Men's Fashion

中身あっての装い 「人と相対しながら磨かれていく」

リーダーが語る 仕事の装い

日本総合研究所会長 寺島実郎氏(上)

2019.11.7

一般財団法人日本総合研究所会長の寺島実郎さんは三井物産の社員時代、商社マンの定番スタイルであった三つぞろいをよく着ていた。だが、その後駐在した米国で、装いの大転換期を目の当たりにする。Tシャツ&ジーンズ姿で堂々とプレゼンするIT(情報技術)の若き経営者たち。その姿に「コンテンツがつくるスタイル」を感じとったという。時に先輩に影響を受け、世界の知識人と触れあううちに、自らの装いも次第に変化していった。スタイルは人と相対することで磨かれていくもの、そして「中身があっての装い」だと喝破する。




ロンドンの先輩に憧れて派手なストライプの三つぞろい

――社会人としてのスタートは三井物産。商社マンは昔も今もぱりっとスーツを着こなし、世界を飛び回るイメージがあります。

「入社したのは1973年です。僕らが仕えた先輩世代は、日本が戦後の復興で成長しているときに海外の最前線を支えた人たちでした。特に物資部門が華やかな時で。先輩たちは三つぞろいにネクタイを締め、(新潟県)燕三条の洋食器やクリスマスツリーのランプ見本を詰め込んだ、指がちぎれるほど重いボストンバッグを持って得意先を回っていました。トヨタ、松下といった大企業が活躍する日本の産業を背負って、商社がその機能を果たしていた時代にふさわしいスタイルでした。僕も当初は商社マンスタイル。サラリーマンルックの背広がほとんどで、三つぞろいの時代もありました」

日本総研のある寺島文庫ビルのカフェは110年前のパリ航空ショーのポスターなどが彩る(東京都千代田区)

――服装で影響を受けた先輩はいましたか。

「75年にロンドンに初めて行ったとき、英国紳士のライフスタイルそのままに生活していた先輩に出会いました。小豆色のベントレー風の車に乗り、スーツも語り口調もダンディズムの先端。20代の駆け出しの僕にはとってもまぶしくて。彼の影響で派手なストライプの三つぞろいを着ていた時期があったなあ。今では笑ってしまいますが」