シビ辛が大人気「花椒&山椒」
ピリリとしびれる辛さで脂肪の燃焼を高める
しびれる辛さが魅力の花椒や山椒(サンショウ)。食べると体が熱くなるのを経験した人も多いはず。
「これは、脂肪燃焼作用が知られる唐辛子のカプサイシンなどと同じように、花椒や山椒に含まれる辛み成分であるサンショオールなどが交感神経の活動を高め、脂肪燃焼作用を促進する結果と考えられる」と京都大学の森谷敏夫名誉教授。
実際、森谷教授が行った研究では、花椒エキスを飲むと、安静時の脂肪燃焼が高まることがわかった。
また、山椒の成分には、余分なエネルギーを体脂肪として蓄積する「白色脂肪細胞」を、熱を作り出すために脂肪を燃やす「ベージュ細胞」に変えて、やせやすい体にする作用もある。
和歌山県立医科大学の井原勇人講師は、「マウスに山椒成分を混ぜたエサを食べさせると、ベージュ細胞の増加を示す、エネルギーを熱に変えるために働くUCP(ユーシーピー)‐1というたんぱく質の量が、山椒成分なしのエサを食べたマウスの約3倍に増えた」と話す。このとき、マウスの体重増加も抑えられた。
花椒や山椒は、香りも辛みも楽しめるスパイス。ここで紹介する花椒味噌は、和食にも中華にも使えるので、毎日の食事に加えてみて。
科名:ミカン科 使用部位:果実
原産地:中国(花椒)、日本(山椒)
花椒と山椒とは別の種類だが同属。花椒は熟して弾けた実を乾燥させたもの。しびれるような刺激が特徴。「食材を選ばず使え、中華風味をつけたいときに重宝する」(日沼さん)。
相性のよい食材(花椒)
あわせる食材 相性度
野菜 ★★★
魚介 ★★★
肉 ★★★
果物 ★☆☆
菓子・パン ★☆☆

花椒エキス200mgを男子学生8人に飲んでもらい、60分間安静にしながら、呼気に含まれる二酸化炭素の量を測定した。摂取前、30分後、60分後の二酸化炭素量から、脂質燃焼量を計測。結果、花椒エキスを飲んだときには脂質の燃焼量が高まった。

「普通のエサ」もしくは「普通のエサ+3%の山椒成分」を加えたものを8週間食べさせたマウスのCT画像。山椒成分を加えたほうのマウスは、普通のエサを食べたマウスに比べ内臓脂肪も皮下脂肪も少なかった。(データ:井原講師、中野BC食品科学研究所、門脇昭夫氏ほか)
【花椒味噌】甘辛味が後をひく
<手軽に使える基本の花椒だれ>

しびれる刺激の甘辛味噌だれは、漬けだれとして使うだけでなく、いつもの味噌の代わりに使っても。冷蔵庫で1~2週間保存できる。
花椒パウダー小さじ1と1/2
赤味噌100g
みりん大さじ2
砂糖大さじ2
豆板醤小さじ2
ゴマ油小さじ1
醤油大さじ1
○作り方
すべての材料を小鍋に入れ、焦がさないようかき混ぜながら中火で2~3分、全体に照りが出るまで加熱する。
〈電子レンジを使う場合〉
すべての材料を耐熱皿に入れて混ぜ、ラップをせず1分加熱する。一度取り出して全体をかき混ぜ、さらに1分加熱する。
【花椒もろきゅう】シビ辛刺激があとを引く

○材料(2人分)
もぎりキュウリ5~6本
(普通のキュウリなら2本)
花椒味噌大さじ2
○作り方
もぎりキュウリをよく洗い、花椒味噌を添える。普通のキュウリを使う場合は、両端を切り落とし、好みの大きさに切る。
【花椒なめろう】魚の脂で香りが広がる

○材料(2人分)
アジの刺し身
切り身2枚(100g)
青ジソ3枚
小ネギ1/2本
花椒味噌大さじ1
○作り方
1. アジの刺し身、青ジソ、小ネギを適当な大きさに刻む。花椒味噌を加え、包丁でたたきながら混ぜる。
2. 皿に青ジソ(分量外)を敷き、1を盛る
【麻婆茄子】「麻婆の素」なしでこんなにおいしい

