デジタル化で何が起きたか メディアの地殻変動を活写紀伊国屋書店大手町ビル店

通路に置いた特設の平台に5列並べて展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)
通路に置いた特設の平台に5列並べて展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。9月末の改装ですっきりしたビジネス書・経済書の売り場は金融関係の本や未来予測の本などがよく売れて、台風による営業日の減少はありながらも何とか踏ん張っている。そんな中、勢いのある初速でランキング上位に顔を出したのは、メディアの地殻変動をノンフィクションの手法で追いかけた一冊だった。

メディアの転換点追う

その本は下山進『2050年のメディア』(文芸春秋)。タイトルに2050年とあるが、約30年後の未来が語られているのではない。2000年代半ばから今日まで約15年間のメディアのデジタル化への動きをノンフィクションとしてまとめたのが中身だ。タイトルに込められたものは、この15年の動きが2050年のメディアを考える上での転換点に位置づけられるのではないかという視点だ。

著者の下山氏は文芸春秋の元社員で、編集者として30年以上過ごし、この春同社を退社した。メディア史に大きな関心を持つ同氏は、日本の新聞がこの10年で1000万部の部数を失っていることに衝撃を受ける。そこで18年春、「紙のメディアの破壊的縮小と今後繁栄するメディアの条件を探る」調査型の講座「2050年のメディア」を慶応大学総合政策学部で立ち上げ、調査・取材を進めて本書にまとめた。

焦点を当てるのは読売新聞、日本経済新聞、ヤフーの3社だ。とりわけ日本最大の部数を持つ読売新聞が本書の主役といっていい。序章を18年1月の賀詞交換会で漏らされた「読売はこのままでは持たんぞ」という渡辺恒雄・読売新聞グループ本社主筆の言葉で始め、第1章はiPhone発売前夜、読売の販売店主が異変を感じ取ったエピソードから書き起こす。

最初の一歩は正しかったか

そこから日本のインターネットの誕生、ヤフー・ジャパンの誕生に話を振った後、そのヤフーが始めたヤフー・ニュースに読売新聞がニュースを配信することを決めた場面が描かれる。著者はこの章を次の言葉で結ぶ。「大ポータルサイトでただで自社の記事を読めるようにする。その読売の『最初の一歩』は果たして正しいものだっただろうか?」

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