中身のない人間が軽薄なスタイルをしても笑われるだけ
――世界中の知識人と仕事をされています。仕事と服装とはリンクするものでしょうか。
「ヘンリー・キッシンジャーさんにしてもジョージ・ソロスさんにしても、驚くべき緊張感の中で一対一で会うわけです。さっと触れ合っただけでビリビリくるような人たちは、知性がその人の生きるスタイルを決めているみたいなところがある。その世界である種の力を持った人には、中身がある人だからこその装い、を感じます。みかけよりもコンテンツなのです。格好をつけている人なんて1人もいません。日本の近代史でかっこいいといわれている白洲次郎さんにしても、中身と一致している。結局まねただけなら背伸びにしかならないのです。ですから逆に中身のない人間がTシャツとジーンズだったり軽薄なスタイルだったりしても、笑われるだけ」
――装いには教養がにじみ出るものでもあります。
「元首相の細川護熙さんとお会いする機会が多いのですが、まさにそういう人で、いつも知性と文化力をにじませたような服を着ています。教養人はいつも考えているのですね。(陶芸で)粘土をこねるとき、絵を描くとき、装いでもそれぞれの時間への入り方があるように、僕と会うときには、僕という人間を彼がどう理解しているかということをリフレクトしているような服装で現れるのです。それは見事」
――人との関わりの中で服装も変化していくものだと。
「本当にそう。装いは人と相対することで磨かれていくものだと思います。いい意味で人と向き合う時間を想定しないと、人間は自分のスタイルを考えません。面談する人、向き合わないといけない人を意識して装いを考えるということが重要だと思っています」
(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

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