前座から「落語家」へ 弟弟子・談洲を待ちうけるのは立川吉笑

立川談笑一門会で落語を披露する立川談洲さん(19年4月、東京都武蔵野市)
立川談笑一門会で落語を披露する立川談洲さん(19年4月、東京都武蔵野市)

12月1日、弟弟子の立川談洲(たてかわ・だんす)が二ツ目に昇進する。

東京の落語界には前座・二ツ目・真打ちと3つの身分がある。僕は二ツ目、師匠である談笑は真打ち。そして談洲は11月いっぱいはまだ前座だ。

入門時、師匠から何度も言われたのは「前座はまだ落語家じゃない。落語家になるための修業をしている落語家未満の状態だ。そのことを忘れないように」ということ。落語家じゃないのだから、例えばこの連載のように「落語家として」仕事を請け負うことは許されない。

基本的にはお茶を出したり着物をたたんだり出囃子(でばやし)の太鼓をたたいたりと、師匠や先輩方の落語会の手伝いをするのがメインの仕事。そこで落語家としての振る舞いを身につけながら、落語の稽古をする。開口一番として落語会のはじめに一席勉強させていただけるたまの機会が何よりのご褒美だ。だって、落語をやりたくて入門してきたのだから。

通常3年から5年の前座修業を終えると二ツ目になる。二ツ目になると晴れて「落語家として」自分の裁量で仕事を請け負うことができる。独演会を催して自分の落語を世間に問うこともできるし、こうやって落語以外の連載仕事をやったり、テレビやラジオに出演したりしてもいい。

それでも二ツ目はまだまだ落語家として一人前ではない。監督責任とでも言おうか、何か問題を起こしてしまったときに最終的に責任を取るのはそれぞれの師匠になる。自分で自分の責任すら取ることが許されないのが二ツ目だ。

前座時代は「落語家」ですらない

二ツ目を10年ほどやると、晴れて真打ちとなる。真打ちになればいよいよ落語家として独り立ちすることになる。弟子を取ることも許されるし、一人の落語家として意見が尊重されるようになる。

最上位である真打ちに昇進するのはとてもうれしいことだと思うけど、先輩方が口をそろておっしゃるのは「二ツ目から真打ちに昇進するときよりも、前座から二ツ目に昇進するときの方がうれしかった」ということ。確かに、一応落語家として仕事ができている二ツ目から真打ちに昇進するよりも、落語家ですらない、言ってしまえば何者でもない状態から落語家として認めてもらえる瞬間の方がうれしいに違いない。

僕の場合は少し特殊なケースだった。談笑の一番弟子となった入門時から師匠に「やることやって、早く二ツ目に昇進しちゃいな。こっちもいつでも昇進させるつもりでいるから」と言われていた。師匠の考えは「いずれ良い落語家になれたらいいなぁと思いながら長い期間前座として働くのでなく、早く二ツ目になって落語家として自分がやりたい落語を試してみなさい。そして、それがお客様に楽しんでもらえるならこんな幸せなことはないし、そこでもしお客様に楽しんでもらえないようなら、すぐに辞めなさい。君が必要とされている場所は必ずどこかにあるし、たまたま向いていない落語を無理に続けることは、君の人生にとっても、お客様にとっても、落語にとっても良くないことだから」ということなのだと思う。

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