講談師・神田松之丞 「絶滅危惧」をブームに導く知略

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2019年になってよく見聞きする名前だと思っている人は多いはずだ。神田松之丞、肩書きは講談師。2年前からラジオ番組を始め、昨年からはテレビでも見かけるようになった。今年になると冠番組が始まり、『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)への出演、情報番組での密着取材など、一気にテレビの人気者に。“予定調和”をものともしない振る舞いで世間の関心も急上昇。今、彼にラブコールを送っている番組は数知れない。

1983年東京都生まれ。2007年三代目神田松鯉に入門。二ツ目ながら、出演高座は即完売し、“日本一チケットの取れない講談師”とも呼ばれる。『問わず語りの松之丞』(TBSラジオ、金曜21時30分)も人気。20年2月に真打ちの六代目神田伯山を襲名する(写真:小林ばく)

本業の「講談」は、日本の古典芸能の1つ。会話形式で庶民の生活を活写する「落語」に対し、講談は張り扇で釈台をたたきながら歴史物語を聞かせる、「話を読む」芸だ。かつては落語をしのぐ人気だったが、現在活動しているのは落語の10分の1にも満たない90人程度。エンタ界の絶滅危惧種と目されていた。

しかし、松之丞の登場によって大きな変化が現れている。公演頻度が増し、会場規模も拡大。松之丞が出演するとなればチケットは即完売となり、今では全国各地からの依頼がひっきりなしだという。「地方で講談のみの公演なんて少し前までは考えられなかった」とは本人の弁。瀕死状態にあったジャンルの息を吹き返させている。

「テレビ出演は、講談の面白さを知ってもらうため」と言い切る。そんな松之丞の講談復活計画は、まだその魅力に気づいていない高校時代から始まっていた。

見たい若手がいなかった

「芸人を目指すと決めたのは高校の頃ですが、すぐ演者になるよりも、観客としての目線をもっと鍛えたほうがいいなと思い、大学に進学しました。俺がここでやるなら、どんなネタを選び、どう作用させ、そのとき主催者はどう思うのか。客として過ごした時間が何年かあったことで、そういった判断能力のアンテナ、プロデューサー的感覚が養われましたね。

講談の面白さに気づいたのは大学時代です。でも落語と比べると本当に評価が低くて、新弟子も1年に1人入門するかしないかのひどい状況で。面白い先生方はいたんですけどベテランばかりで、若手の中には自分が見たい、聴きたいと思える講談師がいなかった。それで『この世界はもっと若くて野望を持った奴が1人いれば変わるんじゃないか?』と思って、07年に今の師匠である神田松鯉(しょうり)の門を叩きました」

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