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小長啓一 元首相秘書官

小長啓一 元首相秘書官

米中貿易摩擦が激しさを増し、中東では米イランの緊張感が高まる。そんな混迷の時代、政界にもビジネス界にも最も求められるのが強力なリーダーだ。通商産業相(現在の経済産業相)、首相と2回わたり、通産官僚として田中角栄氏の秘書官を務めた小長啓一氏(89)に田中氏のリーダーシップの本質を聞いた。前編は「人間力」と「構想力」。

(下)絶頂だから「最も難しい問題」 田中角栄がみせた即断 >>

――田中角栄さんはやはり強力なリーダーだったのでしょうか。

「最初に田中さんにあったのは1971年7月5日、佐藤栄作改造内閣が成立した日のことです。私はそれまで通産省立地指導課長をしていました。田中さんの顔は赤銅色で艶やかで、精気と自信がみなぎっていました。ものすごい迫力と気迫、後光がさすようなまぶしさがありましたね。『こんな人の秘書官が務まるのか』。それが最初の印象でした」

――最初、お会いになった時に田中角栄さんは何とおっしゃったのですか。

「私は通産省の官房長に呼ばれ、そのまま一緒に官邸に赴きました。初めて田中さんに会ったのはこの時です。官房長が『通産省としては小長を秘書官に推薦したい』と私を紹介すると田中さんからはたった一言だけでした。『結構。君らがそう決めたのなら全く異存はない』。こういう時に田中さんはああだ、こうだとはおっしゃいません。私にも『小長くん、よろしく頼む』の一言だけでした」

――その後、田中角栄さんとのつき合いが始まるわけですが、振り返ってみて田中角栄さんはどんな資質を備えたリーダーだったのでしょうか。

「4つ挙げたいと思います。最初に2つ挙げますと『人間力』と『構想力』ということになるでしょうか。これが素晴らしかったと思います。まず『人間力』ですが、田中さんは総理大臣になってからも絶対に『下から目線』でした。この姿勢を崩されることはありませんでした。総理大臣だからと言って人を上から見下ろして偉ぶるようなことは決してありませんでした」

この人のために尽くしたい

「また人間力に含まれるのだと思うのですが、田中さんには統率力もありました。天性のものもあるのでしょうが周囲の人が自然と『この人のためには身も心も尽くしたい』と思うようになるものを持っておられました」

「ただ、ご本人はとても努力家でした。ご自身もおっしゃっていましたが『努力なくして天才なし』です。よく周囲の人は田中さんのことを『天才』と評しますが、自分の頭脳の明晰(めいせき)さや記憶力の良さに甘えるようなところはありませんでした。朝は午前2時にいったん目を覚まし、必要な資料をじっくり読み込み勉強しておられました」

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