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星出彰彦さん 「宇宙飛行士の訓練はラグビーのよう」

現役宇宙飛行士に聞く(中)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

2008年の初の宇宙飛行から10年以上がたち、50代となった2020年にも3度目の宇宙飛行を予定している宇宙飛行士・星出彰彦さん。宇宙に飛び立つ時や、宇宙ステーションで活動している時のメンタル面について教えてもらった。

「本番以上のハードな訓練」で平常心を維持

――前回記事「星出彰彦さんに聞く 宇宙飛行士はスーパーマンか」で、大勢のスタッフとのチームワークを意識したことが、打ち上げ時や宇宙滞在時のメンタル面の安定につながったとおっしゃっていました。具体的にどういうことですか?

宇宙に行くためのメンタル面の訓練で、ストレスにうまく対処するための「ストレスコーピング」という授業を受けたり、呼吸法を教わったりしました。でも僕自身、実はそれをあまり実践しなかったし、意識してメンタルを鍛えることもありませんでした。

それよりは、宇宙ミッションに向けた準備過程でさまざまな訓練を受けることによって、やるべきことはやったという思いができたし、訓練で失敗したことで学びを得てレベルアップしていったという経験も自信につながっていました。宇宙にいる宇宙飛行士のメンタルヘルスをケアするスタッフが地上にいるのもありがたいのですが、何よりも地上に頼れる管制官やエンジニアといった仲間がいることが、メンタル面の安定に大きく影響しているのだと思います。

結局、宇宙に飛び立つためには人間関係が大事だと思っています。全く知らない人と一緒に仕事をするのはストレスになるかもしれませんが、地上での仕事などを通じてよく知っているヒューストンや筑波にいる管制チームの仲間となら楽しく仕事ができる。僕は彼らをリスペクトしているし、仕事はもちろん、飲みにも行くような間柄で信頼している。それは何よりの安心感につながります。

――しかし、星出さんはこれまで2回宇宙に行かれていますが、初めての打ち上げ、つまり2008年にスペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗した時は、さすがに緊張や不安が襲ってきたのではないかと思います。

僕も、さすがに最初は緊張すると思っていました。でも心臓が飛び出るような状態にはならず、思っていた以上にリラックスしていました。

その理由は2つあって、1つは何回も訓練をしているので作業や環境に慣れて、地上での訓練のように作業ができたこと。2つ目は、1年間ずっと一緒に訓練をしてきた、家族のような関係になった仲間と一緒だったので、リラックスして本番に臨めたことでした。

打ち上がる2時間前に機内に乗り込んで機器をチェックするのですが、そのあとは打ち上げ2分前までクルーと冗談を言い合ったり、うたた寝したりしていましたね(笑)。いずれにせよ、準備をしっかりするということは、本番でメンタルを安定させるために非常に大切なことだと思います。

――本番のように訓練して、訓練のように本番を迎えていたから、平常心でいられたと。

そうです。でも訓練は本番以上にハードでした(笑)。シミュレーション訓練で担当するインストラクターが、例えば機器が壊れて通信ができない状態にしたりするんです。インストラクターは非常に優秀な人たちで、僕らが苦手とするところをうまく突いてくるので、そのたびにそれまで学んだことを踏まえて対応しなくてはなりません。そしてたくさん失敗を重ねるうちに、対応策の引き出しが増えていきます。そうしてレベルアップしていくと、余裕が生まれて、冷静に対応できるようになります。そのうち、インストラクターがどんな故障を入れてくるかも読めるようになりました(笑)。

僕は慶應大学理工学部のラグビー部で味方にパスを供給するスクラムハーフ(SH)をやっていましたが、宇宙飛行士の訓練は、ラグビーのトレーニングと似ています。初めはパスから練習するけど、下手だからパスすることだけに気が行ってしまう。でも練習を繰り返し、ある程度パスができるようになると余裕ができて周りが見えてきます。今度はこっちではなく、あっちにパスしてみよう、タイミングを見計らって蹴ってみようなどと、プレーに幅が出てくるのです。練習の積み重ねで、余裕が生まれていくからだと思います。宇宙飛行士の訓練も、最初は必死でも積み重ねで余裕ができてきます。

――宇宙ステーションに滞在している時もずっと平常心でいられるものですか。

家族や友人に会えない隔離された環境に長くいると、精神に支障をきたすことがあるのではと思う人もいるかもしれませんが、先ほどお話ししたように、地上の仲間たちがさまざまなサポートをしてくれます。定期的に家族と話をする時間もあります。それに、地上の管制官とも毎日コミュニケーションをとりながら作業をしているので、離れているという感覚はありませんでした。一体となって作業をしていますから、精神的に不安定になるということはなかったですね。

もちろん、人間ですので日によって気分のいい日、悪い日などはあります。でも、ISSに一緒に滞在した宇宙飛行士の仲間とは2年間ずっと一緒に訓練しているので、何となくお互いの性格が分かる。今日は気分が悪そうだからそっとしておこう、逆に声をかけてみようなどの気づかいが互いにできるのです。

宇宙滞在中も土日は休み

――宇宙に滞在している間はオンとオフなどの区別はあったのですか?

