もちろん、時間外メールがすべてパワハラというわけではありません、メールやグループチャットの送信の頻度や内容次第で、パワハラとみなされない場合もあります。

海外は「つながらない権利」が法律で保護

 日本の場合、便利さにかこつけて何となく曖昧なまま時間外メールが利用されてきましたが、海外ではすでに「つながらない権利」(right to disconnect)と呼ばれ、勤務時間外に仕事関連の連絡を絶つ権利が法律で保護され始めています。

 フランスでは従業員50人以上の会社に対し、勤務時間外の従業員の完全ログオフ権(メールなどのアクセスを遮断する権利)を盛り込んだ定款の策定を企業側に義務付け、イタリアでも同種の法律が制定されています。また、日本でも、つながらない権利を採り入れている企業も出始めました。

 とはいっても、そこまでの日本企業はまだ多くはありません。このため、個人でできる対応としては、割増賃金の請求ということになります。企業がこれを拒否するのであれば、それは「業務指示」ではないことになるので、時間外メールは無視して構わないものと解されます。

時間外メール問題、企業がしっかり認識を

 そして、前述したパワハラ防止法では、従業員から企業がパワハラの相談を受けた場合には、適切に対応できるような体制などを整えておかなければならないこと、パワハラについて相談した従業員への不利益な取り扱いを禁止していることなどを定めており、多くの企業がパワハラ相談窓口を設置するはずですので、これを活用し、パワハラに該当する時間外メールの存在を企業側に認識してもらうことが必要です。

 もっとも、私のような者が言葉で言うのは簡単ですが、現場の皆さんにとって、上司から来た時間外メールを無視できるか、それを窓口に持ち込んで相談できるのか、相談したら即対応してもらえるのか――。現実論としてなかなか難しい問題であることは理解しているつもりです。

 しかし、政府の推進する働き方改革における重要な柱が長時間労働の是正やパワハラ防止であり、時間外メールもまさにその問題であることを企業側がしっかり認識してもらう必要があります。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。
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