「まさか、こんな嫌がらせをするとは……」

とS井が呆れ返っていると、A山は「もしかしたら、業務データも見られるとマズイことがあったのかもしれませんよ」とボソッとつぶやいた。

(それもあり得るな……)とS井は思いつつも、とにかく消えたデータに何が入っていたのか? 業務上の問題の洗い出しなどに取りかかった。最終的には1カ月ほどでどうにか通常業務を行えるまでには復旧することができたが、法律上保存しておかなくてはいけないデータなども復元することができなかった。

モラルが低い問題部下の暴走を防ぐ

職場にはさまざまな価値観を持った人間が集まるので、中にはモラルの低い人間もいるだろう。就業規則で禁止されていることを知りながら副業をしたり、社会的に問題となるような行為をする人間も出てくる可能性がある。規則で禁止したり、コンプライアンス教育をしたりすることも重要だが、場合によっては不正等を行うことをあらかじめ想定した仕組みづくりも必要だろう。

このケースでは、M原の副業や不正な確定申告については、組織として完全に防ぐことは難しい。しかし、データの削除という行為は仕組みによっては防止もしくは即座にリカバリーできる仕組みづくりは可能だろう。

特に書類やデータ、金銭の保管については、万が一紛失、盗難等があった際にすぐに対応ができる仕組みづくりが必要だ。このケースのように誰もがデータにアクセスでき、バックアップも誰でも触れるようになっていると、非常にリスクは高い。組織としてさまざまなリスクを想定した対応をしておくことで、モラルの低い人間の暴走を抑止する効果もあるだろう。

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石川弘子
1973年福島県生まれ。青山学院大学経済学部卒業。フェリタス社会保険労務士法人代表。一般企業に勤務するかたわら、2003年に社会保険労務士資格取得、04年独立。産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格も保有し、中小企業から上場企業までさまざまな企業の労務相談を受けるほか、企業のメンタルヘルス対策などにも携わる。著書に『あなたの隣のモンスター社員』。

モンスター部下 (日経プレミアシリーズ)

著者 : 石川 弘子
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 850円 (税抜き)

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