深刻な事例を紹介しましたが、一般的な頭痛には主に「緊張型頭痛」「片頭痛」「群発頭痛」があります。
多くの場合が緊張型頭痛で、頭を締めつけられるような鈍い痛みが続きます。首から後頭部にかけての痛みや首や肩の凝りが特徴です。仕事から帰って自宅でくつろいでいるときに痛みを感じたなら、緊張型頭痛の疑いがあります。
「緊張型頭痛」はストレッチを
緊張型頭痛は、首筋から肩にかけての筋肉などが緊張して収縮することが原因と考えられています。パソコンの操作などで長時間、同じ姿勢を続けると、首から背中に広がる「僧帽筋」や後頭部や側頭部の筋肉が硬くこわばり血管を圧迫、血流が悪くなることで凝りや痛みを生じるのです。
出版社に勤める20歳代女性の事例です。
入社3年目。会社ではパソコンを使った仕事がほとんどで、午後になると両肩の凝りと後頭部からこめかみにかけて痛みに襲われるといいます。仕事がら、細かい文字を追うことが多く、眼精疲労も訴えていました。症状からは緊張型頭痛と疑われました。
筋肉の緊張を和らげ、血行をよくするにはストレッチやマッサージが有効です。パソコンを長時間使う仕事の人は1時間に1回ぐらいの頻度で、ストレッチするといいでしょう。この女性にも血行を改善するために、ストレッチのほか、ゆっくり入浴することを勧めました。
肉体的なことばかりでなく、精神的にも緊張を強いられる状況が続くと、ストレスで肩や首の凝りが悪化、緊張型頭痛を起こしやすい状態となります。心身ともにリラックスやリフレッシュできる時間をつくるように心がけるのがいいでしょう。
片頭痛は冷やす
片頭痛も頭痛の代表例のひとつです。片頭痛はその名のとおり、頭の片側、もしくは両側にズキンズキンと脈を打つような痛みを感じます。前兆としてキラキラする光などが見えることがあります。
片頭痛は何らかの原因で脳の血管が拡張、脳の血管を取り巻く三叉(さんさ)神経の周囲に炎症が起こることで生じると考えられています。ですから血管が広がらないように冷やすなどの対処が有効です。緊張型頭痛のように入浴して体を温めたりすると逆効果です。飲酒も血管を拡張する効果があるので避けてください。
産業医として相談を受けたIT企業勤務の30歳代男性の事例です。
3年前から、右目の外側で光が落ちてくるような感じがあるといいます。すると、その後、頭の片側に脈打つような激しい痛みが生じるというので、脳神経外科の頭痛専門外来を紹介しました。磁気共鳴画像装置(MRI)で頭部を検査しましたが異常なし。片頭痛と診断され、治療薬の処方で改善に向かいました。
群発頭痛は2~3カ月症状が継続
群発頭痛にも注意が必要です。片頭痛と似た症状が2、3カ月続き、毎日のように深夜から早朝にかけて発症します。睡眠不足となり会社に遅刻したり、出社できなくなったりする人もいます。周囲からは「さぼっている」とみられたり、メンタルヘルス不調だと受け止められたりすることも少なくないようです。
出版関係の会社に勤める20歳代男性の事例です。
就寝しても深夜に頭痛で目が覚めてしまい、不眠を訴えていました。出社できないことが増えたことを心配した上司の勧めで、産業医の面談を受けることになりました。午前中で収まってしまうというものの、両側頭部や眼の奥の痛みを感じるということでしたので、頭痛専門外来を紹介したところ、群発頭痛と診断されました。頭痛時に治療薬を自己注射するように指示され、2カ月ほどで頭痛はみられなくなりました。
頭が痛いと頭痛薬を常用してしまうこともあるかと思います。頭痛が1カ月に15日以上あり、3カ月以上にわたり頭痛薬を1カ月に10日以上服用している場合は「薬物乱用頭痛」の可能性があります。頭痛薬を飲み過ぎると痛みに対して敏感になってしまうためです。このため頭痛薬の服用は1カ月に10日を超えないようにすることが望ましいでしょう。
また、目の奥に激しい痛みを覚えた際は、緑内障を疑う必要があります。眼圧が高くなっていると考えられ、ケアせずに放置していると視野の欠損や失明の恐れがあります。
頭痛は侮ってはいけません。いまではMRIやMRAなどの画像検査も比較的手軽に受けられるようになりました。普段、頭痛を感じたことがない人が、首の後ろから後頭部にかけて、これまでになかったような痛みを感じることがあれば、脳神経外科や頭痛専門外来などを受診することをお勧めします。

※紹介した事例は個人を特定できないように一部を変更しています。
「いきいき職場のつくり方」記事一覧