松岡茉優 撮影待ちに体ほぐすメノウのかっさプレート
10月に主演映画『蜜蜂と遠雷』、11月には『ひとよ』が公開。女優として躍進する一方で、バラエティーやCMなどでも人気を博している松岡茉優さん。彼女が「常に持っている」と見せてくれたのは「メノウのかっさプレート」だ。
かっさプレートで顔や体をマッサージ
「去年の夏ごろ、マッサージ屋さんでオススメされて買ったのが、メノウのかっさプレートです。メノウっていう石を削り出したもので、『これで体をゴリゴリするといいですよ』と言われてやったら、本当に良くて。体をこすっていると凝りがほぐれたり、むくみが取れたりするんですよ。
でも最近、その時買った黄色い石をなくしてしまって。どうしてもまた欲しくなって、妹に買いに行ってもらったんですよ。『お姉ちゃんをイメージして、いい色のものを買ってきてね』と言ったら、このグレーに。『私のイメージは、こうなんだろうか』と思いました(笑)」
メノウは「アゲート」とも呼ばれるパワーストーンで、持つ人にエネルギーや癒やしを与えるという言い伝えがある。かっさは「滞った血を削る」という意味を持つ、中国の伝統的な民間療法。近年、天然石や牛角、ステンレスなど様々な素材の「かっさプレート」が女性を中心に愛用されている。
「俳優のお仕事は、待ち時間が長いんですよ。取材日やバラエティーの時は忙しくて身動きが取れないんですけど、撮影現場ではむしろ時間がありすぎるので、上手に過ごすことも考えなきゃいけない。私はこれを常に現場に持って行って、ゴリゴリしています。手でも足でも顔でも、どこでもいいんです。血の巡りが良くなって、疲れが取れる気がして、かなり気に入っていますね。
あと健康のために気をつけているのは、水をよく飲むこと。お茶もコーヒーも大好きなんですけど、やっぱり水分補給にいいのは水。代謝が良くなって、血の巡りも良くなります。もう1つはやっぱり、食ですよね。サプリメントも飲んでいるけど、食べ物で栄養を取るのが一番なので、食生活には気を遣っている方だと思います。毎日自分で料理をしていますし、スタジオにカンヅメになるときは宅配デリバリーを頼んだり。これが最近、便利なんですよ。きょうもそれでおにぎりを頼みました(笑)」
乾いた役の心を、髪や爪など細部にこだわり表現
11月8日公開の出演映画は、『凶悪』『孤狼の血』などの白石和彌監督が「家族」を描くことに挑んだ『ひとよ』。松岡さんは夫殺しの罪を償い、15年ぶりに帰宅した母親と対峙する3兄弟の末っ子・稲村園子を演じる。
「白石監督は、キレイなだけでない人の思いを、そのままスクリーンに映し出してくれる監督。新作をいつも楽しみにしているファンでしたから、オファーをいただいた時は、自分のできうる限りを尽くそうと思いました。
園子はスナック勤めをしている設定でしたので、白石監督とプロデューサーさんと一緒に、スナックに取材に行きました。そこでコップの持ち方やボトルの注ぎ方などを習ったんですが、現場に入ったら、カラオケで歌っているか、ぶち切れているかのどちらか。かいがいしく接客をしているシーンは、ありませんでしたね(笑)。
ただ、その時のママの軽やかさやカラッとした感じ、お客さんとの距離の近さなどはすごく勉強になりました。例えば、園子がお酒を飲んで、お客さんにからむシーン。身内以上の距離感で大胆に演じられたのは、スナックにお邪魔していたからだと思います」
外見は、髪へのダメージもいとわずブリーチ(脱色)で髪を染め、ネイルなど細部にもこだわっている。
「はすっぱな感じを出すために、髪を明るく染めようと思ってたんです。でもバージンヘアだとちょっと潤っているので、『ブリーチしよう』と。園子は、潤っていちゃいけないと思ったんですよね。『殺人者の子ども』と誹謗(ひぼう)中傷を受けて、美容師になる夢も諦めた。そこから髪の毛も気にせず、『何でもいいや』と自分への興味を失ったんじゃないかと。そしておそらく男性関係も長続きしないタイプで、愛情に飢えまくっている……。だからとにかく乾燥させたかった。
最初は根元から全部染めるつもりだったんですよ。でも監督に相談したら、『全部は違うなぁ』と言われて。理由はたぶん、身だしなみに気が回り過ぎているということだと思います。じゃあ、お母さんが出所する時に迎えに行って、すれ違いで会えなかったという過去があるので、その時から染めるのをやめていたらどうかと。そう考えて、耳のあたりから下をブリーチで明るくしました。
