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講談師・神田松之丞 「絶滅危惧」をブームに導く知略

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NIKKEI STYLE

2019年になってよく見聞きする名前だと思っている人は多いはずだ。神田松之丞、肩書きは講談師。2年前からラジオ番組を始め、昨年からはテレビでも見かけるようになった。今年になると冠番組が始まり、『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)への出演、情報番組での密着取材など、一気にテレビの人気者に。"予定調和"をものともしない振る舞いで世間の関心も急上昇。今、彼にラブコールを送っている番組は数知れない。

本業の「講談」は、日本の古典芸能の1つ。会話形式で庶民の生活を活写する「落語」に対し、講談は張り扇で釈台をたたきながら歴史物語を聞かせる、「話を読む」芸だ。かつては落語をしのぐ人気だったが、現在活動しているのは落語の10分の1にも満たない90人程度。エンタ界の絶滅危惧種と目されていた。

しかし、松之丞の登場によって大きな変化が現れている。公演頻度が増し、会場規模も拡大。松之丞が出演するとなればチケットは即完売となり、今では全国各地からの依頼がひっきりなしだという。「地方で講談のみの公演なんて少し前までは考えられなかった」とは本人の弁。瀕死状態にあったジャンルの息を吹き返させている。

「テレビ出演は、講談の面白さを知ってもらうため」と言い切る。そんな松之丞の講談復活計画は、まだその魅力に気づいていない高校時代から始まっていた。

見たい若手がいなかった

「芸人を目指すと決めたのは高校の頃ですが、すぐ演者になるよりも、観客としての目線をもっと鍛えたほうがいいなと思い、大学に進学しました。俺がここでやるなら、どんなネタを選び、どう作用させ、そのとき主催者はどう思うのか。客として過ごした時間が何年かあったことで、そういった判断能力のアンテナ、プロデューサー的感覚が養われましたね。

講談の面白さに気づいたのは大学時代です。でも落語と比べると本当に評価が低くて、新弟子も1年に1人入門するかしないかのひどい状況で。面白い先生方はいたんですけどベテランばかりで、若手の中には自分が見たい、聴きたいと思える講談師がいなかった。それで『この世界はもっと若くて野望を持った奴が1人いれば変わるんじゃないか?』と思って、07年に今の師匠である神田松鯉(しょうり)の門を叩きました」

入門後は見習い修行、前座と経験を積み、11年に二ツ目に昇進。そのあたりから独自のスタイルを濃くしていく。改革点は2つ。まずは"印象に残る面白さ"を感じてもらうことだったという。

「講談って、脚色しているとはいえ歴史の話が主流なので、登場人物も多く、背景も分からないと初めて聴く人にはとっつきづらい。ところが多くの講談師が、初心者より常連向けにやっているイメージがありました。僕は学生の頃から『お客さんの耳はそこまで育っていないのになあ…』と思っていたので、自分が高座に上がるようになってからは、聴いてみたいと感じてもらえるインパクトを意識しました。

本来、講談は一席30分くらい。それを寄席では15分程度にまとめなきゃいけない。つまり、どこを肝にして盛り上げるかみたいな編集能力が問われるんです。そこで僕は持ち時間が15分なら、13分あたりで、『ここからが面白いわけでございますが、この続きはまたいつの日か…』といったん切るようにしました。すると、緊張と緩和で会場がウケるんです。そこからメガネを掛け直して『…ただ、まだ2分ありますので、この続きを申し上げてもよろしいでしょうか…』とまくしたてるように残りの話を続ける。昔からある、飛び道具的なちょっと汚い手法ではあるんですが(笑)、印象には確実に残ります。

あまりやらないように気をつけてますが、そこで興味を持ってもらったら、次は独演会のようなもう少し深い講談の世界に来てもらい、最終的には5日間連続公演のような本格的な講談につなげていくという道筋作りを意識しました」

もう1つの取り組みが「若手の見せ方」だ。芸人が成長する姿を客に楽しんでもらうため、二ツ目の落語家や講談師11名からなるユニット「成金」を結成。プライベートでも親しい落語家の柳亭小痴楽と瀧川鯉八とは、3人で各地を巡業する「旅成金」を始めた。

「ベテランになればうまい芸でお客さんを喜ばせられるけど、伸びしろはどうしても少なくなるから、変化という面ではそんなに楽しくなくなってしまう。ただ若くてまだ十分な実力がないうちは、その成長過程を青春ドキュメンタリーとして見せられる。伝統芸能って、階級が上がったり、名前が変わったり、盛り上がるようにできてはいるので、さらに若手同志が切磋琢磨する姿を毎週イベント的に見せて、成長を楽しんでもらいやすくしました。

