2メートル越す結晶の「神殿」 プルピ晶洞の謎を解く

日経ナショナル ジオグラフィック社

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2019年8月、スペインのプルピ晶洞で、地質学者のミラグロス・カレテロ氏が内部を調べる(PHOTOGRAPH BY JORGE GUERRERO, AFP, GETTY IMAGES)

地中の岩石の中に空洞ができ、そこに輝く結晶が成長することがある。これは「晶洞」や「ジオ―ド」とよばれ、たいていの場合は、本棚に飾れるくらいの大きさだ。しかし時に、内部にガラスの塔が林立する大きなのものもある。

プルピ晶洞は、世界最大級の晶洞だ。1999年、スペイン南部アルメリア県の閉鎖された銀山で見つかった。空洞は約11立方メートルあり、最大で2メートルを超す堂々たる石こうの結晶(セレナイト)が立ち並んでいる。透明な尖塔でできた神殿のような光景は感動的で、科学者たちは、この晶洞がどのように成長したのかを明らかにしたいと願い続けてきた。

最新の研究によると、プルピ晶洞は、小さな結晶がより大きな結晶に食べられる「共食い」のような作用と、太古の気候変動とが組み合わさって形成された可能性があるという。スペイン、グラナダ大学のフアン・マヌエル・ガルシア・ルイス氏らのグループが、2019年10月15日付けで学術誌「Geology」に論文を発表した。

ガルシア・ルイス氏は今回、以前に巨大な「結晶洞窟」を分析した際の探知技術を応用した。メキシコのナイカ鉱山にある、高さ11メートルもの石こう結晶を擁する洞窟だ。

「私にとって、ナイカの結晶洞窟やプルピ晶洞は、エジプトのピラミッドのようなものです」とガルシア・ルイス氏は話す。いずれも驚異的なモニュメントだが、気が遠くなるほど長い年月をかけて形成されており、文字通り何にも代えがたい。

謎を解き明かすことで、今以上にその価値を理解し、この先の長い年月を耐え抜けるよう保護する助けになるだろう、とガルシア・ルイス氏は話す。

晶洞の「レシピ」

「晶洞のでき方は1つではありません」と、米スミソニアン国立自然史博物館の環境鉱物学者ガブリエラ・ファルファン氏は話す。ただし、多くの晶洞では、基本的な仕組みは共通している。

岩石の空洞(マグマの気泡があった穴や、地殻活動でできた亀裂など)に熱水が浸透すると、そこに溶けた成分が結晶化することがある。豊富な成分と安定した温度、長い時間といった条件がそろうと、大きな結晶ができやすい。

石こう(二水石こう)も例外ではない。石こうは水分子を含んだ硫酸カルシウムで、水を含まない硫酸カルシウムは「硬石こう」と呼ばれる。57℃未満の温度では、前者の石こうが安定した状態であり、硬石こうは水に溶けて石こうの元になる。

英ハル大学の地球構造学者マイク・ロジャーソン氏によれば、石こうは大型の結晶を作り出すのに非常に適しているという。石こうの結晶構造は大量の水を取り込むことができ、比較的少量の硬石こうから、大きな結晶を作れるとのことだ。ロジャーソン氏は、今回の研究には加わっていない。

ただし、この特性だけでは、人の背丈ほどもあるプルピ晶洞の結晶について説明がつかない。