あと、スナックのママがネイルをしていらっしゃったので、監督に『ネイルもアリですね』なんて話して、1回、ピンクで試し塗りしたんですよ。でもそれでラーメンを食べていたら、『なんか違う!』と思って。その場で写真を撮って監督に送ったら、『お好きにどうぞ』と。日常生活をしている指として、これは違うと思ったんです。それで、ネイルはオフにして、トップコートとか、つやつやピンクすら塗らない。指も乾燥させたかったんです」
縁日のみかんの水あめと2万円超えの国産マツタケ
『ひとよ』は15年前の一夜(ひとよ)の事件により激変した家族の物語。松岡さんが忘れられない、家族の一夜とは。
「夏祭りの夜ですね。地元には大きな祭が3つあって、よく家族に連れていってもらったんですよ。人混みの中で手を引っ張ってもらったことや、食べきれないくらいたくさんの食べ物を買ってもらったことを思い出します。
買うものは毎回決まっていて、まずは綿菓子。これが、粗目(ざらめ)のものと白砂糖のもので全然違うんですよ。白砂糖の方がおそらく原価も安いし、ベットリしないから後処理もラク。けど、あれを綿菓子と呼んではいけない! それを綿菓子を巻いている方々にお伝えしたいと思いますね(笑)。粗目のものはなめたりかんだりしたら、あっという間にしぼむんですよ。でもまあ、それもいいじゃないですか。おいしいから。大好きなんですよね~、粗目の綿菓子が(笑)。
あと縁日で買ってもらったのは、チョコバナナとりんごあめと、じゃがバターとベビーカステラとイカ焼き。そして余裕があれば、みかんの水あめも食べました。でもそれには苦い思い出があって……。
子どもの頃、みかんの水あめを2個買おうとしたら、1個足りなくて、『ちょっと待ってね』とおじちゃんがみかん缶を開けたんですよ。そして、そのまま汁を飲んだんです! それを見た時、子ども心に『おじちゃん、待って』と思って(笑)。その唇についたであろうみかんが、私にやってくる可能性もありますよね? それで『もう、大丈夫です』と言って帰って、人生初のキャンセルをしたんです(笑)。
母は食事に厳しい人で、普段はジャンクなものを食べさせてもらえなかったんです。でもお祭りだけは無法地帯で、何でも買ってもらえて。なので自分に子どもができたら、お祭りでは我慢させず、楽しませてあげたいです」
「毎日料理を作る」という松岡さん。最近買って良かったものを聞くと「季節の食べ物」と答えた。
「秋なのでサンマを買ったら、値は張りましたけど、『お値打ちあるなあ』と思うぐらいおいしかったです。あとは、梨や柿、出始めのみかん……どれもおいしかったですね。
今、欲しいものは、国産のマツタケ。あまりに国産がないから、『国産のマツタケって、本当にあるんだろうか』と思って、いろんなスーパーを探したんですよ。でもついに見つけたデパ地下のマツタケが、もう冗談みたいな値段で。一番安くて、2本で2万4000円。5本で6万4000円とか。現実感がなかったですね。パラレルワールドに迷い込んだような気持ちでした。
そのマツタケ? 買いませんよ(笑)。手が出ないので、ブータン産のものを買って帰りました。そして大量にマツタケご飯を炊いて、冷凍して。冷凍すると風味は落ちるんですけど、ちょびちょび食べられるので、幸せです」
1995年生まれ、東京都出身。子役時代を経て、2008年に『おはスタ』(テレビ東京)で本格デビュー。12年に映画『桐島、部活やめるってよ』、13年にNHK『あまちゃん』などで注目される。16年には『猫なんかよんでもこない。』『ちはやふるー下の句―』でTAMA映画賞や山路ふみ子映画賞の新人女優賞を獲得。19年には日本アカデミー賞で優秀主演女優賞(『勝手にふるえてろ』)と優秀助演女優賞(『万引き家族』)をダブル受賞。20年は行定勲監督『劇場』の公開が控える。
『ひとよ』
ある雨の夜、稲村タクシーの駐車場で殺人事件が起こる。被害者は稲村タクシーの経営者、加害者はその妻・こはるだった。こはるは夫の暴力から子どもたちを守ろうと犯行に及んだのだが、その夜を境に、家族の生活は一変。大樹、雄二、園子の3兄弟は世間の冷たい目にさらされ、夢にも挫折する。複雑な思いを抱えたまま成人した3人のもとに、15年後、こはるが帰ってくる……。監督・白石和彌 原作・桑原裕子 脚本・高橋泉 出演・佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、筒井真理子、浅利陽介、韓英恵、MEGUMI、大悟、佐々木蔵之介、田中裕子 2019年11月8日(金)全国ロードショー
(文 泊貴洋、写真 藤本和史)
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