、筋力的にも身体能力的にも若い頃とは違うので、普段からの自己管理は意識しています。例えば、食べ過ぎないとか睡眠不足にならないとかでしょうか。宇宙飛行士だからといってすごく食べ物に気を使っているわけではないですが、野菜をしっかり食べようとか、酒を飲みすぎないようにしようとかなど、自然に体の衰えを自覚するようにはなりましたね。

運動はジムには週に1~2回程度通い、トレッドミルで走ったり、エアロバイクを漕いだり、筋トレしたり。プールで泳ぐこともあります。宇宙飛行士という職業に就いている以上、まず健康でなければいけないことが前提にあります。その上で体力や持久力が必要なことは把握しているので、それを頭の片隅に置きながらやっています。

――体力面での不安は?

あまり意識していません。宇宙飛行士はプロのアスリートほど鍛えなくても、仕事ができる体力があればいいので。それに、宇宙遊泳などの訓練をしていくうちに、もう少しここを鍛えようと感覚的に分かってきます。

精神面でも、複数回、宇宙を経験していることもありますが、心の準備はできているように思います。地上で宇宙飛行士をサポートする側の仕事もしていたので、どういうサポートが期待できるか分かっていることは、精神の安定にもつながっていると思います。

――宇宙飛行士は何歳ぐらいの方が多いのでしょうか。

30代、40代といますが、50歳の僕はまだ真ん中ぐらいじゃないでしょうか。僕ぐらいの年代は多く、もう少し年上の宇宙飛行士も現役で頑張っています。だから弱音は吐けないんですよ。先輩たちから見たら、「まだ若者だろ?」と言われるので(笑)。

役に立った「One for all」のラグビー精神

――先日、ラグビーワールドカップが幕を閉じ、日本代表は初のベスト8という大躍進を遂げ、日本国民を沸かせました。星出さんも学生時代にラグビー部で活動され、大のラグビー好きとしても知られていますが、ラグビー経験が宇宙飛行士に役立ったことはありますか?

ラグビーに限ったことではないですが、チームスポーツを通じて、チームワークの在り方や、チームで結果を出すために自分がどう立ち回るべきかと考えられるのは、ラグビー経験が役立っていると思いますね。国際宇宙ステーション(ISS)計画は宇宙飛行士だけでは遂行できないものですし、管制官やエンジニアなどさまざまな役割の人が力を発揮しなければ成立しない、チームワークありきの仕事です。そういった面でも「One for all」というラグビー精神が、僕のベースになっているのではないかなと思います。

僕はフォワードとバックスをパスでつなぐスクラムハーフというポジションにいましたが、選手としては優秀ではありませんでした。でも、ISS計画の「チーム」が目的・目標を達成するために、自分は何ができるのか、ほかのメンバーとどう協力すればいいのか考えるのは、ラグビーの経験が役に立っているのかなと思います。何より、ラグビーで培ったチームとして勝利に向けて挑戦するという姿勢は、宇宙飛行士として実験やミッションに挑戦していくことに通じているように思いますね。

(文 高島三幸)

星出彰彦さん
1968年東京都生まれ。慶應義塾大学理工学部機械工学科卒業、ヒューストン大学航空宇宙工学修士課程修了。92年宇宙開発事業団(現JAXA)に入社。H2ロケットなどの開発・監督、宇宙飛行士の技術支援などを経て、99年日本人宇宙飛行士に選抜。08年スペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗し、「きぼう」船内実験室の国際宇宙ステーション(ISS)取り付け作業に参加。12年ISS第32次第33次長期滞在クルーとしてISSに約4カ月滞在。2020年には約半年間、再びISSに滞在し、期間中には船長も務める予定。

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