○材料(2人分)
ナス2本
豚ひき肉100g
ニンニク1/2かけ
ショウガ1かけ(10g)
ゴマ油大さじ3
花椒味噌大さじ2
○作り方
1. ナスは長さを半分に、さらに縦4つ切りにする。ニンニク、ショウガはみじん切りにする。
2. フライパンにゴマ油大さじ2を入れて熱し、ナスを炒めて火が通ったら取り出す。
3. 同じフライパンに残りのゴマ油を入れ、ニンニク、ショウガ、豚ひき肉を入れて炒める。肉の色が変わったら花椒味噌、2を加えさっと炒め合わせる。
カレーの香りの主役「クミン」
1日3gで体脂肪を減らす老化を防ぎ、美を守る働きも
自宅に常備する人も増えてきた人気上昇中のクミンは、カレーをはじめ中東のタジンやメキシコのチリコンカンなど、エスニック料理に欠かせないスパイス。このクミンにもダイエットに役立つ働きがある。
イランで行われた研究で、肥満女性が摂取カロリーを抑える減量を行う際、1日3gのクミンパウダーをとることで減量効果がアップ。体脂肪や体重、ウエストサイズなどの減少が確認された。
肌や血管などの老化の原因となるAGEsの生成を抑える作用もあるようだ。AGEsは、エネルギー消費や脂肪細胞への蓄積などで処理しきれなかった糖がたんぱく質と結合してできるため、急激な血糖値の上昇はAGEs増加の要因となる。クミンに含まれる香り成分のクミノールなどに、糖の吸収を抑えて食後の急激な血糖値の上昇を抑えるとともに、AGEsをできにくくする作用があるという。
「効果が期待できる量は、1日小さじ1杯程度。AGEs生成を抑える成分は脂溶性なので油を使った調理がお薦め。ただし高温で長時間の加熱は避けること」と八木教授。
科名:セリ科 使用部位:種子
原産地:地中海沿岸
いわゆるカレーの香りの主役がクミン。「エキゾチックな香りを持ち、青菜、根菜、青魚、ラム肉などクセの強い食材と相性がいい」(日沼さん)。
相性のよい食材
あわせる食材 相性度
野菜 ★★★
魚介 ★★★
肉 ★★★
果物 ☆☆☆
菓子・パン ★☆☆

肥満女性88人を2グループに分け、1日の摂取カロリーをそれまでより約500kcal減らした上で、一方には3gのクミンパウダーを混ぜたヨーグルトを、もう一方にはクミンなしのヨーグルトを1日2回に分けて3カ月間食べてもらった。クミンを食べた群は食べない群に比べ、体重や脂肪量などがより減った。

ヒトの血液中のたんぱく質(血清アルブミン)とブドウ糖に、クミンからの抽出液を加えた場合と加えない場合で、60℃で40時間反応させ、できたAGEsを測定した。結果、クミン抽出液を加えると、AGEsの生成率が55%抑えられた。
【クミン塩麹】クミンの香りがうまみを増強
<手軽に使える基本のクミンだれ>

これまで経験のないおいしさにビックリするはず。「クミンシードの青い香りが麹(こうじ)と合わさり、よりうまみを感じやすくしてくれる」と日沼さん。
クミンシード大さじ1
塩麹大さじ5
○作り方
塩麹にクミンシードを加えて混ぜる。
【イワシのクミン塩麹焼き】一口かめばクミンが香る

○材料(2人分)
イワシ4尾(200g程度)
クミン塩麹大さじ3
オリーブオイル小さじ1
レモン1/2個(好みで)
○作り方
1. イワシは頭と内臓を取り除き、クミン塩麹を全体に塗る。冷蔵庫で1時間~1日程度置く。
2. フライパンでオリーブオイルを熱し、クミン塩麹を拭き取った1の両面をじっくり焼く。火が通ったら器に盛り、好みでくし切りにしたレモンをかける。
【クミン塩麹の冷しゃぶ】ゆでても香るクミンがおいしい

○材料(2人分)
豚ロース薄切り肉
(しゃぶしゃぶ用)200g
クミン塩麹大さじ2
タマネギ1/4個
ポン酢適量(好みで)
○作り方
1. 豚ロース薄切り肉にクミン塩麹を塗り、1時間程度置く。タマネギは薄切りにし、水にさらして水気を切る。
2. 1の豚肉を熱湯でさっとゆがき、冷水にとってから水気を切る。器にタマネギを盛り、豚肉をのせる。好みでポン酢をつける。
【野菜のクミン塩麹漬け】酸味が出る前に食べ切ろう

○材料(4食分)
好みの野菜適量
クミン塩麹大さじ4
○作り方
1. 大根やキュウリなど、好きな野菜を10cm×2cm角程度の棒状に切る。
2. 1とクミン塩麹をビニール袋に入れ、空気を抜いて口を縛り、冷蔵庫で1日置く。香りが強すぎるようなら食べる前に少しぬぐって。