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2メートル越す結晶の「神殿」 プルピ晶洞の謎を解く

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ナショナルジオグラフィック日本版

地中の岩石の中に空洞ができ、そこに輝く結晶が成長することがある。これは「晶洞」や「ジオ―ド」とよばれ、たいていの場合は、本棚に飾れるくらいの大きさだ。しかし時に、内部にガラスの塔が林立する大きなのものもある。

プルピ晶洞は、世界最大級の晶洞だ。1999年、スペイン南部アルメリア県の閉鎖された銀山で見つかった。空洞は約11立方メートルあり、最大で2メートルを超す堂々たる石こうの結晶(セレナイト)が立ち並んでいる。透明な尖塔でできた神殿のような光景は感動的で、科学者たちは、この晶洞がどのように成長したのかを明らかにしたいと願い続けてきた。

最新の研究によると、プルピ晶洞は、小さな結晶がより大きな結晶に食べられる「共食い」のような作用と、太古の気候変動とが組み合わさって形成された可能性があるという。スペイン、グラナダ大学のフアン・マヌエル・ガルシア・ルイス氏らのグループが、2019年10月15日付けで学術誌「Geology」に論文を発表した。

ガルシア・ルイス氏は今回、以前に巨大な「結晶洞窟」を分析した際の探知技術を応用した。メキシコのナイカ鉱山にある、高さ11メートルもの石こう結晶を擁する洞窟だ。

「私にとって、ナイカの結晶洞窟やプルピ晶洞は、エジプトのピラミッドのようなものです」とガルシア・ルイス氏は話す。いずれも驚異的なモニュメントだが、気が遠くなるほど長い年月をかけて形成されており、文字通り何にも代えがたい。

謎を解き明かすことで、今以上にその価値を理解し、この先の長い年月を耐え抜けるよう保護する助けになるだろう、とガルシア・ルイス氏は話す。

晶洞の「レシピ」

「晶洞のでき方は1つではありません」と、米スミソニアン国立自然史博物館の環境鉱物学者ガブリエラ・ファルファン氏は話す。ただし、多くの晶洞では、基本的な仕組みは共通している。

岩石の空洞(マグマの気泡があった穴や、地殻活動でできた亀裂など)に熱水が浸透すると、そこに溶けた成分が結晶化することがある。豊富な成分と安定した温度、長い時間といった条件がそろうと、大きな結晶ができやすい。

石こう(二水石こう)も例外ではない。石こうは水分子を含んだ硫酸カルシウムで、水を含まない硫酸カルシウムは「硬石こう」と呼ばれる。57℃未満の温度では、前者の石こうが安定した状態であり、硬石こうは水に溶けて石こうの元になる。

英ハル大学の地球構造学者マイク・ロジャーソン氏によれば、石こうは大型の結晶を作り出すのに非常に適しているという。石こうの結晶構造は大量の水を取り込むことができ、比較的少量の硬石こうから、大きな結晶を作れるとのことだ。ロジャーソン氏は、今回の研究には加わっていない。

ただし、この特性だけでは、人の背丈ほどもあるプルピ晶洞の結晶について説明がつかない。

結晶ができやすい気候

プルピの硬石こうは、約2億5000万年前の三畳紀に形成が始まった。超大陸パンゲアが存在し、恐竜が出現し始めたころだ。結晶には年代の推定に使える不純物がほとんど含まれていないため、石こうの成長の時期を絞りこむのは難しいが、結晶を覆う炭酸塩の放射年代測定の結果は、遅くとも6万年前には形成されていたようだ。一方、この場所の地殻変動の時期を考慮すると、結晶が成長し始めたのは200万年前より後のことと見られる。

最初はほかの硫酸塩鉱物(重晶石や天青石など)があったが、高温だった熱水環境はやがて57℃の重要なしきい値を下回る。最終的には20℃付近で長期間落ち着いたことで、石こうが大量に結晶化した。

結晶がここまで大きくなったのは、オストワルド熟成と呼ばれる化学現象も原因の1つだと考えられている。熱い化学物質のスープの中で、石こうの小さな結晶が溶けて混合物に戻ると、その成分がもっと大きな結晶に「共食い」され、より大きく成長していく。

同時に、地下の環境は、地質学的な時間スケールで20℃前後を上下した。暖かい時期には小さな結晶が溶けやすくなり、寒い時期には大きな結晶がさらに成長した。「全体として、熟成プロセスを増幅する効果があります」と、ガルシア・ルイス氏は言う。これだけ長い時間スケールでわずかな温度変化が起きた要因として、研究チームは、地球の自然な温暖化と寒冷化の周期が関係している可能性を挙げる。

形成の仕組みには異論も

「プルピ晶洞の進化を時系列で明らかにするのは、ナイカの結晶洞窟よりも厄介でした」とガルシア・ルイス氏は言う。結晶洞窟は、現在も熱水活動が活発で結晶が成長し続けているため、さかのぼって調べるのは多少やりやすかった。一方、プルピの熱水活動はすでに終わっており、化石を調べるのに近い。

おそらくはこうした困難のため、プルピ晶洞の物語は、すべてが「結晶のように明白」とはいかない。

「実験室で試しに結晶を作ってみたところ、大きな結晶を作り出す重要なメカニズムはオストワルド熟成ではなく、温度変化だと考えられました」とファルファン氏は話した。とはいえ、プルピの結晶は形成の温度が異なり、実験室の結晶よりもずっと大きいため、同じルールが常に当てはまるかどうかは断言できない。

ロジャーソン氏は、気候による温度変動では、地下の晶洞周辺の環境は大きく変わらないかもしれない、と指摘する。むしろ、基礎となる地熱環境そのものの揺らぎが温度を上下させ、成長を促したという考えだ。

それでも、気候変動も何らかの役割を果たしてきた可能性はある。比較的暖かく、湿度の高い時期には、一帯を浸す水が増え、硬石こうの溶解を促すとロジャーソン氏は言う。温度が下がり、乾燥した時期になれば、多くの石こうが結晶化できる。

プルピ晶洞や、他の巨大晶洞の成り立ちを解明しようとする試みはありがたいと、ロジャーソン氏は付け加えた。晶洞の発達の経緯は時として不確かなため、背景にあるメカニズムの知識や、一般の人々に伝えられる情報は乏しいことがある。

「こうした名高い地質学の現象を取り上げ、理解を充実させる取り組みには勇気づけられます」と、ロジャーソン氏は評価している。

(文 ROBIN GEORGE ANDREWS、訳 高野夏美、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年10月25日付]

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