ESG投信にブームの兆し 欧米で定着も実力未知数QUICK資産運用研究所 北澤千秋

経済リターン、日本では評価定まらず

欧米では「ESGへの取り組みに優れた会社は株式の投資リターンも高くなる傾向がある」という見方があるが、日本株についてはESG課題への取り組みと投資リターンがどのような関係があるか、評価は定まっていない。そもそもESGへの取り組みが業績など目に見える形になって成果を上げるまでにはかなりの時間がかかるので、ESG投資に短期的な経済リターンを求めるのは無理がある。イデア・ファンド・コンサルティングの吉井崇裕氏は「お金を増やすのが投資の目的なら、対象をESGファンドに限る必然性はない」という。

ではESG投信に経済的なリターンよりも社会的リターンの向上を求めるならどうか。その場合は個別投信ごとに運用方針をじっくり読み込んだり、投信がどのような銘柄に投資しているかを点検したりする必要があり、少々手間がかかる。ESGへの取り組みが進んでいるのは大企業が中心なので、組み入れ銘柄をチェックしたら日経平均株価の採用銘柄と似たり寄ったりだった、ということもある。それなら信託報酬が安いインデックス連動型の投信を買った方が効率的だ。

もっと手軽な探し方がいいというなら、寄付や利益還元を活用している投信を選ぶという方法がある。例えば朝日ライフSRI社会貢献ファンドは信託報酬の一部(残高の0.1%)を毎年、福祉団体などに寄付している。野村ACI先進医療インパクト投資を実質運用する米アメリカン・センチュリー・インベストメンツは非営利の医学研究所が大株主で、毎年利益の40%以上を配当としてその研究所に還元している。

求められるサステイナブルな運用

「多くのESGファンドは時流にあったわかりやすさを打ち出したもの。ESGへの取り組みに積極的だという運用会社のポーズもある」。楽天証券経済研究所の篠田尚子ファンドアナリストは昨今のちょっとしたESGブームに冷ややかだ。その理由は、ESG投資は運用の特別な手法ではなく、すでに多くの欧米の運用会社などではESGの観点からみた企業選びが当たり前の考え方として運用全般に組み込まれているからだ。

アクティブ型投信の運用担当者なら、ずっと前から企業のガバナンスの在り方はチェックしていたはず。それと同じで欧州などでは環境や人権など社会的な課題への取り組みをみて、企業の事業活動が長期的に持続可能かどうか、あるいは社会の持続可能性に貢献しているかを判断しているという。ESGの視点はもはや運用の前提になっているわけだ。以前に来日した欧州の運用会社幹部は「ESGは資本主義の新しい形。ESGをことさら強調したファンドは周回遅れの考え方だ」と話していた。

もっとも、ここは欧州ではなく日本。社会的な課題に関心を持つ若者らがESG投信に目を向けて、それが資産形成や資産運用に取り組むきっかけになるなら結構な話だ。運用会社には一時のブームやポーズだというそしりを後々受けないよう、長期で良好なパフォーマンスを上げるサステイナブルな投信を運用してほしい。

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