伸びしろとか、余白。それこそが我々の強みなので、同じ話でも前より随分良くなったとか、孫を愛でる気持ちで聴いているお客さんも多いんです。未熟な者の成長を見ていてくれるのは、本当にありがたいことだと思います」

「旅成金」に関してはSNSを活用し、主催者探しから始めた。

「ツイッターで、『誰か僕たちの会を主催してくれる人いませんか?』って。当時、僕らは新しい出会いが欲しかった。長崎にあるホールの館長が最初に手を挙げてくれたんですが、そこから徐々に全国の主催者と新しい興行を打てるようになって、昨年の夏は九州や関西、北陸など全国計10カ所を回りました。

クラウドファンディングをやっている仲間もいますけど、少し前なら考えられない試みですよね。手段は違えど、お客さんに喜んでもらいたい気持ちは昔も今も変わらないんですよ。志ん生師匠(※)が現代に生きていても、クラウドファンディングをやってたかもしれないですし。集まったお金で酒を飲んでそうですが(笑)」

(※)五代目古今亭志ん生。明治から昭和にかけて活躍した天才落語家。大の酒好きで泥酔して高座に上がったことも。

昔はテレビを小バカに

少しずつ手応えを感じていくなか、17年に大きな転機が訪れる。毒舌満載の1人しゃべりを30分間続けるラジオ『神田松之丞 問わず語りの松之丞』(TBSラジオ)がスタートしたことだ。

「ラジオ番組は講談の存在を知らない人にも広く知ってもらえるきっかけになりました。ラジオって弱いメディアと思われがちなんですけど、感度の高い人や業界人が聴いてることが多い。『すべらない話』も、プロデューサーが僕のラジオを聴いていてくれていたことが出演のきっかけでした。

最近は僕のテレビに対する考え方も変わってきました。正直言うと、昔はテレビに出ている芸能人がいろんなルールに縛られてやっていることを、どこか小バカにしていたんです。ただ間近で見ると、みんなギリギリのなかで面白いことをやろうと必死にもがいている。思っていたのと違うなと。

あと、なんだかんだ言ってマスとしてのテレビの大きさは今でも絶大なんですよ。ネットの時代とか言われていますけど、ネットを見ている人も結局はテレビが大好きですから(笑)。

いろんな番組に出演するなかで、講談の可能性をさらに広げられることにも気づきました。今年4月に『TOKIOカケル』(フジテレビ系)に出た際に、リーダーの城島(茂)さんの半生を講談形式で紹介する『城島茂一代記』をやったんです。これは講談の魅力を分かりやすく伝えられるフォーマットだなと。同じスタイルで、6月にはサンリオピューロランドで『キティーちゃん一代記』もやらせていただきました。

他では、今の大河ドラマ『いだてん』も、本来であれば落語家よりも講談師が語り部となったほうがきっと伝わりやすい。講談師がメディアの中でできることは、まだまだいっぱいありそうだなと感じています。

ただ本音を言わせてもらうと、マスメディアに出るのは本当は好きじゃないんですよ。講談をずっとやっていたい。だから別の若手が出てきたら、テレビはすぐそいつに譲ろうと思っています(笑)」

20年2月には真打への昇進が決まっており、6代目神田伯山を襲名する。今後はどんなプランを描いているのだろうか。

「30年後か40年後になるか分かりませんが、今はなくなってしまった講釈場を作ること。昔はそこに講談師のみ出ていたんですが、今の時代はそれだけだと人も集まらないし、講談師の数も足りないので、もっと現実的に、"持続可能"なものを作ろうと思っています。

今でも続いている『寄席』は、落語、講談、浪曲もあれば、太神楽(だいかぐら)のような傘回しのような演目もある。子どもが見ても楽しく、大人が通しで見て飽きないのは、様々なジャンルが入り乱れているからだと思うんですよね。

来年から真打となるので状況も変わります。もっと講談界に貢献できるように頑張りたいですね。講釈場ができた時に毎日公演するには最低でも200人から250人は必要。そして、今は2団体に分かれている『日本講談協会』と『講談協会』が、講釈場が完成したタイミングで1つになれば、マスコミ的にもドラマチックに盛り上がるんじゃないでしょうか」

(ライター 中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2019年10月号の記事を再構成]

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