「首の下部の痛み」って何? 体の話は意外に通じない
デイビッド・セイン「間違えやすい英語・聞き手編」(22)neck
相手が話した英語を誤解して受け取ってしまった。そんな体験はどなたにもあると思います。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんは「日本人が聞き手として勘違いしやすい英語表現がある」と言います。今回のテーマはneckです。それを「首」と呼ぶのか何と呼ぶのか、というお話です。
◇ ◇ ◇
ユウカは同僚スティーブの様子を見て気になったので声をかけます。すると、なんと腰痛とのこと。一方スティーブも、デスクワークをしているときのユウカの仕草を見ていて、彼女にも不調があるのではと心配しています。ユウカはある部位を念頭に、痛みがあることを伝えるのですが、なぜか話が平行線になってしまいます。一体どういうことなのでしょうか?
それはこんな会話でした。
Yuka: Are you okay?
Steve: I tried to move something heavy and now I have a backache.
Yuka: Oh, I'm sorry to hear that.
Steve: You have lower neck pain, right?
Yuka: Neck? No, I don't.
Steve: Really? You're always doing stretches at your desk.
Yuka: Um, I have stiff shoulders.
Steve: Shoulders?
Yuka: Yes, it's not my neck. It's my shoulders.
Steve: I thought it was your lower neck...
Yuka: Huh?!
Steve: I tried to move something heavy and now I have a backache.
Yuka: Oh, I'm sorry to hear that.
Steve: You have lower neck pain, right?
Yuka: Neck? No, I don't.
Steve: Really? You're always doing stretches at your desk.
Yuka: Um, I have stiff shoulders.
Steve: Shoulders?
Yuka: Yes, it's not my neck. It's my shoulders.
Steve: I thought it was your lower neck...
Yuka: Huh?!
日本語に置き換えてみると次のようになります。
ユウカ:大丈夫?
スティーブ:重いものを動かそうとして腰痛になっちゃったんだ。
ユウカ:あら、それはお気の毒に。
スティーブ:きみは首の下部に痛みがあるでしょ?
ユウカ:首に? 別にないわ。
スティーブ:本当? デスクでいつもストレッチしてるよ。
ユウカ:まあ、肩凝りはあるけど。
スティーブ:肩?
ユウカ:ええ、首じゃなくて、肩よ。
スティーブ:首の下部かと……。
ユウカ:ええっ?
スティーブ:重いものを動かそうとして腰痛になっちゃったんだ。
ユウカ:あら、それはお気の毒に。
スティーブ:きみは首の下部に痛みがあるでしょ?
ユウカ:首に? 別にないわ。
スティーブ:本当? デスクでいつもストレッチしてるよ。
ユウカ:まあ、肩凝りはあるけど。
スティーブ:肩?
ユウカ:ええ、首じゃなくて、肩よ。
スティーブ:首の下部かと……。
ユウカ:ええっ?
日本語で使われている言葉が、英語で使われる単語と完全に一対一で対応しているわけでないことは、みなさんよくご存じだと思います。英語のneckが指し示すものと、日本語の「首」が示すものとの間にはズレがありますし、shoulderの意味と「肩」の意味との間にもズレがあります。ところが、スティーブの言うYou have lower neck pain, right?という発言を聞いたとき、ユウカはついつい日本語の発想のまま考えてしまったのでした。