「満も梨、食べる?」。幸子の声で満も加わりました。満の手にはリーフレットが。「学校にあったよ。『学びたい気持ちを応援します!』って書いてある」と満。良男は「そうか、大学も来年から無償化か」と満面の笑みで幸子に話しかけました。
筧(かけい)家の家族構成筧幸子(48)良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。
良男 こちらの無償化はどんな仕組みなの?
幸子 大学や短期大学、専門学校といった高等教育機関への進学を支援する新しい制度のことね。消費税増税で増えた税収を財源に、2020年4月から実施される予定よ。内容は授業料などの減免制度と、返済の必要がない給付型奨学金の拡充の2本立て。対象は住民税非課税世帯とそれに準じる世帯の学生なの。3~5歳の子がいれば所得に関係なく全世帯が利用できる幼児教育の無償化と違って、利用者が限定されているのよ。
満 なんだそうか……。うちは対象じゃなさそうだね。
幸子 安倍晋三首相は先日の所信表明演説で「来年4月からは、真に必要な子どもたちの高等教育も無償化いたします」と言ってたけど、低所得世帯を指しているようね。しかも所得水準で支援割合が違うの。両親と本人、中学生の4人世帯を例に挙げると、年収約270万円までの住民税非課税世帯は上限額を利用できるけど、それを超えると3分の2に減り、約300万円で3分の1、約380万円を上回るとゼロになる。
良男 中途半端だな。
幸子 そんな批判もあってか「国は無償化という言葉を使わなくなった」と大和総研の研究員の是枝俊悟さんは指摘するわ。文部科学省の資料では「修学支援新制度」となっているようね。対象は75万人程度を見込んでいるそうよ。