年金は自分で「つくる」もの 未来は変えられる年金道場(1)

11月は公的年金の役割を考える「ねんきん月間」。20歳代の君たちと年金について勉強してみたい。

大切なことは2つ。まず年金は「人生の重大なリスクに備える保険」だ。会社員などが加入する厚生年金の正式名称は厚生年金「保険」法。第1条は「労働者の老齢、障害または死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする」とある。つまり(1)長生き(2)けがや病気(3)大黒柱の死亡――というリスクに備える。

中心は長生きリスク。自分がためたお金だけで老後を過ごそうとすると途中で不足しかねない。しかし年金は死ぬまでもらい続けられる「終身給付」だ。これは長寿時代の最大の安心材料といえる。

総務省の家計調査では高齢無職世帯の平均支出額は65歳から84歳までで累計約6420万円。一方、年金の財政検証が示す84歳までの夫婦の年金支給総額は、実質経済成長率が0%の厳しい前提でも今の物価換算で約4990万円になる。

もし夫婦が100歳まで生きれば総支出額は1億800万円に増えるが、年金支給総額も8615万円に増える。つまり「長生きリスク」のかなりの部分を補ってくれる。

年金が「払い損」になると思っている人も多い。しかし厚生労働省のデータでは、今の20~30歳代でも払った保険料より将来多くもらえる。税金などで財源が補われているからだ。

機能はそれだけではない。例えばスポーツの事故などで体が動かなくなったとする。年金保険料を払っておけば、障害年金が支給され続ける。家庭を持った後に亡くなれば、妻や子供に遺族年金が支払われる。

4つめのリスクはインフレだ。資源価格の上昇などによるインフレは長期ではあり得る。年金財政が厳しくなりインフレ率と同じだけは増えないが、ある程度はついていってくれる。この人生の4大リスクに備える総合保険が年金だ。

年金をあたかも「質の悪い運用商品」のように誤解し、損得を過度に気にする人も多い。「なるべく少なく払おう」としてリスクへの対応が手薄な人もいる。年金が保険であることが知られていないためだ。

健康保険のようにみんなが保険であると認識している制度は、保険料を未納にしたり損得を考えたりする人はほとんどいない。

大切なことの2つめは、年金額がいくらになるかは自分次第であること。例えば厚生年金は高い報酬で長く加入するほど増える。年金額は決まっているのではなく自分で「つくる」ものだ。若いときにこれを知っておくと、がんばって働くことが重要だとわかる。

大切な総合保険である年金が長く維持されるよう、財政の健全性の強化や制度改正をみんなで後押ししていくべきだ。

(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞朝刊2019年11月2日付]

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