土日は休みで週休2日です。ただ、休みとはいえ、土曜日の午前中は掃除の時間。誰かが掃除をしてくれるわけではないので自分たちで掃除機をかけたりしていました。また、休みだからといってどこかに買い物に行けるわけでもないので、それぞれ思い思いのことをしたり、運動はやらなければならないのでその時間を取ったり、地上の人とメールのやり取りなどをして過ごしていました。宇宙ステーションの下側に大きな窓があるんですが、私の場合はそこに入りびたって地球を眺めていることも多かったです。

――宇宙に飛び立たれて、体の不調を感じたことは?

初めて宇宙に飛び立ったその日の夜に、宇宙酔いになりました。4回吐いて、酔い止めの薬をもらって眠り、翌朝もう1回吐きました。でもそのあとはケロッとしていましたね。不思議だったのは、船酔いや車酔いと異なり、気持ち悪さがずっと続くことはありませんでした。作業をしていたら急に、うっとなって吐きますが、あとは不快感もなく大丈夫だったんです。

宇宙酔いは、なる人とならない人がいるし、すぐ終わる人と長く続く人もいる。こればかりは個人差があるので、どの宇宙飛行士も宇宙に行ってみないと分かりません。人は自分の置かれた場所を目で確認し、耳の奥にある内耳という器官でもキャッチしますが、視覚と耳による平衡感覚がずれた時に宇宙酔いになりやすいといわれています。でも、メカニズムの詳細までは分かっておらず、いまだにそれは研究テーマの一つです。

僕の場合、2回目の打ち上げでは体が無重力状態を覚えていたのか、宇宙酔いはありませんでした。振り返ってみると1回目のフライトでは、エンジンの停止と同時にすぐ動き回って作業をしなければいけなかったのですが、2回目はエンジンが停止してから、体が固定された状態のまましばらく作業をしたので、それも宇宙酔いにならなかった要因かなと分析しています。

ちなみに、2回目の宇宙飛行の時は笑ってばっかりだったんですよ。トイレが故障した時も笑いながらほかの飛行士と修理していて……。一緒に行ったクルーがユーモアあふれる人たちで、すごく楽しく仕事ができました。それが地上の仲間にも「伝染」して、チーム全体がとても明るかったと言われました。どんな環境でもユーモアは大事だと思いました。

――宇宙酔い以外の不調は?

体調を崩したことはないですが、無重力空間で移動する時はスーパーマンが飛ぶ時のように首を上に上げます。筋肉を使って首を引っ張るので、それに慣れるまでしばらく首が痛くなりました。宇宙だと重力がないので、頭をどの方向に動かすにも筋肉を使う。それは不思議で新しい感覚でした。

――地球に戻った時にはどんな体の変化がありましたか?

地上に体が適応しようとする段階で、気持ち悪くなるような状態が続く人はいます。かく言う僕も重力で酔ってしまいました。体が重く感じ、宇宙酔いと同じように視覚と耳による感覚がずれて混乱してしまった。その時に医師に言われた防止策が、急に頭を動かすと気持ち悪くなるから、歩く時は首を動かさず、肩と一緒に体ごと動かしなさいということでした。でも油断してしまって、歯を磨きながら首を動かした途端、気持ち悪くなりました(笑)。

(次回に続く)

(文 高島三幸)

星出彰彦さん
1968年東京都生まれ。慶應義塾大学理工学部機械工学科卒業、ヒューストン大学航空宇宙工学修士課程修了。92年宇宙開発事業団(現JAXA)に入社。H2ロケットなどの開発・監督、宇宙飛行士の技術支援などを経て、99年日本人宇宙飛行士に選抜。08年スペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗し、「きぼう」船内実験室の国際宇宙ステーション(ISS)取り付け作業に参加。12年ISS第32次/第33次長期滞在クルーとしてISSに約4カ月滞在。2020年には約半年間、再びISSに滞在し、期間中は船長も務める予定。

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