逆算に「オタ活」… 2020年の手帳は一芸で選ぶ
「日本一、手帳を売っている」ともいわれるロフト。その手帳売り場は、今年の手帳商戦の縮図ともいえる。旗艦店・銀座ロフトによると2020年用手帳の注目株は、何をするためのものか目的が明確な「コンテンツダイアリー」だ。
目的に向かってタスク管理できる「逆算手帳」、ワクワクすることなどを書き込むことで目標達成に近づく未来を予約する手帳「CITTA(チッタ)」、各種イベントへの参加やチケットを取得するためのスケジューリングなど「オタ活」をするためだけに開発された「オタ活手帳」など、バラエティーに富んでいる。
「普通の手帳機能は、スマートフォンやオンラインで代用できる。何にでも使えるものよりも、何かをするために特化したものや、誰かがプロデュースしたものなど、より付加価値があるものが売れている」と銀座ロフトの文具マネージャー片山歩氏。
プロデュースした人にファンが付いていたり、SNSや口コミで話題になっていたりするなど、9~10月の早い時期に売れる手帳は、指名買いが多い。普通の手帳から流れてくるユーザーのほか、これまで手帳を買っていなかった新しい層の開拓にもつながっているという。
また、米国で考案され、18年から日本でも注目されている日付やページにこだわらない手帳術「バレットジャーナル」は、日本では独自の進化を遂げた。
「本来のバレットジャーナル術はビジネスパーソン向けにコンテンツダイアリーの位置付けとして残り、若い女性はデコやカスタマイズなどインスタ映えするかわいい方面へと進化した。その流れが今年はシステム手帳に来ている」(片山氏)という。
システム手帳といえば、本革、渋め、高額でそれこそビジネス仕様だったのは一昔前の話。人気のシステム手帳の今年のトレンドは、パステル調の色みが主流で、素材も柔らか。価格も3000~5000円とシステム手帳としては手ごろだ。
「好きなレフィルを入れて、カスタマイズしたいという需要は以前からあった。この1~2年で女子向け文具を得意とするメーカーがシステム手帳市場に参入したこともあり、価格や色、素材も若い女性向けに寄ってきた。自分で表面や中身のノートにデコして、SNSに上げるのがはやっている」(片山氏)
システム手帳以外にも、今年は、パステル調や優しい色合いのデザインの手帳が増えている。
手帳の老舗メーカー・高橋書店も、今まではビジネスパーソン向け中心だったが、18年から女性を意識した「torinco(トリンコ)」を投入。ビジネス手帳の使いやすさはそのままに、よりモダンで洗練されたデザインと、女性が使いやすい色合いのシリーズとなっている。
今年も人気の「ほぼ日手帳」
また、毎年手帳の売り上げ断然1位の「ほぼ日手帳」は、今年も好調だ。
「ほぼ日手帳は毎年9月発売と決まっていて、通常の手帳の売り出し前にもかかわらず、即日完売のものもある。毎年絵柄が変わるため、売れ筋も毎年違っており、リピーターが多いのが特徴。固定客以外にも新しいユーザーが加わっているので、根強い人気がある」(片山氏)
ほぼ日手帳といえば、1日1ページが定番だが、最近は週間タイプ(weeks)を使う人が増えているという。
ロフト全体では今年約3500種類の手帳をラインアップしたが、銀座ロフトではカテゴリーをより売れるものに集中するため2500~3000種類くらいに絞り込んだ。
「手帳の市場規模は、スマホやネットの影響で縮小傾向にあるものの、各メーカーがあれこれ工夫を凝らし、市場を維持している。9月は、指名買いで3000円前後の高いものが売れたが、今後はスマホと合わせて使うため、2000円を切るマンスリータイプが売れると予測している」(片山氏)
(文・写真:吉田理栄子、写真:銀座ロフト)
[日経クロストレンド 2019年10月24日の記事を再構成]
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