
――「牛肉香味焼」は、弁当でも展開されています。
この料理はもともと、ランチで出している料理なんです。最近は、とにかく肉料理が人気ですが、当社の総菜・弁当店である「なだ万厨房」は手の込んだ料理を詰め合わせた弁当が中心で、肉をメインにした商品が少なかった。そこで、しっかり肉を召し上がっていただける弁当を作れないかという話をしたら、「うちには『牛肉香味焼』というすばらしいメニューがあるんです」という話がでて、早速それで弁当を作ってもらうことにしました。
甘辛いタレで肉を焼いたもので、ざっと炒めるのではなく、一枚一枚丁寧に焼いている。なだ万ならではの手間をかけた弁当です。手間がかかるのでなかなか全店で扱えないのですが、昨年4月に発売して以来、首都圏を中心とした「なだ万厨房」で取り扱い、お客様にご好評をいただいています。
手ごろな価格のすき焼き弁当も作りました。以前より、銘柄牛を使ったすき焼き弁当はあったのですが、予約しなければ買えないメニューで税込み2009円と値段も少し高い。そこで、おいしいけれど銘柄牛ではなくリーズナブルな価格の牛肉を使用した、税込み1296円の「すき焼重」弁当を発売しました。今年4月、まずは弁当がよく売れるエキュート品川のみで販売を開始したのですが、こちらも好評で現在は6店で扱っています。

総菜では、おでんも人気なんですよ。ダイコン、コンブ、コンニャク、エビしんじょう、魚しんじょう、ゴボウ巻、結びシラタキ、卵と8品目入りで税込み1080円。個々の具の味を生かす、カツオ節とコンブをたっぷり使ったダシと一緒にパッケージされているので、おでんを食べた後、そのダシにご飯を入れておじやにもできる。「なだ万厨房」全店で扱うほか、大手スーパーでも販売していて、同じぐらいの大きさのパッケージの、ずっと安いPB商品のとなりに置かれてもよく売れています。
実は、家で簡単にできるおつまみをなだ万の調理長が作る料理動画を「ユーチューブ」で、配信しようという案が今、出ているんです。当社には正社員の調理スタッフが600人ぐらいいます。そんな会社はなだ万しかない。そうした人材が活躍できる場を増やしていきたいですね。
――来年はオリンピックイヤーで訪日客が増加します。
外国の方には、懐石料理というものは、日本人以上に分かりにくい。ですから、海外のお客様にも分かりやすいメニューを出そうと考えています。具体的には、来日されるお客様がみなさん必ず召し上がりたいとおっしゃる、天ぷら、和牛のステーキ、すし。この3点を1つのコースに組み入れリーズナブルな価格でお出ししたいと案を練っています。世界に打って出るには、伝統だけでなく新しさも必要となります。「老舗はいつも新しい」という社是を胸に、なだ万の料理を広めたいと思います。
東京生まれ。80年早稲田大学法学部卒業、同年アサヒビール入社。97年東京支社吾妻橋支店支店長、01年ワイン部部長。02年首都圏広域支社支社長、09年執行役員広域営業本部本部長兼量販統括部部長、13年アサヒ飲料常務執行役員、15年アサヒビール常務執行役員営業本部副本部長。17年なだ万代表取締役社長。社団法人日本ソムリエ協会認定ソムリエの資格も持つ
(フリーライター 大塚千春)